背景:本邦における院外心原性心肺停止の生命機能予後に及ぼす経皮的心肺補助(PCPS)を用いた積極的治療の意義は必ずしも明確でない。目的:当施設での治療成績を検討し,PCPSを用いた治療の効果を明らかにすることを目的とした。対象と方法:1999年4月から3年間に当救命救急センター搬入となった心原性心肺停止連続187例(男性128例,女性59例;年齢65.5±16.3, 3-94歳)を調査対象とし,急性期生命転帰および機能障害の程度と,これに影響を及ぼす諸因子について検討した。結果:(1)搬入後の治療はPCPS 20例(11%),大動脈バルーンパンピング(IABP) 19例(10%),緊急冠状動脈造影18例中10例に経皮的冠状動脈インターベンション(PCI)を施行,脳低温療法は20例(11%)に施行した。心原性全体で心拍再開率32%,生存率14%,機能良好9%であった。(2)心拍再開もしくはPCPS装着による臓器血流再開時間は機能良好例では平均30.9分で,死亡例,高度障害残存例に比し有意に短かった。(3)治療にPCPSを必要とした20例と,PCPSを用いずに心拍再開した21例(搬入時pulseless electrical activityと心静止は除外)の入院30日後の“機能良好:高度障害残存:死亡”の割合は,PCPS群35%:15%:50%,非PCPS群38%:19%:43%で両群間に有意差を認めなかった。結語:臓器血流再開までの時間が短い症例では,機能回復は比較的良好であり,発症早期にPCPSを用いる積極的な蘇生治療は有効と考えられた。
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