日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
18 巻, 10 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著論文
  • 佐藤 琢紀, 木村 昭夫, 佐藤 守仁, 糟谷 周吾, 佐々木 亮, 小林 憲太郎, 吉野 理
    2007 年 18 巻 10 号 p. 687-693
    発行日: 2007/10/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    背景 : 2004年に敗血症診療の初のガイドラインであるSurviving Sepsis Campaign Guidelines for Management of Severe Sepsis and Septic Shock (SSCG) が発表され, 全世界的に敗血症の治療法が標準化されつつあり, 初期輸液療法の重要性が提唱されている。目的 : 本研究では, 初期輸液療法の重要性の再確認と具体的な輸液量の検討を行った。対象と方法 : 2001年1月1日から2006年8月31日までに当センター救急部に救急搬送されたsevere sepsisあるいはseptic shock 64症例について検討した。治療開始後72時間と28日でそれぞれ死亡群・生存群に分け, 各群間で来院時の重症度スコアやSSCGで推奨されている治療法について比較した。結果 : 初期輸液療法に関して, 72時間後・28日後ともに生存群の方が死亡群に比して有意に輸液量が多かった。来院時の重症度スコアや抗菌薬, 昇圧剤投与等の初期輸液療法以外の治療法の施行割合では, 各群間で有意差を認めなかった。来院後1時間輸液量が1,700ml以上であれば100%の生存が得られた。1時間輸液量が1,700ml未満であっても, 24時間輸液量が3,200ml以上であり, 24時間尿量が550ml以上確保できたときは, 93%の生存率が得られたが, 24時間尿量が550ml確保できなかったときは, 38%の生存率であった。1時間輸液量が1,700ml未満, 24時間輸液量が3,200ml未満であっても, 24時尿量が550ml以上確保できたときは, 82%の生存率が得られたが, 24時間尿量550ml確保できなかったときは, 36%の生存率であった。結語 : severe sepsisの初期治療法では, 臓器灌流量を維持するための適切な初期輸液が, 重要であることが再確認され, 従来から言われている輸液量の指標は妥当であることも確認された。
  • 鶴田 良介, 日高 幸浩, 井上 健, 小田 泰崇, 金田 浩太郎, 笠岡 俊志, 前川 剛志
    2007 年 18 巻 10 号 p. 694-700
    発行日: 2007/10/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    背景 : 熱中症患者の病院前から来院までのバイタルサイン, 重症度 (安岡らの熱中症分類) についての疫学データは少ない。目的 : 熱中症を労作性と非労作性 (古典的) に分類し, それぞれの特徴を明らかにする。次に重症度をI~III度に分類し, III度に関連する因子を明らかにする。対象・方法 : 2006年7月1日から8月31日の間に山口県内で発生した熱中症患者のデータを消防と医師会の協力を得て集計し, 分析した。結果 : 救急車搬送患者は339人。そのうち医療機関のデータと照合できたのは92人 (27%) であった。2人の来院時心肺停止を除く, 90人について検討した。労作性熱中症患者は65人, 古典的熱中症患者は24人, 不明1人であった。古典的熱中症患者は労作性に比べると有意に高齢で, 男性の比率が少なく, 救急現場での酸素飽和度 (SpO2) が低かった。また, 来院時III度の比率が低い傾向にあった。次に, 病院での重症度をI/II度 (52人) とIII度 (38人) に分け, 比較したところIII度の患者は有意に男性に多く, 救急現場と来院時の収縮期血圧が低く, 入院日数が長かった。また, 屋外での発生, 労作性によるものが多い傾向にあった。III度に関連する独立危険因子は50歳以上 (オッズ比 (OR) 4.37, 95%信頼区間 (CI) 1.31-14.59, p=0.016), 男性 (OR 4.78, 95% CI 1.34-16.95, p=0.016), 労作性 (OR 5.57, 95% CI 1.31-23.77, p=0.020), 来院時収縮期血圧 (5mmHgの増加で) (OR 0.83, 95% CI 0.73-0.95, p=0.006) であった。結語 : 50歳以上の男性の労作性熱中症患者で, 来院時収縮期血圧の低い傾向にある場合, 重症である可能性が高いことが判明した。
