日本救急医学会雑誌
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13 巻 , 6 号
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  • 新井 正徳, 増野 智彦, 登坂 直規, 原田 尚重, 久志本 成樹, 小井土 雄一, 山本 保博
    2002 年 13 巻 6 号 p. 289-294
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    背景:abdominal compartment syndrome(以下ACSと略す)は急激な腹腔内圧上昇に伴い,呼吸,循環障害や乏尿となり,放置した場合multiple organ failure(以下MOFと略す)から死に至る病態である。診断は,膀胱内圧(以下IBPと略す)の測定によって得られ,治療は積極的輸液負荷と腹壁の減圧である。本邦でもdamage control(以下DCと略す)の概念が受け入れられるようになり,近年ACSの報告例がみられるようになってきたが,その数はまだ少ない。今回,当施設でのACSの頻度,背景因子,IBPと臓器障害との関係をretrospectiveに検討し,その対策について考察した。対象と方法:1996年4月~1999年3月までに当救命センター入院となった外傷症例のうち,緊急開腹術が施行され,ICU帰室後,ACSを来した症例について検討した。ACSの定義はIBP>15mmHgで以下のうち少なくともひとつを満たすものとした。(1) 尿量<0.5ml/kg/hr, (2) peak airway pressure>40cmH2O, (3) central venous pressure(以下CVPと略す)>12mmHgかつ収縮期血圧<80mmHg。結果:3年間に経験した外傷症例は1150例であり,緊急開腹術を111例に施行した。DCを要した症例は20例であり,このうちACSを来した症例は4例であった。全例鈍的外傷で,平均ISSは31.8であった。初回手術から腹壁減圧までの時間は平均16.8時間で,3例で24時間以内に減圧せざるを得なかった。ACSの予後は,全例死亡であり,減圧時心停止と腸管壊死を2例に認め,48時間以内の早期死亡例は3例であった。結語:ACSの頻度は,DCを施行した症例では20%であり,ハイリスクの認識が必要と考えられた。ACSの予後はきわめて不良であり,初回手術直後からIBPを経時的に測定し,減圧の時期を逸しないことが重要と考えられた。
  • 福田 充宏, 熊田 恵介, 山根 一和, 鈴木 幸一郎, 小濱 啓次, 平野 一宏
    2002 年 13 巻 6 号 p. 295-302
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    急性脳障害患者において,血中IL-6値がどの程度増加し,経過とともにどのように変化しているのかを明らかにするため,脳障害患者の血中IL-6値を検討した。急性脳障害患者121例[脳血管障害51例,cardiopulmonary arrest on arrival(以下CPAOA) 33例,頭部外傷24例,髄膜・脳炎7例,その他の意識障害6例]を対象に,救急搬入時および治療経過中の血清中および髄液中のIL-6値を測定した。結果,救急搬入時の血中IL-6値の中央値は,髄膜・脳炎23.0,クモ膜下出血65.0,脳挫傷106.0,脳梗塞109.0,急性硬膜下血腫141.5,その他の意識障害166.5,脳内出血177.0, CPAOA 227.0(pg/ml)の順に高値を示したが,敗血症患者にみられる程の高値(敗血症36例の血中IL-6値の中央値は6055.0)を示していなかった。生存例の血中IL-6値は経過中に低下したが死亡例においては改善せず,脳死状態に陥った場合には病日とともに増加し,植物状態患者においては急性期には基準値に至らなかった。血中IL-6値とIL-10値のアンバランスが生命予後にかかわっており,クモ膜下出血患者や髄膜・脳炎患者での髄液中IL-6値は血中にくらべ異常高値(IL-6値の髄液/血液比それぞれ73.6, 26.3)を示していた。IL-6値は,systemic inflammatory response syndromeにかかわる指標としてだけではなく,脳障害の指標という視点からも捉えていく必要があり,全身とは異なった脳内での調節機構の存在の可能性が示唆された。
  • 井上 貴昭, 廣田 哲也, 鴻野 公伸, 岩井 敦志, 安部 嘉男, 池内 尚司, 吉岡 敏治
    2002 年 13 巻 6 号 p. 303-311
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    頭部外傷後に中枢性尿崩症を来した生存13例について,受傷後12時間以内に尿崩症を発症した早期群5例とそれ以降に発症した遅発群8例に分け,入院時Glasgow Coma Scale (GCS), injury severity score (ISS),退院時Glasgow Outcome Scale (GOS),尿崩症持続期間,尿崩症発症時の頭蓋内圧,経過中の最大頭蓋内圧,およびmagnetic resonance imaging (MRI)像に関して比較検討を行った。頭蓋内圧のコントロールのため,遅発群ではバルビタール療法を要したものが7例,減圧開頭術を要したものが4例あり,5例に低体温療法を施行した。早期群ではバルビタール療法を要したものは2例のみであり,減圧開頭術および低体温療法を施行した症例は1例もなかった。発症時期は早期群7±2時間後,遅発群47±19時間後と約40時間の差を認めた。両群間で入院時GCS, ISS,退院時GOSに有意差を認めなかった。尿崩症持続期間は,遅発群では全例3週間以内であった。しかし早期群では3例に永続的な抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone; ADH)補充療法を要し,他2例の内1例はADH補充療法離脱までに75日間を要した。頭蓋内圧に関しては統計学的有意差を認めなかったが,尿崩症発症時の頭蓋内圧および経過中の最大頭蓋内圧共に遅発群で高い傾向が認められた。早期群のMRI像は全例で視床下部領域の損傷像に加え,びまん性軸索損傷の所見が認められた。しかし,遅発群ではいずれの所見も認められなかった。T1強調画像においてADH分泌顆粒を示すとされる下垂体後葉の高信号域が,遅発群ではいったん消失した後に経時的に再出現するようになったが,早期群では消失したままであった。頭部外傷受傷後きわめて早期に尿崩症を来す生存症例では,びまん性軸索損傷に伴って視床下部に直接損傷を来しており,尿崩症は長期化あるいは永続化すると考えられた。
  • 松丸 祐司, 中居 康展, 園部 眞, 能勢 忠男
    2002 年 13 巻 6 号 p. 312-319
