日本救急医学会雑誌
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16 巻, 11 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 田中 悟, 公文 啓二, 浅井 建基, 米澤 一也, 小出 明知, 野々木 宏
    2005 年 16 巻 11 号 p. 611-616
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    函館及びその周辺の道南地域での病院外心停止症例と心肺蘇生(CPR)の実態を,一般市民の自動体外式除細動器(AED)の使用が解禁される前18か月間にわたり調査し,その現状と問題点を検討した。調査は地域網羅的にウツタイン様式に準じて前向きに記録収集を行った。2003年1月1日から2004年6月30日までの病院外心停止症例は387例であった。心肺蘇生は344例に行われ,うち心原性は181例(53%)であった。目撃された心原性心停止96例のうち,23例(24%)の初期調律が心室細動または心室頻拍(VF/VT)であり,そのうち19例に除細動が施行された。またバイスタンダーCPRが行われたのは21例(22%)であった。目撃された心原性心停止例のうち,心拍再開は32例に認め,24例が入院し,1か月生存は10例であった。海外のウツタイン様式の研究と比較して,函館地区ではバイスタンダーCPRの施行率が低く,除細動が有効な初期調律がVF/VTであった率も低かった。そのため生存退院率も低かったと考えられる。今後,救命率を高めるためには地域住民に対して正確な心肺蘇生法とAEDの使用の啓蒙普及活動を積極的に進め,バイスタンダーCPRと除細動の施行率を高めることが必要である。
  • 松崎 真和, 木下 浩作, 丹正 勝久, 上原 由紀, 守谷 俊, 海老原 貴之, 熊坂 一成
    2005 年 16 巻 11 号 p. 617-622
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    クモ膜下出血後の遷延性意識障害患者に,薬剤に起因すると考えられる赤芽球癆の症例を経験した。この症例は意識障害のため自覚症状はなく,貧血以外の血液学的異常は認めなかった。神経集中治療室の患者は,術後のてんかん発作予防目的に抗てんかん薬が処方されることが多く,diphenylhydantoinによる赤芽球癆の報告も散見される。抗てんかん薬を処方される患者は,抗てんかん薬の血中濃度が過剰になると皮膚症状や神経症状など種々の副作用発現の危険性にさらされる。われわれの経験した症例は,diphenylhydantoinなどの貧血の副作用のある多種薬剤が使用されていたため,赤芽球癆の原因薬剤の確定はできなかった。しかし,いずれの薬剤の投与量も通常使用量であり,貧血発症時の血中diphenylhydantoin濃度は基準値以下であった。意識障害患者では,自覚症状の訴えがないことから,貧血の診断は他覚的所見や血液学的所見に頼らざるを得ない。貧血の副作用のある薬剤を使用している意識障害患者が,急速な貧血症状を呈した場合には薬剤性赤芽球癆を積極的に疑う必要がある。薬剤性赤芽球癆は,通常量の薬剤使用であっても発症の危険性がある。貧血診断後は直ちに使用薬剤を中止するべきである。
  • 白 鴻成, 定光 大海
    2005 年 16 巻 11 号 p. 623-628
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    脛骨複雑骨折ではしばしば骨露出を合併することがあり,それに対する処置として外科的処置として皮弁形成が行われることが多い。われわれは,脛骨開放性骨折後創部が壊死となり,骨露出を来した症例に対して,bFGFスプレーとPGE1軟膏を用いて肉芽組織により骨露出部を被覆せしめ,保存的に治療を行った症例を経験したので報告する。症例は59歳の男性で,トラック荷台より墜落し受傷した。左脛骨開放性骨折(Gustilo Type II)を伴い,当日,緊急手術にて洗浄,デブリードマン,直達牽引を行った。受傷後7日目に受傷時の開放創に皮膚欠損を生じた。患者は,既往症に慢性動脈閉塞症があったため,骨露出を認める部位に対し,bFGFスプレーの撒布とPGE1軟膏の塗布により保存的治療を行った。受傷後78日目には,骨露出部は骨髄炎などの感染症を伴うことなく肉芽組織により被覆された。骨露出症例に対し保存的治療を行い治療できたので,若干の考察を加え報告する。
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