1998年1月1日~2000年12月31日の3年間に日本医科大学付属病院高度救命救急センターに搬送された患者で,精神科医が関与した自殺企図症例を対象に,その実態,転出先の変化さらに救命救急センター転出後の精神科継続治療状況についてレトロスペクティブに調査し,再自殺予防といった観点からその問題点と対応について検討した。自殺企図症例の実態としては,精神科診断分類でF4が最も多く認められ,企図手段では薬物・毒物によるものが最も多かった。救命救急センターからの転出先について,当院精神科への転科,および精神科医が勤務する一般病院への転院は,年を追って増加し,逆に精神科医が勤務していない一般病院への転院は減少していた。一方,救命救急センターから転出時に当院精神科外来受診を勧められた患者のうち1年以内に受診したのは36%にすぎなかった。診断別の受診率はF3, F2のうつ病圏,分裂病圏の患者で高かったのに対し,F4, F6の神経症圏,人格障害の患者では低く,これらの患者の精神科治療継続の困難さが伺えた。しかしながら,当院精神科へ転科入院した患者の98%と精神科医が勤務する一般病院へ転院した患者の78%は当院精神科の外来を受診していた。そのなかでも治療継続が困難とされるF4, F6症例の受診率が高かったことより,救命救急センターから引き続き行う精神科入院治療は,継続した精神科外来通院に対するmotivationを高めるための,効果的な方法のひとつであると思われた。よって,再自殺企図を防止するうえで,心身ともに治療のできる総合病院精神科で,自殺企図後の患者を積極的に引き受けることは大学病院をはじめとする総合病院精神科の役割のひとつであると考えられた。
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