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    破裂脳動脈瘤によるクモ膜下出血のmorbidity, mortalityの主な原因は初回出血,再出血,脳血管攣縮である。治療は,なるべく早期に再出血を防止する処置を行い,脳血管攣縮に対処することである。再出血の予防には,もっぱら開頭クリッピングが行われていたが,近年脳動脈瘤塞栓用に開発されたGuglielmi detachable coil (GDC)を用いた塞栓術の有効性が数多く報告されている。国立水戸病院救急救命センターおよび脳神経外科ではその低侵襲性に着目し,破裂脳動脈瘤の治療の第一選択をGDCによる塞栓術としている。1997年3月より2000年6月までに急性期破裂脳動脈瘤塞栓術は73例に施行された。そのうち84%は発症後72時間以内に治療された。平均年齢は56.8歳で,70歳以上の症例は17例であった。来院時Hunt & Hess GradeはI: 8例,II: 22例,III: 24例,IV: 13例,V: 6例で,瘤内塞栓が70例,親血管閉塞が3例に施行された。原則的に瘤内塞栓は全身麻酔下に施行し,血性髄液排除のために腰椎ドレナージを留置した。症候性合併症は術中破裂4例,虚血4例,血管損傷1例が生じ,これらによるpermanent morbidity, mortalityはそれぞれ4例(6%), 2例(3%)であった。動脈瘤の形態および動脈硬化により,不十分な塞栓に終わった4例で急性期に再破裂した。これらの症例は,高齢者および脳底動脈先端部の不規則な形態の動脈瘤で,開頭クリッピングの適応にはならなかった。症候性脳血管攣縮は10例で認められ(評価可能症例の19%),それによるpermanent morbidityは2例(4%)でmortalityは認められなかった。再塞栓術は12例に,慢性期クリッピングが7例に施行された。退院時転帰は,55例(75%)で良好であり,Hunt & Hess Grade IからIIIに限ると54例中46例(85%)で良好な転帰であった。長期成績はいまだ明らかではないが,高齢者,クリッピング困難例を多く含むことを考慮すると成績は良好である。しかし不十分な塞栓に再破裂予防効果はない。今後手技の熟練,治療用具の改良により治療成績はさらに向上すると思われる。
  • 奥地 一夫, 則本 和伸, 松山 武, 中村 達也, 村尾 佳則, 星田 徹
    2002 年 13 巻 6 号 p. 320-328
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    目的:脳死判定基準をほぼ満たした症例で,脳波高感度記録のみ低振幅ながら平坦といえない波の出現があり,脳死判定に迷うことを少なからず経験する。これらを脳死疑診例として臨床病態を分析し発生要因および臨床経過に関して考察を行った。対象と方法:対象は1999(平成11)年9月から2001年4月までの20か月の間に当施設で脳死判定基準(深昏睡,瞳孔固定散大,前庭反射を除く脳幹反射の消失,呼吸停止)を満たした後に脳波の測定を行った21例である。われわれはアーチファクトのない高感度記録(2μV/mm)で内部雑音以上の波が出現しないことをelectrocerebral inactivity (ECI)の診断基準としている。この基準では8例(38%)が最初の脳波でECIといえなかった。この8例を脳死疑診群(SBD群)とし臨床的脳死と診断した残りの13例を脳死群(BD群)として検討を行った。結果:SBD群の出現した脳波は4μV前後が6例,8μV前後が2例であった。SBD群ではBD群に比して頭部外傷の頻度が高かった(p=0.02)。しかし,年齢,尿崩症の頻度,心停止に至るまでの期間等に臨床経過に有意差は認められなかった。結論:脳死疑診は頭部外傷のなかでも脳幹を中心とした損傷形態を呈する際に発生しやすいと考えられた。これらの脳波は10μV以下の低振幅であり,微小な電気活動が存在したとしても脳死判定における臨床的意義は低いと考えられた。
  • 廣田 哲也, 岩井 敦志, 池内 尚司, 安部 嘉男, 吉岡 敏治
    2002 年 13 巻 6 号 p. 329-336
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    A 21-year-old man admitted with shock due to severe pelvic fracture after a motorcycle accident was found in contrastenhanced computed tomography (CT) to have no renal visualization except for the upper pole of the right kidney and only part of the left kidney. Aortography showed complete occlusion of the right renal artery and a circumferential intimal defect of the left renal artery. Fearing that surgical exploration would increase retroperitoneal hemorrhage, we conducted percutaneous transluminal angioplasty (PTA) and placed a Palmaz stent in the left main renal artery 18 hours after injury, after which urine output progressively increased. Hemodialysis was needed until hospital day 29, after which renal function gradually improved. Repeated renal scintigraphy was useful in determining renal function. On hospital day 160, aortography showed the left main renal artery to be patent and stenosis-free. The man was discharged on hospital day 165. Traumatic bilateral renal arterial occlusion is rare, with only 21 cases reviewed in the literature. Early diagnosis and treatment are essential to avoid permanent by impaired renal function. We found that PTA is a viable alternative to surgical revascuralization, especially in patients who are hypotensive without a need for surgical exploration for further abdominal injury.