症例報告
  • 上垣 慎二, 早川 峰司, 山崎 圭, 佐藤 朝之, 松井 俊尚, 牧瀬 博, 丸藤 哲
    2007 年 18 巻 10 号 p. 701-706
    発行日: 2007/10/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    総腸骨動脈瘤下大静脈瘻の1例を経験した。症例は69歳の男性。呼吸困難とショックの精査・加療目的に入院となった。造影CT上, 両側総腸骨動脈瘤と動脈相で濃染する拡張した下大静脈を認め, 動静脈瘻が疑われ血管造影を施行し確定診断を得た。術前の血行動態は心拍出量は10l/min, 中心静脈圧は28mmHgと異常高値を呈していた。術前に突然の心停止があったが迅速な心肺蘇生により自己心拍は再開し, 瘻孔閉鎖術と人工血管置換術を施行した。術後の血行動態は著明に改善したが心停止の影響で遷延性意識障害が残存した。第30病日にリハビリテーション目的に転院となった。大血管レベルでの動静脈瘻は非常に稀である。多くは動脈硬化性病変が基盤にあり動脈瘤破裂の一亜型と考えられている。症状は瘻孔の大きさやその拡大速度により多岐にわたるため, 術前の確定診断は困難といわれていたが, 近年ではmultidetector row angio-CTなどを駆使し, 術前に診断することが可能となってきている。治療法は本邦では開腹し瘻孔閉鎖が一般的であるが死亡率は高い。海外では血管内ステント治療の報告も多く, 合併症が多い症例でも良好な成績を残しており, 今後, 本邦での報告が期待されている。大血管レベルでの動静脈瘻などの巨大シャント存在下での血行動態は, 変化が急激であり周術期管理には一層の注意が必要である。
  • 丸井 祐二, 石原 和浩, 林 佑希子
    2007 年 18 巻 10 号 p. 707-712
    発行日: 2007/10/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    症例 : 93歳の男性。主訴 : 意識障害。現病歴 : 妻と二人暮し。妻が外出より帰宅時, 庭で倒れているところを発見され救急車にて救急外来に搬送された。当時の外気温は摂氏約10℃で, 約4時間程度外界にさらされていたと考えられた。来院時現症 : JCS-200, 末梢冷感著明, 血圧80/-mmHg, 脈拍60/min不整, 心電図モニター上心房細動と, 多発する心室性期外収縮を認め, 腋窩温は測定不能であった。血液検査上, 炎症反応, 脱水による腎機能障害, およびpH 7.056と著明な代謝性アシドーシスを認めた。頭部CTでは頭蓋内出血を認めなかった。不整脈を伴う重症低体温状態と判断し, 中心加温法として中心静脈への急速加温輸液を開始した。これに引き続き, 著明なアシドーシスもあることより, 持続血液濾過透析continuous hemodiafiltration (以下CHDFと略す) を来院約2時間後より開始した。CHDF開始1時間後にはpH 7.231まで改善し呼名に対し開眼がみられ, 2時間30分後には体温32℃まで上昇, 発語がみられるようになった。血圧は徐々に上昇し, CHDF開始7時間後より利尿がみられた。翌日にはCK 4,270U/lまで上昇し横紋筋融解症と考えられた。CHDF継続によりアシドーシスは改善し, 尿量も増加した。またCKは漸減し急性腎不全を回避できた。CHDFは開始後33時間で離脱し, 第4病日にICUを退室した。結語 : 著明なアシドーシスを伴った超高齢の重症低体温症に対して, 横紋筋融解症および急性腎不全の治療を念頭に置いた, 早期からのCHDFによる中心加温法はきわめて有効であると考えられた。
  • 上村 修二, 丹野 克俊, 平山 傑
    2007 年 18 巻 10 号 p. 713-717
    発行日: 2007/10/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の女性。自殺目的で焼酎5合とハイポネックス®推定150mlを服用し, 18時間後に救急外来を受診した。来院時, 高カリウム血症とメトヘモグロビン血症 (動脈血メトヘモグロビン25.6%) を呈していたが, メトヘモグロビン値は徐々に改善し, 来院12時間後に正常値となり, 第3病日退院となった。ハイポネックス®中毒による死亡例の報告はあるが, メトヘモグロビン血症の発症の報告はない。硝酸塩が酸化物質である亜硝酸塩に還元され, 血液内で亜硝酸塩によりヘモグロビンがメトヘモグロビンに酸化された結果と推測された。液体肥料中毒の重症例の報告は稀であるが, メトヘモグロビン血症を起こす可能性が考えられるので注意が必要と考えられた。
Letter to the Editor
学会通信
feedback
Top