持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration: CHDF)施行患者においては投与薬物のフィルターを介した除去,および合併する肝腎不全による代謝・排泄の低下に伴い,その薬物動態が通常とは大きく異なる。本研究ではMRSA (methicillin-resistant
Staphylococcus aureus)治療薬バンコマイシンに着目し,4例の急性腎不全によるCHDF施行患者を対象として薬物動態解析を行った。透析膜には膜面積1.5m
2のセルローストリアセテート膜ヘモフィルターを用い,透析液流量は1,000ml/hr,血液流量は100ml/min,濾過速度は2,000ml/hrに固定した。バンコマイシンは1.0gを1時間かけて24時間間隔で投与し,経時的に採取した血液および濾液検体のバンコマイシン濃度の測定をFPIA法(fluorescence polarization immunoassay)で行った。その結果,上記条件でのCHDF施行症例においてバンコマイシンの総クリアランスおよび消失半減期はそれぞれ2.25±0.85L/hr, 14.0±0.56hrであった。得られた薬物動態に基づき,目標トラフ値を10.0μg/mlとしてシミュレーションを行い,上記条件のCHDF施行患者においては,バンコマイシン1.0g/dayの投与により,治療域にあたる適切な有効血中濃度を維持することが可能であった。
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