日本救急医学会雑誌
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18 巻, 4 号
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原著論文
  • Yasushi Shimada, Kayo Nemoto, Minoru Kubota, Norifumi Ninomiya, Yasuhi ...
    2007 年 18 巻 4 号 p. 127-134
    発行日: 2007/04/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    Effective therapies against sepsis, which is commonly encountered in critical care units, have been long awaited. In this study, we examined the effects of pre-administered neuraminidase inhibitors, oseltamivir phosphate and zanamivir hydrate, on intestinal paralysis in a lipopolysaccharide (LPS)-induced endotoxicosis model in guinea pigs. Intestinal movement and body temperature of guinea pigs were measured successively. Intestinal movement was observed by telemetry using a force transducer installed on the taenia caecum. Simultaneously, body temperature was measured using a plate-type thermometer attached to the dorsum of the animal. On the 4th post-operative day, when intestinal movement was stabilized, lipopolysaccharide (LPS, E. coli, 0111:B4) was administered intraperitoneally. Oseltamivir and zanamivir were administrated orally and subcutaneously respectively, one hour prior to administration of LPS. In addition, to examine a neuraminidase activity in guinea pig, the level of free sialic acid in serum was measured using a periodate-resorcinol method. It was revealed that neuraminidase inhibitors, dosedependently prevented intestinal muscle relaxation and decreases in body temperature. Free sialic acid levels in guinea pig serum were decreased, indicating that oseltamivir effectively prevented neuraminidase activity. These results suggest that neuraminidase inhibitors can prevent LPS-induced intestinal paralysis and hypothermia inhibiting neuraminidase activity in guinea pigs, thus have a therapeutic potential for prevention of the worsening of endotoxicosis.
  • 塩井 義裕, 下沖 収, 皆川 幸洋, 馬場 祐康, 阿部 正, 井上 義博, 遠藤 重厚
    2007 年 18 巻 4 号 p. 135-142
    発行日: 2007/04/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    ハチ刺傷によるわが国における死亡者数は年間20~30名ほどあり, 死因はアナフィラキシーショックが多く, 診断及び治療には迅速な対応が必要である。平成16年1月から12月までに岩手県北東部の2病院 (岩手県立久慈病院救命救急センター, 岩手県済生会岩泉病院) を受診したハチ刺傷症例400例を対象とし, 診療録をもとにretrospectiveに検討したので報告する。男性231例, 女性169例で, 平均年齢51.2歳 (0-92歳) であった。年齢別受診状況では50~70歳代が多く, 月別受診状況では7~9月に集中しており8月にピークがあった。刺傷部位は, 上肢が最も多く, 刺傷箇所は1箇所のみが323例と最も多い。救急車による搬送は15例あり1例は死亡例であった。ハチ刺傷による全身症状の発現は31例 (7.6%) にみられ, 呼吸困難や意識障害や血圧低下などの重篤な症状は14例 (3.5%) にみられた。全身症状を呈した症例の刺傷から受診までの時間は平均79分 (記載例23例中) であり, アナフィラキシーショックが起こるとされる数分から15分を大きく上回る。2003年8月にわが国でもエピネフリン自己注射携帯キット, エピペン®が発売され, prehospital careとして使用できるようになった。ハチ刺傷によるアナフィラキシーショックによる死亡を防ぐにあたり, 積極的にエピペン®を広める必要がある。
