日本救急医学会雑誌
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18 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 木村 昭夫, 井上 潤一, 菊野 隆明, 佐藤 守仁, 横田 順一朗
    2007 年 18 巻 11 号 p. 741-749
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    ヴェトナムでは, 急激な経済発展に伴うモータリゼーションによる交通外傷の増加に対して, 病院前の救急搬送体制が追いついていない状態が続いている。病院における診療の質の確保も急務であり, 国家的に標準化された診療法や研修プログラムへのニーズは高い。そのような状況下ハノイ市および周辺省を中心としたヴェトナム北部に, 日本で開発されたJapan Advanced Trauma Evaluation and Care (以下JATEC) に準じた外傷初期診療法のパンフレットやビデオ視覚教材をヴェトナム語で作成して配布し, アンケート調査にて有用性を確認した。省レベルの病院でも, 現地ニーズや能力に見合ったシミュレーション学習を取り入れた外傷診療研修コースを開発することに成功した。急性中毒診療や災害医療においても, 標準化されたマニュアルや訓練法は未整備状態で, 日本の支援に対する期待は高く, 当学会としても国際支援活動を考慮すべきと考える。
原著論文
症例報告
  • 鈴木 圭, 岩崎 仁史, 渡辺 文亮, 大森 教成, 石倉 健, 畑田 剛, 鈴木 秀謙
    2007 年 18 巻 11 号 p. 756-762
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の男性。受診数時間前からの増悪する嘔気, 腹痛, 左背部痛, 意識障害のために当院搬送となった。来院時ショックの状態で, 血液検査では急性腎不全, 肝機能障害, 血清アミラーゼ値の上昇がみられ, 出血傾向を伴う著しい代謝性アシドーシスが認められた。画像検査では軽度の肺炎像が認められたが, 下大静脈の虚脱がみられた他にはショックの原因となる疾患を指摘できなかった。ショックに対する初期治療の後, 集中治療室へ入室となった。腹痛の病歴と採血検査所見より, 急性膵炎に準じ治療を行った。補液及び人工呼吸管理により利尿がつき始め, 肺炎球菌尿中抗原検査 (NOW Streptococcus pneumoniae, Binax Inc., USA以下尿中抗原検査と略す) を施行したところ陽性を呈した。膵炎に準じ既に抗菌薬投与を行っていたことから同様の治療を継続したが, 多臓器不全が進行, 播種性血管内凝固症候群を併発し, 入院後8時間あまりの激烈な経過で死亡した。血液及び喀痰培養検査では有意細菌を検出できなかったが, 尿中抗原検査は偽陽性がきわめて少なく, 自験例の病態の根本は劇症型肺炎球菌感染症による敗血症性ショックとすることが妥当であると考えられる。劇症型肺炎球菌感染症は, 発症時に必ずしも肺炎像を呈するとは限らず, 原因不明の劇症型感染症の鑑別診断として重要である。このような症例の診断は血液培養の結果に依存せざるを得ないが, 迅速性に欠け, 感度も高いとはいえない。原因不明のショックの症例においては, 肺炎像が明らかでなくとも, 積極的に尿中抗原検査を用いた診断を行うことは, 自験例の如く血液培養が陽性とならない敗血症例ではとくに大きな意義があると考えられ, 今後の症例の蓄積が必要である。また, 尿中抗原検査で陽性を呈するショック症例は, 劇症型の経過をたどることが危惧され, いかに有効な治療手段を講じるかが今後の検討課題となると考えられる。
  • Tetsuji Nishikura, Taiji Ishii, Shiori Ikemura, Masakazu Ono, Shuichi ...
    2007 年 18 巻 11 号 p. 763-768
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    A 52-year-old woman who presented with severe burns developed arterial thrombi because of the insertion of a monitoring catheter. We took a conservative management approach, but the patient soon developed bacteremia and her condition worsened. She subsequently died of sepsis including septic pulmonary emboli, the foci of which were strongly suspected to be the arterial thrombi. If a monitoring catheter is mandatory in compromised patients, it should be inserted with extreme caution and care. Moreover early removal of arterial thrombi that develop in such patients is needed, because these thrombi could become infectious foci of persistent bacteremia.
  • 丹野 克俊, 平山 傑, 蕨 玲子, 橋本 功司, 鎌田 康宏
    2007 年 18 巻 11 号 p. 769-774
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    災害派遣医療チーム (Disaster Medical Assistance Team; DMAT) は災害発生直後からの初動と4日間程度の自給による活動を期待される。よって当院では4日間にわたるDMAT派遣訓練を行い実働に耐え得るか検証を行った。その訓練が奏功し, 実災害への初期対応が円滑に行われた貴重な経験を得たので報告する。2006年9月に開催されたWRCラリージャパン (World Rally Championship Rally Japan) において, サービスパーク内で選手及び観客に対する救護活動をDMAT活動と見立てて訓練を行った。DMAT研修資料や当院DMAT派遣マニュアルを参考に事前準備を行い, 活動期間中に過不足がないかを検討し, 改善を行った。期せずしてその約2か月後に佐呂間町で竜巻災害による負傷者が発生し, 当院DMATが出動した。訓練効果により出動決定から25分で出発することができた。現場到達前に事態は収束し撤退となったが, 初動体制の確認を行うことができた。4日間の訓練により実際的なイメージを持てたことが今回の円滑な活動に役立ったといえる
  • 矢吹 輝, 武山 直志, 青木 瑠里, 野口 裕記, 井上 保介, 中川 隆, 野口 宏
    2007 年 18 巻 11 号 p. 775-780
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP) の発症原因の一つとされるADAMTS13活性低下を認め, フィブリン血栓のみならず血小板血栓の関与も疑った敗血症性血小板減少症を経験したので報告する。症例 : 64歳の男性。四肢末梢の紫斑, 発熱, 炎症所見などで近医入院となる。入院翌朝に痙攣, 意識レベル低下を来し当院救命救急センター搬送となる。来院時意識状態JCSI-1, 四肢末梢にはチアノーゼを認め, 尿は茶褐色を呈していた。血液検査で高度炎症所見, 血小板減少, FDP-DD高値を認めており, 敗血症性DICの存在が疑われたためICUにおいて抗生剤投与, 抗DIC治療などを行った。循環動態の維持ならびに腎不全の進行に対し持続血液濾過透析を導入したものの, 血小板数の改善が得られなかったためTTPの存在も疑い, 第4病日に血漿交換を施行した。その後血小板数, CRPは改善し, 第7病日にICU退室した。また本症例の四肢末梢にみられた紫斑は敗血症に伴う末梢性対称性四肢壊死 (SPG) であると診断された。MRI検査により本症例の感染源は副鼻腔炎に起因する脳膿瘍であると診断された。血小板減少の原因検索でADAMTS13活性は搬入時より低下していたが, 抗ADAMTS13抗体価は陰性であり定型的TTPは否定的であった。近年, 敗血症性DIC症例においてADAMTS13活性が各種タンパク分解酵素によって阻害されることが報告され, その活性低下による血小板血栓形成が腎障害発生にも関与するということが示唆されている。本症例におけるDIC/血小板減少, 腎障害, SPGにもADAMTS13の活性低下による血小板血栓の形成が関与したものと推測された。
学会通信
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