日本救急医学会雑誌
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18 巻, 12 号
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原著論文
  • 平安山 直美, 丸藤 哲, 上垣 慎二, 牧瀬 博, 羽田 健一, 奥山 和彦, 晴山 仁志
    2007 年 18 巻 12 号 p. 793-802
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    目的 : 急性期disseminated intravascular coagulation (DIC) 診断基準は産科領域のDIC診断に応用可能である, との仮説検証を目的として後方視的検討を行った。対象と方法 : 保存診療録から急性期DIC診断基準スコア算出に必要な血小板および凝固線溶系諸指標が測定されていた産科救急症例19例を対象とした。産科DIC診断基準スコア8点を産科DIC診断の至適診断基準 (gold standard) として, 急性期DIC診断基準の産科領域におけるDIC診断特性を検討した。結果 : 9症例が産科DIC診断基準8点以上を満たした。9症例全例が搬入日に産科DIC診断基準を満たしたが, その内8症例は産科DIC診断基準と急性期DIC診断基準がDICを同時診断した。急性期DIC診断基準は良好な感度 (94.7%) と特異度 (75.0%) で産科DICを診断し, その受信者動作特異曲線下面積は0.847 (標準誤差0.06, 95%信頼区間0.740-0.955, p=0.0001) であった。急性期DIC診断基準スコアと産科DIC診断基準スコアに有意の正相関を認めた (r=0.601, p=0.0001)。臨床病態およびDICと鑑別すべき病態を考慮すると急性期DIC診断基準の産科DIC診断感度は不変で特異度 (88.6%) が上昇した。結論 : 急性期DIC診断基準は高い感度で産科領域のDICを早期診断可能である。
症例報告
  • 高柿 尚始, 西村 茂, 恩田 純, 原田 薫雄, 高安 武志
    2007 年 18 巻 12 号 p. 803-809
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    脳梗塞急性期の治療として2005年10月よりrecombinant tissue plasminogen activator (以下rt-PA) の静脈内投与が本邦においても保険適応として許可され, 脳梗塞の新たな治療法として注目されている。しかしながらrt-PAの使用には出血性合併症を考慮し, 脳梗塞発症から3時間以内に投与しなければならないという厳格な基準が設けられている。今回われわれは, 突然発症した13歳男子の右内頸動脈閉塞に伴う脳梗塞に対しrt-PAを投与し良好な結果を得ることができたので若干の文献的考察を加え報告する。患者は13歳の男子。学校の部活中に突然, 気分不良を訴え, 意識障害, 左片麻痺出現したため当院へ救急搬送された。来院時, 意識レベルJCS20, 左片麻痺 (左上肢MMT0/5, 左下肢MMT0/5), NIHSS (National Institutes of Health stroke scale) 31点。頭部CTでは明らかな異常は認めなかった。MRI拡散強調像にて右側頭葉に高吸収域を認め, 頸部MRAにて右内頸動脈の完全閉塞, 頭部MRAにて右内頸動脈は描出されていなかった。集中治療室に入室後, 発症から2時間48分で経静脈的にrt-PAの投与を開始した。翌日の午前4時頃, 意識レベルはJCS1まで改善し, 左片麻痺も改善しMMTは左上肢4/5, 左下肢4/5となった。翌日の頭部CTでは出血性合併症は認めなかった。MRI拡散強調像にて右前頭葉及び側頭葉皮質下, 大脳基底核部に高吸収域の拡大を認めたが, 頸部MRAでは右内頸動脈は再開通していた。頭部MRAでは右内頸動脈及び中大脳動脈の描出は鮮明ではなかった。その後の経過は良好であり, リハビリテーションにて左片麻痺は完全回復し, 頭部MRAにて右内頸動脈及び中大脳動脈の描出も鮮明となり, 第14病日後遺症なく退院した。rt-PA使用に関しては, 小児であっても厳重な管理を行えば有用であると考えられた。
  • 蕪木 友則, 谷口 巧, 小見 亘, 伊藤 博, 太田 圭亮, 後藤 由和, 稲葉 英夫
    2007 年 18 巻 12 号 p. 810-814
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    血液凝固第VII因子は血友病患者の止血に使用されてきたが, 近年術中や外傷による止血が困難な患者の止血にも使用されている。われわれは止血術, 大量輸血にもかかわらず, 出血性ショックから脱しない2名の患者に対して, 血液凝固第VII因子を使用し止血に成功した症例を経験したので報告する。1例目は常位胎盤早期剥離の患者で緊急帝王切開施行後も出血傾向が持続し, 輸血療法施行するも循環動態が安定せず, 緊急子宮全摘術を施行。術後も出血が止まらず, そこで血液凝固第VII因子製剤 (ノボセブン®) 4.8mgを投与したところ, 出血量は減り循環動態は安定した。2例目は肋骨に発症したEwing肉腫に対して開胸腫瘍摘出術施行した患者で, 術後胸腔ドレーンからの出血が持続し出血性ショック, 心停止状態となり, その後2回の開胸止血術施行するも止血は困難な状態であった。そこで血液凝固第VII因子製剤 (ノボセブン®) 4.8mgを投与したところ, 出血量は減少した。以上, 2名においては血液凝固第VII因子の効果は良好であり副作用は認められなかった。投与量, 投与時間を含めて今後さらなる使用経験が必要である。
  • 乙供 茂, 山田 康雄, 上之原 広司, 斎藤 俊博, 岩本 一亜, 佐藤 公尊, 菊地 秀
    2007 年 18 巻 12 号 p. 815-819
