日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
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2 巻, 1 号
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  • 石田 詔治, 奥 憲一
    1991 年 2 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    In this year of 1991, modern cardiopulmonary resuscitation (CPR) is only 31 years old. There were few immediately applicable effective CPR techniques available before the 1950s. Modern respiratory resuscitation was pioneered in the 1950s, external cardiac resuscitation in the 1960s, and post-resuscitation brain-oriented intensive therapy since the 1970s when CPR was extended to cardiopulmonary cerebral resuscitation (CPCR). From a medical standpoint, CPR shound be rediscovered, re-explored, and put together into an effective resuscitation system, out of a greater appreciation of its life-saving potential. Fortunately, the recent history of modern CPR shows a series of landmark developments during the past 31 years, and resuscitation continues to be enjoying a renaissance of interest worldwide.
  • 野池 博文, 上嶋 権兵衛, 斎藤 徹, 安川 透, 大石 知実, 村松 俊哉, 矢部 喜正
    1991 年 2 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    急性前壁梗塞発症6時間以内にECG記録し得た85例を増高T波(type A, n=12), ST上昇(type B, n=21)およびドーム型,平坦型ST上昇(type C, n=52)の3 typeに分類し比較検討した。(1)3ヵ月以上前より狭心症の既往を有する割合はtype Aでは25%を占め,type B (33%)およびC (50%)に比し少ない傾向を示した。(2)type Aは梗塞発症より1.6時間とtype B (2.4時間)およびtype C (2.6時間)に比し早期ECGに認められ,それぞれの時間におけるCPK値は112IU/l, 347IU/lおよび522IU/lとtype Aはtype Bおよびtype Cに比し低値を示した。また最大CPK値はそれぞれ2,729IU/l, 1,986IU/lおよび2,152IU/lと有意差はなかった。梗塞発症より最大CPKを示すまでの時間は,type Aは12.6時間とtype B (17.6時間)およびC (18.0時間)に比しより短いことが示された。(3)type Aの死亡率は41.7%とtype B (19.0%)およびC (30.8%)に比し高率を占めた。一方,生存例のCCU滞在日数は,type Aは3.8日でtype B (5.1日)およびtype C (7.2日)に比し短いことからその早期予後は良好と解された。(4)慢性期冠動脈造影所見上,type Aは梗塞責任冠動脈の完全閉塞を認めず,type Bでは55%, type Cでは全例に完全閉塞を認めた。以上の結果より増高T波は,急性心筋梗塞発症早期心電図に認められ,狭心症の既往なく突発する傾向を示した。また最大CPKまでの時間は短く,生存例は良好な経過をとり,その冠動脈造影上,全例完全閉塞がないことより内科的初期治療による梗塞責任冠動脈の早期再疎通の結果と思われた。さらに狭心症の既往歴が少ないこと,梗塞発症時の症状が強いこと,および慢性期の冠動脈造影上側副血行路が不良であることから推測すると,増高T波を示す一要因として梗塞発症前の虚血程度が軽微である可能性が示唆された。
  • DOA 643例の検討
    小野 一之, 濱邊 祐一, 黒木 啓文, 堤 晴彦, 佐々木 仁也
    1991 年 2 巻 1 号 p. 28-37
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,来院時心肺停止患者の予後と,予後に影響を与える因子に関して検討を加えた。対象は1985年11月から1989年10月までに都立墨東病院救命救急センターに搬入された来院時心肺停止患者643例である。このうち,外来で死亡確認された509例をI群,心拍が再開し病棟に収容されたが最終的に死亡退院した116例をII群,入院後30日間以上生存し,全身状態が安定して転院または退院した18例をIII群とした。予後に影響する可能性がある因子としては,(1)心停止の原因,(2)性別,(3)年齢,(4)来院時心電図所見,(5)目撃者の有無,(6)目撃者による心肺蘇生の有無,(7)心肺停止が救急隊現場到着後か否か,(8)心肺停止から一次救命処置開始までの時間,(9)一次救命処置施行時間,(10)心肺停止から二次救命処置開始までの時間の10項目について予後との関係を検討した。