日本救急医学会雑誌
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19 巻 , 4 号
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原著論文
  • 武井 健吉, 清水 直樹, 松本 尚, 八木 貴典, 小原 崇一郎, 阪井 裕一, 益子 邦洋
    2008 年 19 巻 4 号 p. 201-207
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/07/19
    ジャーナル フリー
    【背景】小児重症患者は,小児集中治療室(pediatric intesive care unit; PICU)に集約して治療を行うことで治療成績の向上が得られることが海外において証明されているが,日本では小児重症患者の集約化が進んでいない。本研究では,成人を中心に診療している救命救急センターの集中治療室(intensive care unit; ICU)における小児重症患者管理と,PICUにおける小児重症患者管理について,その転帰を比較することを通して,小児重症患者の集約化の必要性を明らかにした。【対象と方法】2001年 1 月から2006年12月までの 6 年間に人工呼吸管理を要した15歳未満の小児患者を重症例として抽出し,ICUで管理した群(ICU群)とPICUに集約して管理した群(PICU群)に分けて,実死亡率とPediatric Index of Mortality 2(以下PIM2と略す)による予測死亡率の比較を行った。【結果】調査期間中のICU群は22例,PICU群は11例で,死亡例はそれぞれ 6 例, 1 例であった。ICU群の実死亡率は27.3%であり,PIM2による予測死亡率24.5%とほぼ同程度であった。一方,PICU群の実死亡率は9.1%であり,予測死亡率29.6%を大幅に下回っていた。【結論】小児重症患者をPICUに集約することで,救命率向上が期待できる。そのためには,広域搬送システムの構築が必要である。
症例報告
  • 小島 直樹, 佐々木 庸郎, 石田 順朗, 古谷 良輔, 稲川 博司, 岡田 保誠, 西条 正雄
    2008 年 19 巻 4 号 p. 208-213
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/07/19
    ジャーナル フリー
    近年肺炎桿菌や大腸菌における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase; ESBL)産生菌の分離頻度が増加しつつあり,第 3 世代セフェムが無効な新たな耐性菌として問題になっている。我々は,敗血症性ショックに陥ったESBL産生大腸菌による急性前立腺炎の 1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は50歳,男性。 3 年前に急性前立腺炎の治療を受けていた。発熱,頻尿,会陰部痛が出現し当院泌尿器科外来受診し,急性前立腺炎と診断されレボフロキサシンが開始された。帰宅後も残尿感が持続し,同日夕方に昏睡状態かつショック状態に陥っているところを発見され当院へ救急搬送された。敗血症性ショックに対して大量輸液,ドパミン投与,相対的副腎不全に対するステロイド補充療法及び持続的血液ろ過透析を開始した。抗生物質は前回に検出された大腸菌がレボフロキサシンに耐性であったのでイミペネム/シラスタチンを選択した。多臓器障害として肝障害,腎障害,播種性血管内凝固障害を認めたが,いずれも軽快し第12病日退院となった。後日,血液培養から大腸菌が検出され,レボフロキサシンにも耐性を示すESBL産生大腸菌であることが国立感染症研究所での遺伝子解析にて判明した。経口投与可能な抗生物質で感受性が認められたのはファロペネムナトリウム(以下FRPM),スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)の 2 剤のみであったので,FRPMを継続投与し外来通院へ引き継いだ。今後,グラム陰性菌を考慮した抗生物質を開始する場合には,ESBL産生菌が起炎菌である可能性も考慮し,重症例の場合は第一選択としてカルバペネム系抗生物質を選択するべきである。
  • 濱洲 晋哉, 佐藤 文平, 堀井 進一, 薄井 裕治
    2008 年 19 巻 4 号 p. 214-218
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/07/19
    ジャーナル フリー
