日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
19 巻 , 7 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著論文
  • 水島 靖明, 上野 正人, 西内 辰也, 松岡 哲也
    2008 年 19 巻 7 号 p. 409-415
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    鈍的胸部外傷患者の急性期の治療戦略,とくに手術療法の適応を明らかにするため,鈍的損傷かつ胸部AIS 3以上の254例を対象とし,治療経過と予後を検討した。155例(61%)が他部位AIS 3以上の多発外傷であり,急性期に開胸術が施行されたものは24例(9.4 %) であった。また,手術症例での術前の,BE,プロトロンビン時間,体温の検討では,19症例でいわゆる外傷死の三徴(deadly triad)の基準のひとつ以上を満たし, 5 症例で,三徴すべてを満たしていた。また,血胸で手術を施行した14症例の検討では,従来の開胸適応とされる胸腔ドレナージ排液量より少ない排液量で開胸が行われた例がほとんどであった。手術療法を要する鈍的胸部外傷では,多発外傷であることが多く,低体温,凝固障害など状態が急激に悪化することを考慮し,迅速な手術決定が不可欠である。従来の胸腔排液量を開胸の基準とした場合,手術判断が遅れる可能性があると考えられる。
  • 山下 雅知, 明石 勝也, 太田 凡, 瀧 健治, 瀧野 昌也, 寺澤 秀一, 林 寛之, 本多 英喜, 堀 進悟, 箕輪 良行, 山田 至 ...
    2008 年 19 巻 7 号 p. 416-423
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    日本救急医学会救急科専門医指定施設に対してアンケート調査を行い,ER型救急医療の実施状況を調査した。408施設中283施設からアンケートの回答が得られ,有効回答は248施設であった(有効回答率88%)。このうち24時間または一部の時間帯でER型救急医療を行っていると回答した施設は150存在した(248施設の60%,24時間82施設,一部の時間帯68施設)。150施設中,救命救急センターは64施設,日本救急医学会指導医指定施設は23施設,大学病院は38施設存在した。150施設の病床数,年間救急患者数,救急搬送患者数の最頻値は,それぞれ501~750床,10,001~20,000人,2,001~4,000人であった。救急医及びER型救急医数は 1 ~16人以上と広い分布を示したが,最頻値はともに 1 ~ 3 人であった。ER型救急医療は,150施設中139施設で初期臨床研修に活用されていた。ER型救急医の後期研修プログラムは68施設で実施され,36施設で準備中であった。24時間ER型救急医療を実施している施設では,一部の時間帯で実施している施設に比して,救急医数・ER型救急医数ともに有意に多かった。以上から,日本救急医学会救急科専門医指定施設の60%でER型救急医療が実施されていること,ER型救急医療を実施している施設において救急医及びER型救急医の人的資源は十分とはいえないこと,が明らかとなった。今後も増加が予想される救急患者に対応するために,救急科専門医及びER型救急医をどのように育成していくかについて,国家的な戦略が必要であると考えられた。
症例報告
  • 大塚 尚実, 其田 一, 山崎 裕, 北 飛鳥, 宇留野 修一
    2008 年 19 巻 7 号 p. 424-427
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    「氷上の格闘技」と呼ばれるアイスホッケーの試合中に,パックが頸部に衝突し,心肺停止で搬送された症例を経験したので報告する。症例は18歳の男性。アイスホッケーの試合中,相手のシュートで放たれた硬質ゴム製パック(重量約160g)が左耳後部に当たり,意識消失した。直後は自発呼吸があったがまもなく消失し,救急車内収容後に心静止となった。当院に搬入された際は心肺停止状態であり,瞳孔は散大し対光反射は消失していた。CPRを継続し,エピネフリン 1 mg投与後,自己心拍が再開した。左乳様突起尾側部に打撲痕が認められた。CT及びMRIを撮影したところ,くも膜下出血及び脳幹周囲血腫を認めた。自発呼吸,意識は回復しなかった。集中治療室に入室し,脳保護目的で低体温療法を行ったが,第 5 病日のCTでは低酸素脳症の所見であり,脳波・聴性脳幹反応ともに平坦であった。遠征中の事故であったため第 7 病日に地元病院に転院搬送となったが,搬送 7 日後に肺炎による呼吸不全を主とする多臓器不全により死亡した。アイスホッケーでは身体接触による外傷のほか,スケート,スティックやパックなどによる外傷も多数報告されている。そのため若年者ではより厳重に防具で身体保護を行っているが,シュートは成人で120-150 km/hにもなる。今回は防具の隙間に衝撃が加わり,脳幹周囲出血及びくも膜下出血を呈し,脳圧上昇によって脳幹が圧迫され,呼吸停止から心停止に至ったと推測される。同様の事故による複数の剖検例も報告されており,今後防具等の改善を検討する必要がある。
  • 室谷 卓, 中川 淳一郎, 渡部 貴士, 田原 憲一, 野村 文彦, 呉 教東, 山吉 滋
    2008 年 19 巻 7 号 p. 428-433