蘇生率を(II+III/I+II+III)×100(%),救命率を(III/I+II+III)×100(%)とすると,DOA全体での蘇生率は20.8%,救命率は2.8%であった。(1)~(7)で蘇生率,救命率との関係を,(8)~(10)でI群,II群,III群の時間の差を比較検討すると,(1) (5) (7) (9) (10)の5因子で有意差がみられた。(1)心停止の原因別では窒息・溺水の救命率がもっとも高かった(p<0.05)。(5)内因性疾患とDOA全体での蘇生率は目撃者のあるほうが高かった(p<0.01)。窒息・溺水以外では目撃者のない救命例は存在しなかった。(7)内因性疾患,外傷,DOA全体での救命率は救急隊現場到着後の心肺停止で高かった(p<0.05)。外傷では救急隊現場到着以前の心肺停止の救命例は存在しなかった。(9) BLS時間はI群22.6±7.5分,III群14.4±10.3分で,III群が有意に短かった(p<0.01)。(10) ALS開始までの時間はI群27.5±8.5分,II群25.0±9.8分,III群17.3±11.3分で,III群は両群に比較して短かった(I群に対しp<0.01, II群に対しp<0.05)。以上の結果を考慮にいれ,蘇生術継続の適応,救命率向上のための方策を検討すべきと考える。
  • 福田 忠治, 斎田 晃彦, 佐藤 階男, 蓮江 正道, 渋谷 誠, 三輪 哲郎
    1991 年 2 巻 1 号 p. 38-48
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    目的:外傷性頭蓋内血腫の除去ならびに減圧後反対側に血腫を形成した例をtraumatic delayed contralateral hematoma (TDCH)と呼称することとし,自験6例および文献的検討によりその術前診断ならびに治療方針について考察した。結果:A) 診断;TDCHを形成する症例は以下のような特徴を有した。(1)受傷部位,頭蓋単純撮影:定型例は側方部を打撲し,同部の線状骨折と反対側の一次血腫を有する。自験例では,正中部を打撲し,正中線上の骨折,または冠状縫合の離解を含む両側にまたがる骨折を有する例が多かった。(2)来院時神経症状:多くの報告で,受傷直後または急速に昏睡に陥る重症頭部外傷とされ,自験例でも全例JCS 100以上で,3例はlucid intervalを認めなかった。(3)初回CT:多くの例で受傷3時間以内に施行されている。自験例では全例に一次血腫と反対側の外傷性の変化がみられた。diffuse injuryを含む一次血腫と反対側の外傷性変化はTDCH形成を予測する重要な所見と思われた。B) 治療;(1)初回手術は大部分の報告で受傷4時間以内に行われ,術中の著明な脳の膨隆が特徴的で自験例でも5例に認められた。(2)第2回手術は可及的早期に行うべきで,その決定には初回手術終了直後のCTが有用であると思われた。C) 転帰;GOSに従った転帰は約半数がSD以下と不良で,合併する脳実質損傷がその原因となっていると思われる症例も存在した。転帰の改善には,可及的早期にTDCHを除去することが必要であると思われた。結論:(1)受傷3時間以内のCTで外傷性頭蓋内血腫を認め,反対側の外傷性変化を伴い,意識障害が強く,一次血腫と反対側または両側にわたるか正中線上の線状骨折を認めるなどの条件を示す例はTDCHを形成する可能性がある。(2)TDCH形成をもっとも確実に診断できるのは手術直後のCTである。(3)TDCH形成例の転帰を改善するためには可及的早期にTDCHを診断,治療することが必要である。
  • 運用の実際と有用性
    藤原 秀臣, 秋山 淳一, 徳永 毅, 雨宮 浩, 青沼 和隆, 家坂 義人, 今野 誠一
    1991 年 2 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    救急医療においては,救急現場および救急患者搬送に関与する救急隊の果たす役割がきわめて大きい。しかし,救急隊員の努力もむなしく救急車内で病態が急変し不幸な転帰をとる患者も少なくないことから,救急隊員の救急処置の向上も必要とされてきている。そのためには従来行われている患者のvital signsの把握のほかに,生体情報としてもっとも重要である心電図を救急車内からCCUへ直接伝送し,専門医が速やかに判読し適切な救急処置を指示するというシステムの導入が不可欠である。そこで最近目覚ましく普及した自動車電話と音響カプラーを組み合わせて“救急心電図電話伝送システム”を開発し運用を試みた。本システムの機構上の利点としては,第一に救急隊員が患者の胸壁にパネルを当てるだけで容易に心電図が伝送できること,第二に自動車電話を用いているので,特殊な認可が不要で,いつでもどこでも運用でき対話が容易であること,第三に音響カプラー方式であるので心電図伝送が直接的,即時的であることなどが挙げられる。本システムは1989年6月より運用を開始し,1990年8月までに43例に施行され,心疾患が12例,他の疾患が31例であった。心疾患の内訳は,急性心筋梗塞2例,狭心症4例,心不全2例,不整脈4例であった。伝送心電図の所見は,洞調律24例,洞性頻脈5例,洞性徐脈1例,頻拍性心房細動2例,完全左脚ブロック1例,心停止5例,ST偏位5例(梗塞パターン2例)であった。本システム運用の結果,救急車搬送中の心疾患患者の病態や重症度が予知できるため,CCUでの受け入れ体勢が整えやすく迅速・的確な処置が可能であった。また,他の疾患についても循環動態の推定ができ,軽症例のスクリーニングも可能であった。さらに救急隊との連携が強化され,地域救急医療の充実が図られると考えられた。
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