    症例は18歳の男性で,約5日前より腹痛が出現し,症状が増悪したために当院を受診した。来院時左下腹部を中心に圧痛が著明であり,筋性防御も認めた。血液検査では白血球上昇を認めたが,他に異常はなかった。腹部造影CT検査にて腸間膜の血管を中心として小腸が渦巻き状に巻き込まれるwhirl signの他,小腸の壁肥厚や造影効果の低下など虚血性変化を疑わせる所見が存在し,緊急手術を施行した。手術所見はほぼ全長に渡る小腸が上腸間膜動脈を中心に時計方向へ360°回転しており,腸回転異常などの解剖学的異常は存在しなかったので,原発性小腸軸捻転症と診断した。腸管壊死の所見はなく捻転の解除のみで手術は終了した。術後経過は良好であり,手術後10日目に退院となった。本症例の術前診断は困難であるが,whirl signや腸管虚血を疑う所見が造影CT検査で得られ,治療方針決定に有用であった。
  • 吉川 恵次, 高橋 将史, 行田 祐樹, 川井 桂, 羽柴 正夫
    2008 年 19 巻 4 号 p. 219-228
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/07/19
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性。アルコール依存症で某精神病院に入院中。原因不明の心肺停止(CPA)を来した時期は抗酒薬の投与で無症状,安定期にあった。某日,午前 6 時55分,病棟ホールでCPAとなった。CPAの 1 分後から,胸骨圧迫の中断をできる限り少なくした心肺蘇生(CPR)を開始,継続した。卒倒から14分後に初回のAED通電, 3 回目の通電が心肺停止後30分での自己心拍再開に繋がった。転院先病院での低体温療法を併用しない集中治療の後,患者の神経学的所見はCPA前の程度にまで回復,良好な神経学的転帰が得られた。本症例はCPAからAED実施まで経過時間が長い場合でも,適正なCPRが実施されれば脳血流の維持による良好な神経学的転帰が期待できることを示した症例と考えられる。AED心電図では心室細動に対するアドレナリン投与の有効性が示唆された。
  • 大瀧 恵, 伊関 憲, 池谷 龍一, 奥山 志野, 永野 達也, 山川 光徳, 川前 金幸
    2008 年 19 巻 4 号 p. 229-234
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/07/19
    ジャーナル フリー
    病理解剖により心肺停止の原因が心サルコイドーシスと判明した症例を経験した。症例は31歳,女性。23時から明朝 5 時頃まで飲酒後,卓球中に突然意識を消失した。救急隊到着時心肺停止状態で,心電図波形は心静止であった。バイスタンダーによる心肺蘇生はなかった。病院到着後,一時心室細動となったため電気的除細動を施行したが,心拍は再開せず死亡確認した。血液所見,CT所見から死因が明らかとならず,家族の同意の上病理解剖となった。剖検の結果,肉眼所見では心室中隔を中心に心尖部まで広がる広範な線維化が認められた。組織所見では心室中隔を中心に類上皮細胞を伴う非乾酪性肉芽腫を認め,肺,肝臓にも非乾酪性肉芽腫が散在していた。以上からサルコイドーシスと確定診断され,とくに心臓に病変がある心サルコイドーシスによる致死的不整脈が死因であると推定された。サルコイドーシスはリンパ節,肺,眼,皮膚,心臓など多臓器に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が出現する原因不明の全身性疾患である。無症状で,健康診断で発見されることが多いが,本症例のように心臓病変では致死的不整脈を呈して,突然死を来すことがある。サルコイドーシスは20~30歳代に発症のピークがあり,若年女性の心臓突然死では心サルコイドーシスを疑う必要があると考える。
  • 樫見 文枝, 西巻 博, 服部 潤, 片岡 祐一, 今井 寛, 相馬 一亥, 原 英則
    2008 年 19 巻 4 号 p. 235-242
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/07/19
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病(以下,本症)は血管病変を合併し,血胸を来すことがある。縦隔血腫,血胸を合併し,TAE(transcatheter arterial embolization)にて救命し得た本症の 1 例を経験したので報告する。症例は47歳,男性。突然の胸背部痛にて当院救命救急センターへ搬送となった。CTにて左血胸及び第 9 肋間動脈からの造影剤の血管外漏出像を伴う縦隔血腫,第12肋間動脈瘤を認めた。緊急で血管造影を施行し同様の所見が得られ,TAEにて止血し救命できた。本症に伴う血胸は稀とされているが,死亡率が高い合併症である。そのため,本症に血胸を伴った際には循環動態が安定していても,積極的な治療が必要である。出血部位は様々であり,出血源の検索にはマルチスライスCTが有用である。文献的報告例のうち血管造影所見が確認できた11例では,出血部位はいずれも自験例同様,責任血管の中枢側に多い傾向を認めた。TAEは低侵襲であることから,第 1 選択の治療法となり得ると考えられた。
学会通信
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