近年,救命救急医療の発展に伴い,救急隊には的確な観察と適正な搬送が要求されている。欧米では外傷に関し種々のプレホスピタル・スコアが検討されているが,本邦ではほとんど検討されておらず,またシステムの異なる欧米のものを一概に適用するわけにもいかない。われわれは1994年,本邦で1972年に報告された外傷指数(Japan Trauma Index; JTI)をもとに新たな外傷トリアージスコア(Trauma Triage Score; TTS)を考案した。今回,外傷患者の重症度評価に対するTTSの有用性を検討するため,客観的重症度としてInjury Severity Score (ISS)を用い,それらの相関を検証した。対象と方法:当地域3市における全外傷患者に対し,1997年3, 6, 9, 12月(計1466件)の期間,現場で救急隊にTTSをつけてもらった。3週間後に全搬送先に郵送調査で確定診断名を記入してもらい,ISSを算出した。TTSに関しては,緊急手術・集中治療を要する患者,多発外傷や瀕死の患者を重症とし,ISSに関しては16点以上を重症としたうえで,TTSの重症予測正診率を感受性・特異性などを用いて検討した。またTTSとISSとの関係を単回帰分析により検証した。さらに全体の相関だけではなく,市ごとにも検証した。結果:TTSの重症予測正診率はsensitivity 93%, specificity 96%であった。また決定係数(r
2)は0.59であった。しかし市ごとにみると相関は異なっていた(0.64, 0.62, 0.45)。考察:われわれが考案したTTSは救急隊が実際に現場で使用でき,かつ個々の外傷患者の重症度を的確に表すものであった。
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