救急医療における地域格差の原因の1つに,医師の地域偏在が知られている。47都道府県別と9地方別に人口,医師数,一般病院数,病床数における日本救急医学会正会員数,認定医数,認定医指定研修施設数の割合を推計,比較した。47都道府県における人口,医師総数,病院数,病床数,正会員数,認定医数,研修施設数の各間には有意な直線関係があった。人口10万人あたり正会員数は全国平均6.2人,最大都道府県較差5.4倍,地方別では最多が東京地方9.2人,最少が関東地方4.8人であった。人口10万人あたり認定医数は全国平均1.8人,最大都道府県較差7.5倍,地方別では最多が東京地方3.1人,最少が北陸地方1.1人で,東京,近畿地方で多かった。医師総数に占める正会員数の割合は全国平均3.0%,最大都道府県較差5.1倍,地方別では最高が北海道地方3.6%,最低が北陸地方2.4%であった。医師総数に占める認定医数の割合は全国平均0.9%,最大都道府県較差7.6倍,地方別では最高が東京地方1.2%,最低が北陸地方0.6%であった。病院数1施設あたり正会員数は全国平均0.9人,最大都道府県較差5.8倍,地方別では最多が東京地方1.7人,最少が中国四国地方0.6人で,東京,近畿地方で多かった。病院数1施設あたり認定医数は全国平均0.3人,最大都道府県較差10.2倍,地方別では最多が東京地方0.6人,最少が北陸地方0.1人で,東京,近畿地方で多かった。病床数1,000床あたり正会員数は全国平均4.8人,最大都道府県較差5.0倍,地方別では最高が東京地方8.7人,最低が中国四国地方3.7人で,東京,近畿地方で多かった。病床数1,000床あたり認定医数は全国平均1.4人,最大都道府県較差は8.2倍,地方別では最高が東京地方2.9人,最低が北陸地方0.8人で,東京,近畿地方で多かった。病院数に占める研修施設数の割合は全国平均2.9%,最大都道府県較差10.2倍,地方別では最高が東京地方4.8%,最低が九州地方2.1%であった。救急医師数には地域較差が存在し,東京,近畿地方で多い。救急医師数および救急医療施設数の地域較差を是正し,適正配置の必要がある。
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