日本救急医学会雑誌
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14 巻, 11 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 笠岡 俊志, 金田 浩太郎, 河村 宜克, 井上 健, 鶴田 良介, 岡林 清司, 前川 剛志
    2003 年 14 巻 11 号 p. 719-722
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    近年,心筋特異性のきわめて高い心筋トロポニンTの上昇の有無を,全血を用いて短時間で判定できる心筋トロポニンT迅速判定キット(以下,Trop T)が開発され,急性冠症候群の診断に有用と報告されている。本研究では,救急患者に合併した心筋傷害の診断にTrop Tが有用か否かを検討した。対象は心疾患以外の救急疾患のため当院救命救急センターに緊急入院となり,Trop Tを実施した連続56例である。心筋傷害の診断には標準12誘導心電図および心エコー図検査を用いた。心臓に関連した合併症として,急性心不全および心室性不整脈の合併の有無について調査した。さらに救命救急センター在室期間および院内死亡率について調査した。Trop Tは10例で陽性であった。心電図異常は,Trop T陽性群(56%)は陰性群(11%)に比較して有意に高頻度であったが,心エコー図異常は,Trop T陽性群(50%)が陰性群(17%)に比較して高頻度の傾向に留まった。心室性不整脈は,Trop T陽性群(40%)は陰性群(0%)に比較して有意に高頻度であり,急性心不全は,Trop T陽性群(30%)は陰性群(2%)に比較して有意に高頻度であった。院内死亡率は,Trop T陽性群(30%)は陰性群(11%)に比較して高い傾向を示したが,統計学的有意差を認めなかった。Trop Tは特別な装置を必要としないため救急外来にて容易に測定でき,救急患者における心筋傷害のスクリーニングに有用である。心疾患以外の救急患者においてもTrop T陽性例では,心筋傷害を疑って注意深い循環管理が必要である。
  • 長屋 昌樹, 窪田 倭, 明石 勝也
    2003 年 14 巻 11 号 p. 723-730
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    全身性炎症反応症候群(SIRS)患者における血中HMGB-1の動態と臨床的意義について検討し,さらにHMGB-1に対し,血液浄化療法の一つである持続的血液濾過透析(CHDF)は治療的意義をもつか否かの検討を行った。SIRS診断基準を満たしCHDFを施行した15例を対象とした。採血はいずれも可能な限りCHDF導入前およびCHDF導入1時間後,24時間後までのヘモフィルター前後の2ポイント,およびCHDF導入から48時間後で行った。HMGB-1はELISA法にて測定した。CHDF導入1時間後から,導入から48時間後までの治療効果に関する検討では,生存群のサンプルを使用した。Sample全例からHMGB-1は検出され,致死的な病態に近づくにつれ上昇した。死亡群は生存群に比し,血中HMGB-1濃度は有意に高値を示した(p<0.05)。また血中HMGB-1濃度はAPACHE IIスコア間(p<0.0001), SOFAスコア間(p=0.0016),血中IL-6濃度間(p=0.0007)といずれの指標とも正の相関を示した。CHDFによるHMGB-1の血中濃度の変化に関する検討では,ヘモフィルター前後でHMGB-1血中濃度は有意に低下した(p<0.05)。 HMGB-1血中濃度は1例を除き9例で有意に低下した(p<0.05)。またAPACHE IIスコアはCHDF導入1時間後から,導入から48時間後までにおいて有意に低下しCHDFの治療効果を認めた(p<0.05)。以上の結果からHMGB-1は,病態の重症化に重要な役割を担っていることが示唆された。またCHDFにより除去されることが判明しCHDFはHMGB-1に起因する病態に対し有効である可能性が示された。
  • 鈴木 卓, 山本 俊郎, 鈴木 範行, 安瀬 正紀, 杉山 貢
    2003 年 14 巻 11 号 p. 731-738
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    【背景】鈍的外傷患者における頸椎損傷の評価は頸椎側面単純X線写真をscreening検査として用い,その後適切に撮影できなかった範囲,異常所見が認められた範囲をcomputed tomography (CT)で追加撮影する方法が推奨されている。今回このガイドラインに従って追加CTを行ったと仮定した場合の撮影頻度を計算し,初療室で撮影されたポータブル頸椎側面単純X線写真がCT撮影の指標として有用かどうかを検討した。【対象と方法】1994年1月より2000年12月までの間に横浜市大高度救命救急センターで頸椎損傷の確定診断がついた連続した100症例(141椎体損傷)および2000年1月より2000年8月までの間に入院し頸椎損傷がなかった連続した100症例を対象とした。初療室で撮影した頸椎側面単純X線写真について,(1)どの椎体まで確認可能であったか,(2)異常所見はどのくらいの頻度で出現したかをretrospectiveに再評価した。これらより次に必要となるCT撮影の頻度を計算した。【結果】頸椎損傷群70症例,非損傷群63症例で全7頸椎は確認できていなかった。異常所見の出現率は損傷群では88症例で,非損傷群でも28症例であった。全頸椎の描出不能例と異常所見陽性例を併せると損傷群で97症例,非損傷群で74症例で追加CT撮影が必要とされた。個々の椎体損傷について分析すると,損傷椎体の範囲を単純X線写真上確定できなかったのは141椎体中19椎体であった。【考察】初回ポータブル頸椎側面単純X線写真は,それを指標とすると頸椎非損傷患者にも高頻度で追加CTを必要とし,また損傷が見逃されることも少なくなく,その有用性は決して高いものではない。救命救急センターに運ばれてくるような鈍的外傷患者における頸椎損傷の診断に関しては今まで用いてきた単純X線写真を中心としたstrategyでは十分に対応できないことが推察された。
  • 矢ヶ崎 和明, 丸藤 哲, 伊藤 靖子, 松田 直之, 亀上 隆, 平野 剛, 井関 健
    2003 年 14 巻 11 号 p. 739-744
