日本救急医学会雑誌
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19 巻 , 5 号
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原著論文
  • 岩田 充永, 北川 喜己, 野々上 智, 坪井 重樹, 越後谷 良介, 岸田 郁美, 長谷川 正幸
    2008 年 19 巻 5 号 p. 255-261
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    目的:小児救急医療では,時間を問わず小児科医の診察を希望する保護者が多いが,小児救急患者の医療へのアクセス保障のためには救急医も積極的に小児診療を行うEmergency Room(ER)型救急の普及が重要である。ER型救急医による小児診療について理解を促進するためには,質の検討が必須であると考え,ERで診療を受けた小児患者の転帰を調査した。方法:ER型救急医療を行う日本の 1 施設において,年末年始連休にERを内因性疾患で受診し,帰宅後24時間以内にERを再診した小児症例について,再診時の転帰,主訴,受診理由を調査した。再診が無かった症例については他施設への入院の有無について聞き取り調査を行った。結果:期間中に661例が受診,初診後帰宅した626例のうち79例(13%)が24時間以内にERを再診した。再診例のうち59例(75%)は再診時に追加処置は不要であったが, 5 例(6.3%)は入院となった。入院例のうち 3 例は初診時に入院を勧められていたが, 2 例は初診時にER医に帰宅可能と判断されていた。この 2 症例については初診時の重症度の判断が適切でなく24時間以内の再診時に入院治療が必要となったと考えられ,期間中の小児受診例の0.3%に該当した。再診理由の81%は「初診時の症状持続」であった。ERから帰宅後24時間以内に他施設に入院となった症例は認めなかった。結論: ER医が初診時に重症度を適切に評価し得なかった割合0.3%については,これをゼロにするために研鑽を継続し非小児科医であるER型救急医が小児救急診療を行うことについて国民に理解を求める必要がある。医学的に必要性が無くても,症状継続を理由で短時間にERを再診する症例が多いことについては,保護者の不安に配慮し初診時に予想される経過や再診が必要な具体的な症状について明確な説明をする能力が救急医に求められることが示唆された。
  • 井上 卓也, 杉木 大輔, 池上 敬一, 上尾 光弘, 上山 昌史, 山下 勝之, 織田 順
    2008 年 19 巻 5 号 p. 262-271
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    喉頭損傷型気道熱傷患者に対して,気管支ファイバー検査(fiberoptic bronchoscopy,以下FOBと略す)を行い,喉頭浮腫の病態について検討し,気管挿管適応基準を作成した。1991年11月から1997年 4 月までに,体表熱傷あるいは気道熱傷を受傷して入院し,受傷後24時間以内にFOBを行えた156例中,喉頭損傷型気道熱傷と診断された68例を対象とした。68例は,入院直後のFOB後,独自の挿管基準に従って挿管の要否が判断された。対象を挿管の有無,挿管時期,挿管理由によって以下の 5 群に分けた。すなわち,初回FOB時に喉頭浮腫の挿管適応基準に従って挿管された14例(I群),初回FOB時,喉頭所見は挿管適応基準を満たさなかったが,他の挿管基準に従って挿管された14例(II群),初回の検査で挿管適応基準を満たさなかったが,その後の経過観察で喉頭浮腫により挿管された 4 例(III群),全経過を通じて挿管されなかった33例(IV群),初回の検査で挿管適応基準を満たさなかったが,担当医の判断により挿管された 3 例(V群)に分けた。(1)I,III,IV群の喉頭浮腫と受傷後時間の関係,(2)I~IV群間の年齢,体表熱傷面積,burn index,prognostic burn index,顔面熱傷の有無,頸部熱傷の有無の関連性,(3)III,IV群間の血清総蛋白濃度,及び喉頭浮腫に影響を及ぼすと考えられる治療内容について検討した。結論:1.受傷24時間以内の初回のFOBで診断された喉頭損傷型気道熱傷のうち,48.5%は我々の挿管適応基準を用いることで,挿管不要であった。この基準は根拠のある挿管のために有用である。2.喉頭損傷型気道熱傷の喉頭浮腫のピークは,受傷 6 時間以内と24時間前後に 2 峰性に認められた。3.喉頭の浮腫形成には,喉頭の直接損傷に加えて,熱傷による全身の浮腫が増悪因子として関与すると考えられた。
症例報告
  • 森脇 義弘, 豊田 洋, 小菅 宇之, 荒田 慎寿, 岩下 眞之, 鈴木 範行, 杉山 貢
    2008 年 19 巻 5 号 p. 272-278
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    出血性ショックを伴ったクローン病として転院搬送された腸結核の 1 例を報告する。患者は62歳,女性。透析導入のための近医入院中に下部消化管造影,内視鏡,生検でクローン病と診断され,ステロイド治療を開始された。感染徴候のない発熱と考え再入院となり,ステロイドと免疫抑制剤で治療されたが改善はなかった。下血と呼吸促迫を伴うショックとなり,人工呼吸管理,カテコラミン投与の後に,外科的処置を目的に当センターへ転院搬送となった。前医の下部消化管造影から必ずしも典型的クローン病とは考えにくかったが,出血性ショックのため緊急手術(右結腸切除)を余儀なくされた。術後はseptic shockから離脱できず第 6 病日に死亡した。患者の死後,切除標本の組織学的検査から,肺症状を伴わない活動性の腸結核と診断された。ステロイドを使用しているクローン病では,常時,腸結核との鑑別を念頭におくべきと思われた。また,情報に乏しい初診患者への緊急対応を余儀なくされる救急部門では,診療が終了してから結核であったと判明した場合に関係した職員の健康診断を行うなどの対策を考案しておくべきと考えられた。
  • Masamitsu Shirokawa, Yasuhiro Shibuya, Makoto Mitsusada, Akihiko Yamam ...
