情報教育ジャーナル
Online ISSN : 2433-5703
Print ISSN : 2432-6321
2 巻, 1 号
情報教育ジャーナル
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
総説
  • コンピューテーショナル・シンキングに着目して
    加納 寛子
    原稿種別: 総説
    2019 年 2 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル オープンアクセス
    2017年の小学校学習指導要領において,各教科におけるコンピュータ等を活用した学習活動の充実,プログラミング的思考の育成等が示された.それに伴い中学,高校の学習指導要領も内容が更新された.2020年度からの正式な新学習指導要領の施行に伴い,保護者の不安,教育現場からは変化に対応しきれないという不満を聞く一方で,安直な考えを聞くこともあった.そこで,情報教育先進国であるイギリスのナショナル・カリキュラムを概観することにより,我が国の今後の情報教育のあり方を検討するための示唆を得ることを本稿の目的とした.その結果,3つの示唆を得た.①我が国の情報教育はイギリスに比べて,授業時間が圧倒的に少ないため,十分な時間の確保が必要であること,②コンピュータ・サイエンス,デジタル・リテラシー,インフォメーション・テクノロジーに関する教育も,小学校・中学校・高校教育全体に取り入れていく必要があること,③コンピューテーショナル・シンキングの4つの様相,分解(decomposition)パターン認識(pattern recognition)抽象化(abstraction)アルゴリズム(algorithms)を発達段階に応じて学べるようなカリキュラムの必要性である.
原著論文
  • 逃避, 優越感, 共感によるリスクの比較
    大野 志郎
    2019 年 2 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル オープンアクセス
    SNS利用者の増加および低年齢化が進む中,情報モラル教育の観点から,SNS利用による問題の発生を抑制するための知見が求められる. 本研究ではSNSの利用動機と 様々な問題との関連の強さを明らかにするため,オンラインアンケート調査を実施した. 事前調査により,15歳から39歳までのインターネット長時間利用者(n=2,994)を抽出し,そのうちSNSを最もよく利用する709サンプルを用いた. SNS利用動機の因子分析の結果,「逃避」「優越感・評価の獲得」「日常の関係維持」「愚痴・相談」「共感の獲得」の5因子が見いだされた. 続いて,諸問題を目的変数,SNS利用動機を説明変数とするロジスティック回帰分析を行った. SNS依存傾向に対する調整オッズ比は,逃避が2.92,優越感・評価の獲得が2.30,共感の獲得が2.32であり,有意であった.また,優越感・評価の獲得の動機は,身体的・精神的健康の問題(調整オッズ比4.73,3.52)との関連が顕著であり,大切な人間関係への悪影響,多額のムダ使いとも強く関連していた.
  • GeoGebra による「角」の指導を事例として
    谷 竜太
    2019 年 2 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,「角」概念を題材として,動的ソフトウェアを用いた概念形成のための指導法を考案し,その有効性を明らかにすることである.そのために,まず,概念形成に関するスファードのモデルを参照してそれを「角」概念で具体化する.次に,ICT機器の活用による概念形成に関する先行研究を手掛かりにして,本稿における指導法を考案する.最後に,公立小学校児童84名を対象として,動的ソフトウェアGeoGebraを用いた教授実験を行い,その事前・事後での正答数の変化を検証し,面接調査における発話プロトコルを分析する.結論として,動的ソフトウェアによるアニメーションの閲覧が「角」概念を内面化させ,児童によるソフトウェアの直接操作が同概念を凝縮化することが示唆された。特に,角がその構成する「辺の長さ」に依存しない回転量であることを認識する上で動的ソフトウェア使用の顕著な効果が確認された。
  • 立位と歩行の伝授における言語の効果に注目して
    山田 雅敏
    2019 年 2 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル 認証あり
    スポーツや武道の世界では,技を伝授する際に言語が障害となる場合があることが指摘されている.一方で,認知科学的領域では,言語が技の獲得を促進する報告もされており,技の伝授における言語の効果については,未だ十分に検討されていない.そこで本研究では,指導者との言語的コミュニケーションを通した学習者の身体動作の変化に関して実験的検証を行い,技の伝授における言語の効果について考察することを目的とした.方法として,指導者から言葉かけにより指導を受けた学習者5名が,立位と歩行の実践により身体を動かした際の体感や感想などについて言語報告を行い,指導者がその言語報告を確認した上で,コメントを記述して言語的指導を行った.その結果,学習者1名は,実験前後ともに評価が高く,身体動作の変化が認められなかったが,学習者3名は,指導者の期待する身体動作へと変化する傾向が確認された.しかし一方で,学習者1名は,指導者の期待とはまったく異なる身体動作へと変化したことが確認された.考察から,言語は技の伝授に効果があることが示された一方で,その効果は個々人により差があり,さらに言語が逆効果となる可能性が示唆された.
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