敗血症などの重症疾患に関わるいくつかのメディエーターのなかで,炎症性サイトカインはきわめて重要である。またそのような病態ではしばしばlow T
3 syndromeといわれる甲状腺機能障害が認められる。これに対してT
3の補償投与が試みられてきたが,未だにその効果に対する結論は得られていない。今回われわれはラット腹膜炎敗血症モデルを用い,T
3投与が炎症性サイトカイン産生および生存率に及ぼす影響について検討した。対象と方法:雄Sprague-Dawleyラットを用いてすべてのラットに盲腸結紮穿刺法を施行し,盲腸結紮穿刺法のみのコントロール群,T
3を3ng/hrで投与したL群,T
3を15ng/hrで投与したH群の3群に分けた。24時間後に採血を行いfree T
3, IL-1β, TNF-α, IL-6, IL-8値および生存率について検討した。結果と考察:IL-1β, IL-6はそれぞれcontrol群で4.7±1.1, 237.4±99.1, L群では4.1±1.2, 183.5±10.8, H群では3.0±0, 23.3±3.4pg/mlと用量依存性に産生が抑制された。TNF-αは3群でそれぞれ12.3±2.2, 6.1±1.2, 14.2±4.4pg/mlでL群のみ抑制された。IL-8は3群で各々5342.7±4095.3, 55.2±14.2, 114.3±70.2pg/mlとL群の方がより強く抑制された。free T3は3群で各々1.5±0.3, 2.5±0.2, 2.1±0.1pg/mlとL群,H群で正常範囲内となった。またcontrol群では24時間以内に3匹のラットが死亡したが,L群およびH群ではすべて生存した。ラット腹膜炎敗血症モデルにおけるT
3の投与は炎症性サイトカインの産生を抑制し,予後改善に有効であった。投与量に関してはさらなる検討が必要である。
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