日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
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17 巻, 11 号
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  • 当施設18年の歩み
    奈良 理, 浅井 康文
    2006 年 17 巻 11 号 p. 783-792
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    心肺蘇生法としての胸骨圧迫心マッサージは,脳蘇生の観点からその効果に限界があることが指摘され,新たな心肺脳蘇生法として人工心肺の可能性が注目された。しかし,救急領域での臨床応用のためには,現在のPCPSシステムを構成しているような膜型人工肺や遠心ポンプ,経皮的挿入可能な送脱血カニューレ等の開発といった医療工学の発達を待たなければならなかった。心停止症例への本格的な臨床応用としては,1983年にPhillipsらが5例中3例を救命したことを報告し,1989年からはSaferらによって臨床研究が開始され,1992年に187例中40例(21%)生存という極めて良好な結果が報告されている。当施設では1988年から院外心停止症例に対して蘇生法としてPCPSを2005年3月までに156例に対して施行し,救命例が34例(21.2%)で16例(10.2%)の社会復帰症例を得ている。病院前救護体制の向上,心原性疾患に対する根本的治療体制整備,蘚生後の後療法である脳低温療法の導入等,われわれが“院外心肺停止症例に対するPCPSを組込んだ包括的な救命医療”と呼んでいる概念を意識しはじめた1999年以降は,PCPS導入時間の明らかな短縮と救命症例の増加が認められている。心肺脳蘇生法としてのPCPSの問題点としては,明確な適応基準が無くその評価自体も未だに定まっていないことが挙げられる。しかしながら,通常の二次救命処置が無効であった症例に1999年以降は10%以上の社会復帰例が存在することは無視できないと考えられる。そこで今後は,これまで症例を検討し新しい適応基準を作成し,前向きな検討を考慮している。また,PCPSは高コスト治療であると指摘されるが,院外心停止症例に対しては,その救命のためにすでに様々形でコストがかかっていることを考慮すべきである。
  • 白井 邦博, 吉田 省浩, 小倉 真治, 篠原 克浩, 北畑 有司, 栗原 幸司, 丹正 勝久
    2006 年 17 巻 11 号 p. 793-802
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    ALI/ARDSを合併した重症急性膵炎に対する,シベレスタットナトリウムの効果を検討した。入院時よりALI/ARDSを合併し,人工呼吸管理を要した重症急性膵炎患者35例を対象とした。シベレスタットナトリウム投与群(E群)は19例,非投与群(NE群)は16例。入院日を0日とし,以下の項目について10日間測定した。項目:CVP値,総輸液量,尿量,厚生労働省重症度スコア,SOFAスコア,PaO2/FIO2比,白血球数,CRP値,PMN-E値,IL-6値,Ventilator-free days (VFD), ICU在室日数,感染症発症率。両群間で以下の項目には有意差がなかった:年齢,成因,発症から人工呼吸管理までの期間,入院後の治療方法,CVP値,総輸液量,尿量,入院時感染症発症率。入院時の各スコアは両群間で差がなかったが,厚生労働省重症度スコアは7, 9日目でE群がNE群に比して有意に低下した(p<0.05)。またSOFAスコアは5, 7, 9日目でE群がNE群に比して有意に低下した(p<0.05, p<0.01)。PaO2/FIO2比は5, 7, 9日目でE群がNE群に比して有意に上昇した(p<0.05, p<0.01)。白血球数は7, 9日目で,CRP値は7, 9日目でE群が有意に低値であった(p<0.05)。 IL-6値は,9日目でE群が有意に低値であった(p<0.05)。 PMN-E値は7, 9日目でE群が有意に低下した(p<0.05)。 VFDはE群で18.1日,NE群では14.2日,ICU在室日数はE群で10.3日,NE群では14.4日と有意差を認めた(p<0.01)。感染症発症率は差がなかった。ALI/ARDSを合併し,人工呼吸を要した重症急性膵炎患者の呼吸管理に対してシベレスタットナトリウムの投与は有効であった。
  • 渥美 生弘, 戸田 茂樹, 朝倉 隆之, 池田 幸穂, 横田 裕行, 寺本 明, 山本 保博
    2006 年 17 巻 11 号 p. 803-809
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    脳の虚血再灌流時にはsuperoxideを中心としたfree radicalの産生が著しく亢進することが報告されている。われわれはmicrodialysisとelectron spin resonance (ESR)を用い,脳内におけるfree radicalの変化を観察した。雄性wisterラットを用い,Pulsinelliらの前脳虚血再灌流モデルを改良し使用した。右前頭葉皮質にmicrodialysis plobeを留置し,Ringer液を灌流させた。45分間の虚血負荷を与えた後,再灌流を行った。透析液を経時的に採取,ESRを用いて測定を行った。また,superoxide dismutase (SOD), edaravoneを投与してascorbic acid radical (ASR)の変化を観察し,細胞外液腔における動態を考察した。虚血前,虚血中,再灌流後とどの時点でも透析液からASRが検出された。虚血前に比し虚血中,さらに再灌流後と濃度が増大した。ascorbateは脳内に豊富に存在する代表的なfree radical scavengerであり,ASRは脳内で産生されたfree radicalをscavengeした際に生じた反応性生物であると考えられる。そこでSOD, edaravonを静脈内投与しASR産生を観察すると,両者ともASRの産生を減少させなかった。一方で,両者を脳実質内に投与すると,SODの投与では明らかにASRの産生が減少し,またedaravoneの投与ではASRの産生を減少させなかった。SOD, edaravoneに対する反応より,細胞外液腔においてASRはsuperoxide産生のマーカーになり得ると考えられた。
  • 2006 年 17 巻 11 号 p. 810-827
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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