日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
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13 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • Part I:主要な生物兵器テロの臨床
    村田 厚夫, 山口 芳裕, 小泉 健雄, 山口 均, 島崎 修次
    2002 年 13 巻 3 号 p. 113-122
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    バイオテロリズムに対する救急医療機関の対応に関して,米国などで想定されている生物兵器のなかでもとくに注意が喚起されている炭疽,天然痘,肺ペスト,野兎病,ボツリヌス毒素について,その臨床像についてレビューする。とくに初期症状からは,感冒様症状との鑑別が困難であり,それぞれの感染症について自然発生なのか人為的発生なのかを判断するために潜伏期間や初期症状などの疫学的知識,情報の重要性を認識することが臨床の現場では必要と考える。
  • 平成12年厚生労働省「結核緊急実態調査」の分析
    藤井 紀男, 中谷 比呂樹, 森 亨
    2002 年 13 巻 3 号 p. 123-132
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    平成12年に厚生労働省が実施した「結核緊急実態調査」の結果に基づき,現在,わが国における結核を取り巻く問題点を医療現場を中心に解説した。わが国の結核対策は結核予防法に基づき届出が行われ,行政が患者登録,医療の基準の提示等の患者管理を行い,適切な治療を確保する体制となっている。しかし,今回の調査から,届出については,結核予防法に基づく届出からみた死亡数と人口動態統計による結核死亡数に乖離があること,登録者の病名精査により結核以外の疾患が約1割混入していることが明らかとなった。これは届出の正確さ,わが国の結核の状況の評価に関する問題点を示唆するものである。また医療の提供おいては,短期化学療法の選択や結核菌の薬剤感受性検査等が適切に行われていないことを示唆する例があり,治療期間の短縮の推進や薬剤耐性化防止の観点から問題があった。また,結核患者の発病には,医学的な問題以外にも社会的・経済的な背景が大きく影響していることが示唆され,とくに高齢者や基礎疾患を有する者,住所不定者については,医療提供の側面からも早期発見および治療完了率の向上の観点からも十分な留意が必要である。今後,これらの問題を踏まえた対応の重要さが明らかになった。
  • 唐澤 秀治, 畠山 郁夫, 丸子 孝之, 菅原 克也, 鐘司 光貴, 大竹 満博, 宮村 栄樹
    2002 年 13 巻 3 号 p. 133-143
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    脳死判定検査に入る前に,まず薬物の影響がないことを確認しなければならない。しかし,薬物の影響消失に関する全国共通のリストおよび実践的なガイドラインは存在しない。筆者らは,脳死判定に影響を与える29種類の薬物について調査した。有効血中濃度域が判明しているものは12種類しかなく,血中濃度測定可能な薬物も少ない。16種類の薬物には活性代謝物が存在した。作用持続時間および半減期が判明しているものは,それぞれ21種類,28種類であった。薬物の作用持続時間と半減期を組み合わせて,H時間(作用持続時間+半減期),D時間(作用持続時間+濃度が1/10になるまでの時間),F時間(半減期の4倍の時間)を算出した。重症脳損傷患者10例の薬物の血中濃度測定を実施し,作用持続時間,半減期,H時間,D時間,F時間のうち,どれが薬物の影響消失の目安として最も適切なのかという観点で検討を行った。薬物の影響が消失していると判定するためには,総合的判断が必要である。作用持続時間と半減期が明らかな場合にはH時間を影響消失の目安とし,半減期のみ明らかな場合には半減期の4倍の時間を目安とするのが妥当である。また,活性代謝物が存在する場合には,その影響も十分に考慮する必要がある。筋弛緩薬の場合には,四連反応比が0.9以上を目安とするのが適切である。これらをもとに実践的なガイドラインの1例を作成した。