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    救急外来においては迅速な診断と治療を迫られることが多いが,必ずしも来院時に正確な情報が詳細に入手できるとは限らず,それが診断を遅らせる原因となる。今回我々は十分な病歴聴取が行えなかったことから薬物中毒の確定診断に難渋した症例を経験したため若干の考察を加え報告する。症例は29歳の女性で,受診数日前より全身に皮下出血を認め,意識障害を主訴に救急搬送となった。来院時意識レベルはGlasgow coma scale E3V5M6。身体所見として顔面,胸部,上下肢に皮下出血が認められた。血液検査では高度の貧血と高度の凝固異常が認められた。来院時頭部,腹部CTで硬膜下血腫,腹腔内出血を認めた。凝固異常,貧血に対してビタミンK製剤の投与,新鮮凍結血漿の投与,輸血を施行した。第 2 病日,血液凝固能改善後,硬膜下血腫に対して穿頭血腫ドレナージ術を行った。腹腔内出血に対しては有意な腹部症状がなかったため経過観察とした。凝固異常に関しては当初,殺鼡剤を含めた薬物中毒や凝固因子欠乏症などの血液疾患を鑑別にあげていた。第 9 病日,母親がクマリン系殺鼠剤を持参され,本人も摂取の事実を認めたため,本症例における血液凝固能異常はクマリン系殺鼠剤の摂取による薬物中毒という診断が確定した。その後,ビタミンK製剤の投与を行い全身状態の改善を持って第12病日軽快退院となった。本人は病歴聴取には口を閉ざし,殺鼠剤の内服を話さず確定診断までに時間を要した。家族などからの病歴聴取や生活環境などを含めた詳細な情報収集が重要であり,原因不明の凝固能異常と出血傾向を認めた患者ではクマリン系殺鼡剤による薬物中毒を鑑別疾患にあげることが必要である。
  • 末吉 孝一郎, 吉岡 伴樹, 船越 拓, 鈴木 義彦, 藤芳 直彦, 森本 文雄, 渋谷 正徳
    2008 年 19 巻 7 号 p. 434-439
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    患者は60歳の女性。運動会で突然の心肺停止状態となり,bystander CPRが施行された。電気的除細動で心拍再開し当院へ救急搬送となった。冠動脈造影(coronary angiography; CAG)にて急性心筋梗塞(acute myocardial infarction; AMI)と診断し経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)を施行した。集中治療室(intensive care unit; ICU)へ入室し抗凝固療法が施行されたが,カテコラミン投与下にても循環動態は安定せず,貧血の進行と肝逸脱酵素の上昇を認めた。第2病日に施行した腹部造影CTでは肝右葉に被膜下血腫と実質損傷を認め,肝左葉実質の損傷も認めたためこれが出血源と考えられた。被膜下血腫により圧排された肝右葉は均一に造影されず,肝実質組織内圧上昇による血流障害を認め,肝コンパートメント症候群であると診断した。まず抗凝固療法を中止し,新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma; FFP)及び濃厚血小板液(platelet concentrate; PC)投与による凝固能改善を図り,人赤血球濃厚液(red cells MAP; MAP)投与を行ったが循環動態の改善を認めなかったため,腹部血管造影を施行した。腹部血管造影では動脈相での明らかな造影剤の血管外漏出(extravasation)は認めなかったが,肝動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization; TAE)を行うことで循環動態は安定した。以後,全身状態は改善したが,血腫の縮小を促進させるために穿刺ドレナージを行い,第73病日に独歩退院となった。肝コンパートメント症候群の報告例は極めて稀であり,肝虚血に対しては減圧による虚血の解除が必要であると報告されている。しかしながら本症例ではTAEにて保存的に治癒せしめることができた。
  • 米満 弘一郎, 白 鴻成, 前野 良人, 大西 光雄, 西野 正人, 木下 順弘, 定光 大海
    2008 年 19 巻 7 号 p. 440-444
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    発症第 3 病日に劇症肝不全を合併したが,保存的加療にて軽快した熱中症III度症候群を経験した。症例は39歳の男性。マラソン中に意識消失した。Japan coma scale(JCS)200,腋窩温40.9°C,ショック状態だった。前医入院後,意識・全身状態は改善したが,第 3 病日に肝酵素,CPKの著明な上昇及びDICを認め当院転院となった。第 4 病日に肝性昏睡II度,PT活性20%,HPT 20%,AKBR 0.69,AST 3,330 IU/l,ALT 5,880 IU/l,NH3 155μg/dlとなり劇症肝不全と診断し,血漿交換及び持続血液濾過透析を行った。肝障害は速やかに改善し第33病日,独歩転院となった。熱中症III度症候群に合併する重症肝障害は,ショック,DICを契機に第 3 病日前後に顕在化すると考えられる。適時的な血液浄化などで保存的に軽快する例が多いが,早期より肝障害を想定した慎重な輸液管理,集中管理が重要である。
  • 山岸 庸太, 岡田 祐二, 石川 雅一, 水野 章, 埜村 智之
    2008 年 19 巻 7 号 p. 445-450
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2009/07/25
    ジャーナル フリー
    経皮経肝胆道内瘻術が奏効した腹部鈍的外傷による総胆管狭窄の 1 例を経験した。症例は19歳の男性。野球の試合中,打球を捕球する際に鉄棒で腹部を打撲し受傷。同日,外来受診。腹部CTでは異常所見なく帰宅したが,受傷後10日目頃より食欲不振,尿黄染が出現,14日目に再受診となった。入院時検査所見では肝機能障害,黄疸を認め,腹部CT検査では肝内胆管から上部胆管にかけての拡張像と総胆管の閉塞像を認めた。以上より腹部鈍的外傷による遅発性良性胆管狭窄と診断した。減黄目的に右肝内胆管から7FrのPTCD(percutaneous transhepatic cholangiodrainage)チューブを挿入した。減黄は良好であったがチューブが自然脱落したため,左肝内胆管から同サイズのPTCDチューブを再挿入した。その後,8FrのPTCDチューブに変更,そのチューブが狭窄部を越え内瘻化が可能となり, 4 日後にクランプして完全内瘻とした。徐々に,14Frまで内瘻化チューブを拡張させ,造影にて良好な通過を確認し,ドレナージ後74日目に胆道留置チューブを抜去することができた。その後は再狭窄症状を認めず,現在,外来にて経過観察中である。
学会通信
feedback
Top