    2008 年 19 巻 5 号 p. 279-282
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    A 79-year-old woman was transferred to an emergency care center because of difficulty opening her mouth. Major trauma was not evident but she had a scab from a minor injury on the right fifth finger. Three days later, sudden respiratory failure and heart failure developed with an inverted T wave in electrocardiogram, Takotsubo-like wall motion and slightly elevated creatine kinase and troponin T. We isolated Clostridium tetani from the scab on her finger and from soil at the farm where she worked. Tetanus was clinically and biologically diagnosed and she was sedated, ventilated and given circulatory support. She was discharged on hospital day 35. Isolation of C. tetani is very rare and to our knowledge, this is the first time that C. tetani has been isolated from a scab. C. tetani infection cannot be discounted even when a wound is in a stage of advanced healing and such wounds should always be debrided for therapeutic purposes.
  • 阿部 紘一郎, 加藤 雅也, 坪内 弘明, 西本 昌義, 福田 真樹子, 西原 功, 秋元 寛
    2008 年 19 巻 5 号 p. 283-287
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    当センターの特発性食道破裂に対する治療成績を報告する。対象と方法:1991年から2007年までの特発性食道破裂 9 例を対象とした。平均年齢は65歳,男性 8 例,女性 1 例であった。術式,合併症,予後について検討した。結果:術式は直接縫合閉鎖 4 例,Fundic patch 1 例,T-tubeドレナージ 1 例,横隔膜パッチ 1 例,胸部食道全摘・頸部食道瘻 1 例,ドレナージのみ 1 例であった。縫合不全は 6 例(66%)に認めた。死亡は 2 例(死亡率22.2%)であった。考察と結語:死亡率は本邦での18%と比し,遜色のない成績であった。胃壁・肋間筋などでパッチを行う術式が近年報告されているが,当センターでは直接縫合閉鎖を主な術式としている。同術式は縫合不全の率は高いものの適確なドレナージを行えば救命率は良好であると考えられた。また破裂部周囲の食道剥離を小範囲にすることで縫合不全発生率を低下させる可能性が示唆された。
  • 中山 祐介, 亀岡 聖史, 林 伸洋, 影嶋 健二, 能勢 道也, 中田 康城, 八木 啓一
    2008 年 19 巻 5 号 p. 288-292
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    胃瘻からの経管栄養の際に用いるボタン式バルーンカテーテルは,体表面への隆起が少なく,交換が容易であることから広く普及している。今回,ボタン式胃瘻カテーテルの先端バルーンによって,幽門閉塞からマロリーワイス症候群を来した症例を経験したので報告する。症例は60歳の男性で,高位脊髄損傷にて完全四肢麻痺であった。これまで使用していた胃瘻カテーテルをチューブ式からボタン式バルーンカテーテルへ入れ替えた後から,黒色便と経管栄養中の腹部膨隆を認め,入院時の胃内視鏡検査にてマロリーワイス症候群と診断した。入院時には経管栄養の中止に伴い,明らかな腹部膨隆は認めなかったが,第 5 病日の内視鏡検査の最中に腹部膨隆を認め,カテーテルの先端バルーンが十二指腸球部に迷入し幽門閉塞を来していた。先端バルーンが固定されない経腸栄養チューブでは,幽門閉塞から嘔吐や誤嚥性肺炎,腹部膨満を来すことがあるが,マロリーワイス症候群を来した症例は極めて稀である。ボタン式バルーンカテーテルは,扱いやすく広く普及しているが,同様の合併症には十分に留意すべきである。
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