Reversible posterior leukoencephalopathy syndrome (RPLS)は,頭痛,意識障害,痙攣などの神経学的症状を呈し,MRI, CT検査で後頭及び頭頂葉領域を中心に広範囲な浮腫性病変を認めるが,基礎疾患の是正により,臨床所見,画像所見が可逆的に消失する疾患群である。悪性高血圧症により生じた高血圧性脳症に対して,急性期のMRI拡散強調画像にてRPLSと診断し,白質浮腫の消退をMRIにて経時的に観察し得た症例を経験した。患者は47歳の男性,意識障害にて当院へ搬送された。来院時患者は傾眠状態,血圧260/170mmHg,神経学的局所所見は,瞳孔不同を認めた他異常所見は認めなかった。また眼底所見では,高血圧性眼底出血を認めた。CTで脳幹,後頭部白質を中心に広範な低吸収域,MRIのT2WI, FLAIRで同部位に高信号を認めたが,拡散強調画像ではこれらは異常所見を示さず,その病変は血管原性の浮腫と診断された。著明な高血圧と脳浮腫に対して血管拡張薬と脳圧降下薬にて治療を開始したところ,3病日には意識が改善し始め,約2週間後には入院時に認められた臨床症状,画像上の浮腫性病変が消失した。臨床経過,画像所見と後日施行した腎生検にてこの症例を悪性高血圧症に合併したRPLSと診断した。今回初診時にMRI (T2WI, FLAIRと拡散強調画像)を撮影することで,可逆性である血管原性浮腫の診断が可能であった。急性期の拡散強調画像は,RPLSの診断につながり,治療方針の決定に有用と考えられる。
抄録全体を表示