症例報告
  • 赤坂 理, 金子 卓, 阿南 英明, 家本 陽一
    2007 年 18 巻 4 号 p. 143-148
    発行日: 2007/04/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性。生来健康であった。突然の38度の発熱, 水様性下痢, 嘔吐を認めた。次第に紅色皮疹が出現し, 呼吸困難感, 意識障害を伴ったため発症から約7時間後当院に搬送された。来院時ショック状態であり, 初期治療後, 集中治療室に入室した。頭部・胸部・腹部・骨盤CT検査では明らかな感染巣は認めなかった。集中治療室に入室後, 重症感染症による播種性血管内凝固症候群や急性腎不全などの合併症に対して集学的な加療を行ったが治療に反応せず発症後約33時間で死亡した。原因究明のため病理解剖を行った。両側副腎皮質の広範な出血性壊死, 及び全身の出血傾向を伴う多臓器障害, 脾臓低形成 (3.5cm×2.5cm×1.2cm ; 3.6g) を認めた。その後, 生前に採取した血液培養から肺炎球菌が検出された。脾臓に関しては瘢痕化なども認めないことから先天的な低形成であったことが示唆された。以上から脾臓低形成による劇症型肺炎球菌感染症を発症し, これがWaterhouse-Friderichsen症候群を惹起したものと考えられた。脾摘後敗血症はよく知られているが自験例も同様の病態と思われる。成人に初感染巣不明の重症敗血症が急速に発症した場合は脾臓低形成による免疫不全も考慮する必要があると考えられた。また, 尿中肺炎球菌莢膜抗原迅速キットが2005年1月に発売開始となっているが, 今後原因不明の重症感染症においては尿中抗原迅速キットの使用を検討し, データの集積を行う意義は大きいと考える。
  • 田畑 孝, 松岡 哲也, 大松 正宏
    2007 年 18 巻 4 号 p. 149-156
    発行日: 2007/04/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    症例は発症時3歳の男児。インフルエンザ脳症に罹患し, バルビタール療法と低体温療法を併用することにより頭蓋内圧をコントロールできた。初診時のCTでは大脳両半球における低吸収, 脳腫脹, 皮髄境界の消失が顕著であった。第17病日には不明瞭であった脳槽の輪郭が描出され始め, やがて広範な低吸収域のなかに脳回とみられる相対的な高吸収域がわずかに認められるに至った。ただし, 両側大脳皮質の広範な低吸収の状態は変わらなかった。第39病日, 大脳皮質の相対的な高吸収域がよりコントラストを増し, その数も増加した。第52病日の転院までには四肢ともに運動が活発化するなど, 神経機能は徐々に回復した。その後, さらに認識能及び運動能は向上し, 5年後の現在, 介助なしで階段の昇降が可能となり公立小学校の養護学級に通学している。したがって画像においても相応な改善が期待された。ところが実際には5年後のCTでは全く逆の所見を呈している。転院前にはすでに脳回が明瞭化してきていたにもかかわらず, 発症5年後には再び不明瞭化へと逆行した。運動野を中心として脳回が残存している部分もみられるが, 両側中大脳動脈領域を主体に全体的に神経細胞は脱落しており, 脳萎縮は顕著になっていた。このような画像の変化と相反する脳機能の回復は, 頭部外傷のごく一部に見出されるdelayed neuronal lossと呼ばれる病態に類似している。以上の点から, 少なくともCT画像が大脳皮質における器質的障害の程度を直接反映するとは限らないため, 小児インフルエンザ脳症については, 急性期の集学的治療のみならず理学療法を含めた長期にわたる積極的な治療が重要となろう。
  • 皆川 倫範, 平林 秀光, 藤田 顕, 岩下 具美, 今村 浩, 西沢 理, 岡元 和文
    2007 年 18 巻 4 号 p. 157-163
    発行日: 2007/04/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    後天性血友病Aは稀な疾患で, 重篤な出血傾向を認めることがある。患者は65歳男性, 右下腹部痛を訴え前医に受診し, CTで後腹膜血腫を認めた。血液検査でactivated partial thromboplastin time (APTT) の延長と血液凝固第VIII因子活性の減少を認めた。血管造影で右腰動脈からの出血を認め, Transcatheter arterial embolizations (TAE) を施行した。しかし, 全身状態が安定しなかった。当院へ救急搬送された。転院後, 血管造影で右外腸骨動脈の分枝からの出血を認め, 再度TAEを施行した。入院時の血液検査で第VIII因子インヒビターが確認され, 後天性血友病Aと診断した。TAE後, 動脈性の出血は収まったが貧血・全身状態は改善しなかった。第VIII因子製剤を使用したがAPTTは改善せず, プレドニゾロンを開始した。血腫の縮小とAPTTの短縮, 第VIII因子活性の上昇と第VIII因子インヒビターの低下を認めた。全身状態も安定化した。後天性血友病A患者の後腹膜出血に対し, TAEとプレドニゾロンは有効な治療である。
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