重症例に対しても待機せず可及的速やかに脳動脈瘤根治術を行うという方針のもと診断治療を行った,1996年1月から2000年12月までの5年間の235名のクモ膜下出血(SAH)患者につき検討した。患者の内訳は男性85名,女性150名,平均年齢60.8歳であった。来院時WFNS Grade (G)はGI 21名,GII 48名,GIII 2名,GIV 51名,GV 79名,および来院時心肺機能停止(CPA): 34名であり,GIV, GV, CPAが全体の70%を占めた。原則としてGIからGIVまでの全例,GVでは脳幹反射がみられるものを脳動脈瘤根治術の対象とし,待機せず直ちに診断,治療を開始した。CPAで早期に心肺蘇生が施行され自己心拍の再開をみたものはGVに準じた。167名(71.1%)に脳血管撮影(DSA), 146名(62.1%, 8名3.4%はDSA未施行)にクリッピング術,19名(8.1%)にGuglielmi detachable coil瘤内塞栓術を施行した。発症からの時間経過(中央値)は,来院まで47分,脳血管撮影まで200分,手術まで338分であった。1998年以降,21名に脳低温療法を行った。6か月後のGlasgow outcome scaleによる全体の転帰は,Good recovery (GR): 67名(29.5%), moderate disability (MD): 19名(8.4%), severe disability (SD): 38名(16.7%), persistent vegetative state (VS): 10名(4.4%), death (D): 93名(41.0%)であった。軽症例(GI, II, III)の転帰良好(GR+MD)は78.3%,不良(SD+VS) 10.1%,死亡11.6%,重症例(GIV, V)の転帰良好は24.8%,不良31.2%,死亡44%であった。CPAから蘇生後の4例に根治術施行,3名が生存,うち1名はGRであった。重症SAH症例が過半数を占める救命救急センターにおいて,“救いうる”SAH患者に一人でも多く良好な転帰を得るためには,来院後の再破裂予防と迅速な根治術施行とともに,低酸素脳障害の予防を含め,病院外救護体制の面からも取り組みが必要と思われた。
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