日本救急医学会雑誌
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10 巻, 7 号
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  • 草野 正一
    1999 年 10 巻 7 号 p. 385-401
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    血管撮影による止血治療法は,手術的止血に比べると患者への侵襲が少なく,かつまた治療技術の進歩に伴ってその成績も向上しているので救急領域においても重要な役割を演じている。動脈性消化管出血に対する血管撮影による止血治療のよい適応は,手術的止血に高い危険を伴う多臓器不全あるいは多臓器不全への移行が危惧される患者,小腸出血の患者,大量出血で内視鏡で診断と治療をすることが困難な患者,重症膵炎患者などである。一方,外傷性出血は,救命のために一刻も早く患者を救急室から手術室に移動し,外科的に処置しなければならない場合を除くと,これらの患者の多くが血管撮影による診断と治療の適応となりうる。骨盤骨折に伴う後腹膜出血は血管撮影による止血治療法による止血成績も良好で,かつ血管撮影でこれら患者に併発することが多い腹部大動脈とその分枝の血管損傷の診断と,症例によっては治療もできるので,血管撮影による止血治療法が第一選択となっている。また最近は,肝臓,腎臓,脾臓などの腹部実質臓器の動脈損傷に対しても本法が積極的に試みられ,良好な成績が得られている。血管撮影による止血治療法によって起こる臓器梗塞などの重篤な合併症の報告は初期に多くみられたが,技術の進歩に伴って著しく減少し,現在は安全な治療法となっている。救命率のさらなる向上のために救命救急システムの見直しと再構築が検討されているなかで,わが国においても最新の画像診断とinterventional radiologyに精通したangiographerが救命救急チームのスタッフとして貢献できるシステムの確立が期待される。
  • T2強調画像の重要性について
    高橋 功, 北原 孝雄, 遠藤 昌孝, 大和田 隆
    1999 年 10 巻 7 号 p. 402-406
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    受傷後72時間以内にMRIが施行された急性頸髄損傷38例に対し,T2強調画像の髄内所見と神経学的重症度と予後との関連について,髄内所見から,高信号と低信号の混在するmixed (M)群,高信号の範囲が1椎体を超えるdiffuse high (DH)群,高信号が1椎体以内のlocal high (LH)群,異常所見を認めないnormal (N)群の4群に分けて検討した。各群と重症度(Frankel grade)の関係では,M群は7例全例(100%)がAで,DH群は9例中,Aが3例(33.3%), Bが5例(55.6%), Cが1例(11.1%)であった。LH群では14例中,Aが5例(35.7%), Bが3例(21.4%), Cが6例(42.8%)で,N群では8例中,6例(75%)がC, 2例(25%)がDであった。各グループ毎の予後は(経過観察期間は1~40ヵ月)M群7例中,不変4例(57.1%),死亡2例(28.6%)で,改善は1例(14.3%)のみであった。DH群では,9例中,不変6例(66.7%),改善3例(33.3%)で,LH群では,14例中,不変3例(21.4%),改善11例(78.6%)で,N群では8例,全例(100%)で改善が得られた。以上の結果より,mixed群が最も重症であり,予後も不良であった。今回の検討から,頸椎・頸髄損傷が疑われる例では,MRIは病態,重症度や予後を把握でき治療方針決定に有用であり,できるだけ早く施行すべきであると思われた。
  • 岩永 康之, 相引 眞幸, 小倉 真治, 横野 諭, 小栗 顯二
    1999 年 10 巻 7 号 p. 407-414
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    当病院集中治療部に入室し,脳低温療法を受けた16例を対象に,口鼻腔内ケアが脳低温療法時の肺酸素化能に及ぼす影響をretrospectiveに検討した。口鼻腔内ケアを定期的には施行しなかった非施行群(年齢15-85歳,男性1例,女性6例,来院時GCS 3-10点)7例,同ケアを1日3回以上施行した施行群(年齢4-80歳,男性4例,女性5例,来院時GCS 3-11点)9例とに分け,(1) P/F ratio, (2) CRP, WBC, (3)咽頭・喀痰培養,(4)胸部X線写真について,両群間で検討した。データは平均値±標準誤差で示した。結果:(1) P/F ratioが250以下と肺酸素化能が悪化した回数の全測定回数に対する割合は,施行群が8.0±3.4%,非施行群が36.6±10.1%(平均値±標準誤差)であり,施行群が非施行群に対して有意に(p<0.05)低率であった。(2) CRPは療法前は両群で差はなかったが,低体温中に施行群が4.3±0.8,非施行群が8.5±0.9mg/dlと,施行群が非施行群に比して有意に(p<0.01)低値を示した。WBCは両群間に有意差を認めなかった。(3)細菌検査では,両群でまったく同一の抗生剤の使用下にもかかわらず,施行群ではグラム陽性菌および陰性菌の両方が(陽性菌2種・陰性菌11種),非施行群ではグラム陰性菌(5種)のみが検出された。さらに非施行群では経過中に真菌が気管内採痰より検出されたが,施行群ではまったく検出されなかった。(4)脳低温療法中,非施行群に(非施行vs施行群:181±10.4% vs 0%)胸部X線写真上明らかな硬化像を高率に認めた。以上の結果より,脳低温療法中1日3回以上の口鼻腔内ケアが,肺合併症の予防に有効であった。
  • 本間 正人, 大友 康裕, 井上 潤一, 加藤 宏, 原口 義座, 辺見 弘
    1999 年 10 巻 7 号 p. 415-420
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    We examined a case of rapid helicopter transportation, which was crucial to the survival of a ruptured abdominal aortic aneurysm (AAA) patient with profound shock. A 70-year-old woman, who presented at home with acute severe back pain, was transferred by helicopter 50km to our hospital. On arrival, she had no detectable blood pressure and soon developed bradycardia with subsequent cardiac arrest, which required an emergency room thoracotomy Å @ (ERT). After open cardiac massage and thoracic aortic cross-clamping, her heart beat was recovered. Additional laparotomy revealed about 500ml of blood from intraperitoneal bleeding and a large dilated and ruptured retroperitoneal hematoma. The AAA was reconstructed using a Y-graft. On the 78 hospital day, she was discharged from our hospital without any neurological defects. In this case, all factors such as the intimate cooperation between the ambulance EMTs and aviation team, early call and prompt dispatch of the helicopter, and effective therapy by the receiving hospital were necessary for the survival of this patient. We concluded that we should promptly prepare an emergency helicopter system for improving the outcome of patients in local areas, and that these systems will prove effective in case of natural or civil disaster.
  • 西倉 哲司, 塩見 一成, 村上 勉
    1999 年 10 巻 7 号 p. 421-425
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    One case of a 17-year-old woman with anorexia nervosa is reported. We measured the concentration of the serum leptin and IGF-I (insulin-like growth factor-I) before and after partial weight recovery. During this period, the serum leptin level was low, but the IGF-I increased as her weight increased. When the percentage of adipose tissue to total body mass is severely low, the serum leptin level, which is widely reported to be a good indicator of recovery from anorexia nervosa, does not accurately reflect the real nutritive state. On the other hand, even in this circumstance we consider IGF-I to be a good indicator.
  • 1999 年 10 巻 7 号 p. 426-427
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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