急性期脳梗塞入院患者に対し,その合併心疾患について断層心エコー図法と24時間心電図を用い検討した。脳梗塞発症様式により突発完成型と緩徐進行型に分け,また大きさ・部位により大梗塞・皮質枝系梗塞・穿通枝系梗塞・小脳梗塞・脳幹梗塞と分類した。患者の病型別内訳は総数174例のうち,突発完成型44例(25%),緩徐進行型130例(75%)であり,一方,大きさ・部位別では,穿通枝系梗塞が97例(56%)と過半数を占めた。心エコー所見;心エコーを実施した158例中,弁膜症・心筋梗塞・心筋症・左房拡大・左房左室内モヤモヤエコー・左房内血栓の合併は,突発完成型で19例(43%),緩徐進行型で17例(15%)と有意に前者に多かった。これは,前者に心原性脳塞栓症が多い可能性を示唆する。正常範囲内の所見は,突発完成型と緩徐進行型の間に有意差はなく,両型合わせて81例(51%)で,約半数に心エコー上異常所見を認めなかった。24時間心電図所見;24時間心電図を施行した104例中,突発完成型,緩徐進行型の間に差異が認められたのは,心房細動の合併率である。前者は9例(32%)に,後者は7例(9%)に合併しており有意差が認められた。また両型合わせた16例(15%)の心房細動合併は,一般成人0.4%の出現率に比し有意に高かった。洞不全症候群の早期診断に寄与した症例もあった。正常範囲内所見は,突発完成型9例(32%),緩徐進行型32例(42%)の間で有意差はなく,両型合わせると41例(39%)であった。以上をまとめると,1)脳梗塞患者は,その病型を問わず,約半数に心エコーあるいは24時間心電図上の異常所見の合併を認めた。2)弁膜症,心筋梗塞,心筋症,左房拡大,左房左室内モヤモヤエコー,左房内血栓の合併は,突発完成型脳梗塞に有意に多かった。3)心房細動の合併率は,脳梗塞患者に有意に高く,しかも突発完成型にはさらに高かった。脳梗塞の急性期に心疾患との合併を重視し,これを早期診断することは,脳梗塞治療成績の改善および再発の予防につながると思われた。
抄録全体を表示