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration: CHDF)施行患者においては投与薬物のフィルターを介した除去,および合併する肝腎不全による代謝・排泄の低下に伴い,その薬物動態が通常とは大きく異なる。本研究ではMRSA (methicillin-resistant Staphylococcus aureus)治療薬バンコマイシンに着目し,4例の急性腎不全によるCHDF施行患者を対象として薬物動態解析を行った。透析膜には膜面積1.5m2のセルローストリアセテート膜ヘモフィルターを用い,透析液流量は1,000ml/hr,血液流量は100ml/min,濾過速度は2,000ml/hrに固定した。バンコマイシンは1.0gを1時間かけて24時間間隔で投与し,経時的に採取した血液および濾液検体のバンコマイシン濃度の測定をFPIA法(fluorescence polarization immunoassay)で行った。その結果,上記条件でのCHDF施行症例においてバンコマイシンの総クリアランスおよび消失半減期はそれぞれ2.25±0.85L/hr, 14.0±0.56hrであった。得られた薬物動態に基づき,目標トラフ値を10.0μg/mlとしてシミュレーションを行い,上記条件のCHDF施行患者においては,バンコマイシン1.0g/dayの投与により,治療域にあたる適切な有効血中濃度を維持することが可能であった。
  • 福田 健志, 太田原 康成, 西川 泰正, 遠藤 英彦, 佐藤 直也, 山野目 辰味, 小川 彰
    2003 年 14 巻 11 号 p. 745-747
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    A 38-year-old man complained of headache and nausea after traveling by aeroplane. On physical examination, high fever and nuchal rigidity were found. Computed tomography showed pneumocephalus. Magnetic resonance imaging showed sphenoid sinusitis. Cerebrospinal fluid examination revealed purulent meningitis. The patient was medically treated using antibiotic agents. The pneumocephalus disappeared and the purulent meningitis was resolved. We suggest that the barotrauma resulted in the pneumocephalus and purulent meningitis. Barotrauma is a potential cause of pneumocephalus, especially if the patient has parasinusitis.
  • 御舘 靖雄, 朝倉 英策, 伊藤 貴子, 山崎 雅英, 森下 英理子, 南 眞司, 中尾 眞二
    2003 年 14 巻 11 号 p. 748-752
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    Tranexamic acid has been therapeutically used in various clinical conditions with bleeding. However, this drug might carry a risk of thrombosis as an adverse effect. We report a patient who developed left popliteal artery thrombosis after the administration of tranexamic acid for the treatment of upper gastrointestinal bleeding. A 96-years-old woman with gastric cancer was admitted to our hospital because of an ischemic stroke. She had severe anemia, and received a blood transfusion. To control the bleeding, a single dosage of tranexamic acid (1, 000mg/day) was administered. Twelve hours after the administration of the drug, she suffered an acute obstruction of the left popliteal artery. Tranexamic acid is frequently used to control gastrointestinal bleeding. However, no definite evidence exists confirming that tranexamic acid is useful for gastrointestinal bleeding. The inhibition of fibrinolysis by tranexamic acid is not considered to be safe in patients with a hypercoagulable state, and the use of tranexamic acid should be carefully determined on an individual basis.
  • 2003 年 14 巻 11 号 p. 753-754
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 14 巻 11 号 p. 770
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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