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    患者は76歳の男性。猟に出かけ車内で休憩中, 後席同乗者の散弾銃が暴発し右腰部に被弾。腹部単純レントゲンで体内に約170個の散弾と銃創付近の右腸骨陵粉砕骨折を認めた。腹部CTにて右腸骨周囲・回盲部後腹膜・右臀部・上行結腸内・腹腔内に散弾を多数認めたため緊急手術となった。小腸に2か所の貫通穿孔を認め上行結腸穿孔も疑われたため, 穿孔部縫合閉鎖・回盲部切除を行った。さらに銃創を中心とした皮膚切開を加え, 周囲の皮下・筋肉内・右腸骨周囲より約70個の散弾と弾丸を構成するプラスチック片などを摘出した。散弾の全摘出は不可能と判断し, 約100個はそのまま遺残した。鉛散弾遺残による鉛中毒が危惧されたため血中鉛濃度を測定したところ19μg/dl (正常上限20μg/dl) であった。キレート剤であるCaNa2EDTAを静脈内投与した。投与終了後に再度血中鉛濃度を測定したところ8μg/dlまで減少していたため, キレート剤の継続投与は行わなかった。第50病日に再度血中鉛濃度を測定したところ, 再上昇していたため, CaNa2EDTA内服を開始した。受傷より1年が経過した時点でキレート剤内服を中止し, その2か月後, 4か月後に血中鉛濃度を測定したが上昇は認めなかった。鉛中毒は量-影響関係が明らかである。受傷直後, キレート剤投与中, 投与中止後までの経時的血中鉛濃度の測定は, キレート剤を用いない場合の鉛中毒量へ達するまでの期間の予測や今後の鉛中毒症例の管理に有用である。散弾銃銃創症例においては, 臓器損傷可能性の慎重な評価と鉛散弾全摘出が前提となるが, 鉛散弾遺残の症例においては厳重な血中鉛濃度のフォローが必要と考えられた。
  • 井上 卓也, 上尾 光弘, 河西 克介, 上山 昌史, 山下 勝之, 大出 靖将, 青木 良記
    2007 年 18 巻 12 号 p. 820-825
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    マルチスライスCT (以下MSCTと略す) で, 受傷後急性期に診断し得た外傷性右横隔膜ヘルニアの1例を経験した。症例は37歳の男性。乗用車運転中の事故で受傷。来院時ショック状態であった。初回胸部X線写真と胸腹骨盤部MSCT検査axial像では, 右多発肋骨骨折, 右肺挫傷, 右血気胸, 腹水貯留, 肝挫傷, 骨盤骨折を認めたが, 右横隔膜ヘルニアは指摘できなかった。右胸腔ドレナージ後の胸部X線写真で右横隔膜上に楕円形の異常陰影が認められたので, 至急MSCTのmultiplanar reformation画像を作成して確認すると, 外傷性右横隔膜ヘルニアと容易に確定診断できた。肝動脈と両側内腸骨動脈の造影検査及び肝動脈の塞栓術の後, 緊急開腹手術を行い, 右横隔膜に11cmの裂創を認め, これを修復した。術後は経過良好で, 術後30日目に松葉杖歩行で退院した。右胸腔ドレナージ直後に認められた血圧低下は, ドレナージの陰圧により肝臓が胸腔内へさらに突出し, 肝臓や横隔膜によって右心房が圧迫され, 一過性の閉塞性ショックを起こした可能性があると推測された。MSCTは, 従来診断が困難とされてきた受傷後急性期の外傷性右横隔膜ヘルニアの診断にきわめて有用であった。
  • Ryo Ogami, Toshinori Nakahara, Osamu Hamasaki
    2007 年 18 巻 12 号 p. 826-831
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    Cholesterol embolization (CE) is well known as a multi-systemic disorder that frequently occurs after cardiac catheterization or cardiovascular surgery. CE after carotid stenting has been rarely reported. We describe a case in which carotid stenting triggered rapid progression to CE. Carotid stenting was performed in a 73-year-old man with severe stenosis of the left carotid artery. Peri-procedural magnetic resonance images revealed multi-focal acute brain infarctions. Ten days after the procedure, the patient developed hypertension, bilateral livedo reticularis of the toes, and renal dysfunction with eosinophilia. A skin biopsy showed evidence of cholesterol emboli in the arterioles. CE after carotid stenting was diagnosed. The patient received corticosteroid therapy including pulse therapy which was effective in diminishing further deterioration of renal function. CE should be suspected in patients who present with signs of ischemia following carotid stenting. Corticosteroids may prove beneficial in cases of CE-induced renal dysfunction.
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