  • 松浦 有里子, 小池 薫, 辻井 厚子, Saeed Samarghandian, 久志本 成樹, 山本 保博
    2002 年 13 巻 3 号 p. 144-150
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    背景:小腸の虚血および低灌流は多臓器不全の発症に重要な役割を果たすと考えられている。多臓器不全発生の原因解明のために,いままでさまざまな動物モデルが用いられてきたが,近年では遺伝子操作の技術の進歩からノックアウトマウスやトランスジェニックマウスの有用性が着目されている。しかし,局所から全身に拡がる臓器障害,とくに血管内皮細胞障害の程度を検出する方法はマウスでは確立されていない。われわれはマウスの小腸虚血再灌流モデルで,小腸・肺・肝障害を比較的容易に検出できる方法を確立したので報告する。方法:BALB/cマウスに45分間の上腸間膜動脈血行遮断を行い,補液として3mlの生理食塩水を皮下注射した。再灌流2時間あるいは6時間後に下大静脈と心臓から可能な限り血液を脱血し,小腸・肺・肝臓の血管透過性の変化と浮腫の程度をEvans blue (EB)法と乾湿重量比(W/D)で測定した。肝機能の評価としてalanine aminotransferase (ALT)とtotal bilirubin (T-Bil)の血漿濃度も測定した。さらに,C57BL/6マウスでも45分の小腸虚血と2時間の再灌流を行い,同様の検討を行った。結果:BALB/cマウスでは,小腸障害はEB法とW/Dで,肺の血管透過性亢進はEB法で,肝障害はEB法・W/D・T-Bilにより検出できた。C57BL/6マウスでは,小腸障害はEB法とW/Dで,肺の血管透過性亢進はEB法で,肝障害はW/D・ALT・T-Bilで確認された。結語:2種のマウスで若干の相違は認められたものの,マウスの小腸虚血再灌流モデルにおける小腸・肺・肝障害は,EB法・W/D・ALT・T-Bilの組み合わせにより評価できることが判明した。これらの方法はマウスにおける小腸虚血再灌流後の遠隔臓器障害発生のメカニズムを解明するのに役立つだけでなく,その他のショックに関連した研究分野においても応用可能な手法となると考えられる。
  • 廣瀬 仁, 天野 篤, 高橋 明仁, 永野 直子
    2002 年 13 巻 3 号 p. 151-160
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    目的:動脈による冠動脈バイパス術は,長期予後を改善させることを主眼において施行されているが,近年その適応は緊急冠動脈バイパスにも広がってきた。今回われわれは,動脈グラフトによる血行再建が頻繁に行われるようになったここ10年の緊急冠動脈バイパス術についての知見を検討した。方法:1991年1月から2000年12月末までの10年間で施行された1997例の冠動脈バイパス術のうち,154例が急性冠疾患症候群に対する緊急症例であった。これらの緊急および待期手術症例について周術期成績および遠隔期成績をレトロスペクティブに調査をし,適切な統計学的手法を用いて比較検討した。結果:緊急症例の平均バイパス本数3.2±1.1本で,少なくとも1本の動脈バイパスが使用されたのは144例(93.5%)であった。緊急症例では,待期手術症例に比べ挿管時間,ICU滞在日数,術後在院日数がいずれも有意に長かった。重症合併症は73例(47.7%)にみられ,術後院内死亡は11例(7.1%)であった。多重解析によると,緊急手術は院内死亡の独立予測因子であることが判明した(オッズ比23.5, 95%信頼区間8.6-61.6)。生存退院者のうち98%が平均3.5年間術後フォローが可能であった。緊急症例の術後5年生存率は78.1%, 5年心事故回避率は90.8%であり,これらの数字は待期手術の術後5年生存率83.6%および5年心事故回避率90.7%と有意差を認めなかった。結語:緊急症例の院内死亡および合併症発生率は待期手術に比べ高率だが,適切な外科的血行再建が完了すれば,緊急症例といえども,その遠隔期成績は待期手術同様である。動脈グラフトの頻繁な使用は遠隔期成績の向上に貢献していると考える。
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