受傷後72時間以内にMRIが施行された急性頸髄損傷38例に対し,T2強調画像の髄内所見と神経学的重症度と予後との関連について,髄内所見から,高信号と低信号の混在するmixed (M)群,高信号の範囲が1椎体を超えるdiffuse high (DH)群,高信号が1椎体以内のlocal high (LH)群,異常所見を認めないnormal (N)群の4群に分けて検討した。各群と重症度(Frankel grade)の関係では,M群は7例全例(100%)がAで,DH群は9例中,Aが3例(33.3%), Bが5例(55.6%), Cが1例(11.1%)であった。LH群では14例中,Aが5例(35.7%), Bが3例(21.4%), Cが6例(42.8%)で,N群では8例中,6例(75%)がC, 2例(25%)がDであった。各グループ毎の予後は(経過観察期間は1~40ヵ月)M群7例中,不変4例(57.1%),死亡2例(28.6%)で,改善は1例(14.3%)のみであった。DH群では,9例中,不変6例(66.7%),改善3例(33.3%)で,LH群では,14例中,不変3例(21.4%),改善11例(78.6%)で,N群では8例,全例(100%)で改善が得られた。以上の結果より,mixed群が最も重症であり,予後も不良であった。今回の検討から,頸椎・頸髄損傷が疑われる例では,MRIは病態,重症度や予後を把握でき治療方針決定に有用であり,できるだけ早く施行すべきであると思われた。
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