  • 小山 尚也, 葛西 猛, 江藤 順, 早野 大輔, 米田 高宏, 稲葉 彰
    2002 年 13 巻 6 号 p. 337-341
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    A 70-year-old man admitted for right back pain and vomiting had mild tenderness and rebound pain in the right upper abdomen. Abdominal radiography and computed tomography (CT) couldnot differentiate the ruptured gallbladder from the dilated transverse colon. Abdominal magnetic resonance imaging (MRI) showed gas and fluid in the ruptured enlarged gallbladder and detected the shrunken transverse colon beneath the dilated gallbladder. He had long taken warfarin potassium for pulmonary embolism and his PT-INR was 8.98. After administration of vitamin K2, we undertook emergency surgery for the ruptured distended gallbladder. Massive old blood and clots filled the abdomen. Several gallbladder stones dropped in the Morison pouch. Klebsiella pneumoniae and Clostridium perfringens were found in the ascites culture. We diagnosed him as having perforated emphysematous cholecystitis which tended to coexist with diabetes mellitus and infection caused by aerobic and anaerobic pathogenes. The gallbladder rupture was possibly caused by wall ischemia due to arterial sclerosis and dilation caused by massive blood and clots in the gallbladder. After surgery, he was controlled with mechanical ventilation in the intensive care unit. No serious event occurred postoperatively except for mild pneumonia.
  • 吉原 智之, 中森 靖, 小倉 裕司, 田中 裕, 嶋津 岳士, 杉本 壽
    2002 年 13 巻 6 号 p. 342-346
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    We present a case of fulminant systemic lupus erythematosus (SLE) associated with thrombotic thrombocytopenic purpura (TTP) involving multiple organ failure. A 28-year-old woman diagnosed with SLE and treated with prednisolone for 6 months suddenly underwent severe heart failure and loss of consciousness. Laboratory tests showed severe anemia, thrombocytopenia, renal failure, and liver dysfunction. An extensive series of imaging examinations showed cerebral infarction, myocarditis, splenic infarction, and cystitis. Severe bleeding tendency caused hemorrhagic ascitis, hemorrhagic pleural effusion, hematuria, and systemic subcutaneous hemorrhage, and her general condition deteriorated. The patient was diagnosed with fulminant SLE associated with TTP and received intensive care including continuous hemodialysis, mechanical ventilation, and massive transfusion. One course of high-dose intravenous methylprednisolone and 5 series of plasma exchange (PE) suppressed SLE activity, and her general condition and consciousness gradually recovered. Thrombocytopenia was not controlled by these therapies. After using antiplatelet drugs, platelet count elevated dramatically. TTP is an unusual complication of SLE, and the treatment for fulminant SLE associated with TTP is not well known. In our case, combined treatment with PE, methylprednisolone, and antiplatelet drugs was effective for recovery.
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