日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
20 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 丸藤 哲, 澤村 淳, 早川 峰司, 星野 弘勝, 久保田 信彦, 平安山 直美, 菅野 正寛, 和田 剛志, 方波見 謙一
    2009 年 20 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    出血傾向・血栓傾向を呈する病態,各種凝固線溶療法,血液浄化装置・補助体外循環装置等,血小板・凝固線溶系モニタリングが要求される疾患・病態,治療法,そして医療機器が救急集中治療域では数多い。このように救急集中治療に携わる医師にとり,血栓止血学の知識とその理解に基づく血小板・凝固線溶系モニタリングは,救急疾患や重症病態の診断とそれらの集中治療の実践に必須である。本稿では血小板・凝固線溶系モニタリングが必要な病態,治療法,医療機器を述べ,それらに使用される血小板,凝固線溶系モニタリングと機器を使用したモニタリングの実際を解説した。
原著論文
  • 会田 薫子, 甲斐 一郎
    2009 年 20 巻 1 号 p. 16-30
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    背景・目的:日本救急医学会は延命治療の中止基準を本邦の医学会として初めて策定した。本研究では,同学会の「終末期医療に関する提言(ガイドライン)」策定直前の救急医療現場において,延命治療の中止に関わる問題点を,人工呼吸器に焦点を当て,救急医の経験と認識に基づいて探索的に調査することを目的とした。対象・方法:対象は救急医35名(男性31名,女性4名;年齢中央値49歳)。データは2006~2007年に個別の半構造化インタビューによって収集し,データ収集と分析にはgrounded theory approachの手法を用いた。結果:末期患者において人工呼吸器の中止を通常の臨床上の選択肢としていた医師はおらず,その理由として,1)警察の介入・報道問題,2)家族関連問題,3)医師側の心理的障壁,4)医学的要因,という直接要因群の存在が示された。一方,他の治療法は中止も選択肢であることが示された。考察:延命治療の中止基準が不在であったなか,近年の具体事例への警察の介入とそれに関する報道内容が実質的な「社会の許容限度」を臨床医に知らせる形になっていたことが示された。しかし,警察と報道の対応に問題があったため,その「許容限度」という解釈にも問題があることが示唆された。学会「ガイドライン」によってこの問題が緩和される可能性は示唆されたが,人工呼吸器の中止という行為を「縮命への作為」と認識することを中核とする「医師の心理的障壁」と,「医学的要因」の構成要素である「中止によって患者に苦痛を与える懸念」という問題は残される可能性が示唆された。
症例報告
  • 中田 一之, 間藤 卓, 山口 充, 福島 憲治, 澤野 誠, 堤 晴彦, 矢島 敏行
    2009 年 20 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の女性,既往にうつ病。自殺目的にて購入した観賞用トリカブトの根を煎じて服用したところ胸部苦悶が出現し救急隊を要請,服用から30分後に摂取したトリカブトを持参し当院へ搬送された。来院時,頻発する心室性期外収縮と血圧低下を認め,人工呼吸治療,胃洗浄,活性炭及び塩酸リドカイン投与を行った。一時的に循環動態は改善したが,その後房室伝導解離や脚ブロックなどの多彩な不整脈が出現したことから,原因物質である体内のアコニチン系アルカロイド(aconitine alkaloids; AA)の除去を目的として血液吸着法(direct hemo-perfusion; DHP)を合計2クール施行した。DHPの開始後まもなく,不整脈は消失し循環動態は改善した。経過中に血中及び尿中AA濃度を入院時, 2 度のDHPの後,入院翌日の計 4 回,アコニチン(AC),ヒパコニチン(HC),メサコニチン(MC)の 3 種類で測定を行った。その結果,血中ではAAは終始検出されず,したがってDHPのAA除去効果について検証を行うことはできなかった。なお,本例は野生種ではなく改良品種のトリカブトを摂取した比較的稀な症例である。トリカブトは種類や部位,さらには成育環境や採取時期など様々な要因により含有するAAの成分量に相違が生じることが知られている。摂取されたトリカブト根部についてAA成分含有量を測定した結果,MCはACの約9倍であり,患者の尿中濃度もMCが最も高値を示していた。したがって,一般的にトリカブト中毒ではAC中毒を連想されるが,本例はMCが中毒の主な原因物質と考えられた。以上より,トリカブトを摂取した症例では野生種,改良品種にかかわらずACのみでなく,MCの検出と測定が重要であると考えられる。
  • 宮本 恭兵, 平松 真燈佳, 足川 財啓, 篠崎 真紀, 島 幸宏, 中 敏夫, 篠崎 正博
    2009 年 20 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    壊死性軟部組織感染症は死亡率の高い疾患であり,早期の切開・排膿・デブリドマンと適切な抗菌薬投与が予後を改善させる。様々な起炎菌が報告されているが,これまでにCitrobacter koseriによる壊死性軟部組織感染症の報告はない。今回,我々はC. koseriによる壊死性軟部組織感染症の症例を経験したので報告する。症例は77歳の女性。既往歴として糖尿病,関節リウマチがあり,ステロイドを服用中であった。左前腕の疼痛,発赤,腫脹を主訴に来院し壊死性軟部組織感染症と診断された。直ちに切開・排膿・デブリドマンとpiperacillin/tazobactam,clindamycinによる治療を開始した。後に創部の培養からはC. koseriが検出された。生理食塩水による創部洗浄と抗菌薬投与により創部の状態は改善し,入院25日目には創部培養は陰性となった。その後も経過は良好であり,入院33日目,植皮目的にて整形外科に転科となった。C. koseriは弱毒性の腸内細菌であり,免疫抑制患者に感染を起こすことが多い。また,様々な抗菌薬に耐性を示すことが多く,抗菌薬は抗緑膿菌作用を持つペニシリンが第一選択薬とされる。本症例のように糖尿病,ステロイド投与といった免疫抑制患者における壊死性軟部組織感染症では,起炎菌としてCitrobacter属などのグラム陰性桿菌も考慮した抗菌薬選択が重要である。
編集後記
feedback
Top