日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
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22 巻, 12 号
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原著論文
  • 毛利 智好, 松田 宏樹, 久保 範明, 稲留 直樹, 中森 靖, 藤見 聡, 吉岡 敏治
    2011 年 22 巻 12 号 p. 871-877
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2012/02/07
    ジャーナル フリー
    【背景】重症患者に対する栄養管理として入院早期からの経腸栄養が推奨される。また,重症患者における高血糖は予後や合併症に影響を及ぼすことはよく知られている。当科では血糖変動を起こしにくい低糖質高脂肪栄養剤が重症患者の血糖管理に有効であると考え,2010年4月から導入した。【目的】人工呼吸管理を要した重症患者に対する低糖質高脂肪栄養剤による経腸栄養開始後の血糖管理の有用性を,標準濃厚流動食と比較・検討し明らかにすること。【方法と対象】2009年4月から2010年3月までに当科に入院し標準濃厚流動食を投与した重症患者74例(S群)と,2010年4月から2011年3月までに入院し低糖質高脂肪栄養剤を投与した重症患者73例(G群)の経腸栄養開始後の最高血糖値およびインスリン導入率を比較した。経腸栄養は入院7日以内に時間あたり20mLの少量持続投与から開始し,その後速やかに数日で目標カロリーに達するまで増量した。【結果】両群における入院時の年齢・性別・傷病内訳・経腸栄養開始時血糖値に有意差はなかった。最高血糖値は,S群163±32.0mg/dlに対してG群151±28.4mg/dlと有意差を認めた(p=0.022)。また,経腸栄養開始後のインスリン導入率はS群74例中9例(12.2%)に対し,G群73例中1例(1.37%)と有意差を認めた(p=0.018)。両群における28日生存率,ICU入院日数および経腸栄養開始後の消化器症状合併率には有意差を認めなかった。【結語】低糖質高脂肪栄養剤は標準濃厚流動食に比べ,重症患者の急性期における経腸栄養開始後の血糖管理に優れた栄養剤である。
  • 冨岡 正雄, 上田 泰久, 中山 伸一, 小澤 修一
    2011 年 22 巻 12 号 p. 878-884
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2012/02/07
    ジャーナル フリー
    【背景】外傷による緊急四肢切断術後の早期合併症として最も多いのは創感染であり,その対策には多数の報告がある。我々は手関節,足関節より近位の緊急切断術では創の一次縫合を行っていたが,創感染が複数例生じたため,2008年から原則としてsecond-look surgeryを行う方針に変更した。今回,創感染率の比較により,この治療戦略変更の妥当性の検証を行った。【対象と方法】治療戦略として一次縫合を行い観察していた前期(11肢)とsecond-look surgeryを行うようになった後期(8肢)の創感染率を比較検討した。また切断部位(上肢,下肢)別も検討した。【結果】患者背景として年齢,性別,糖尿病の有無,ISS,MESSに差はなく,出血性ショックのみ後期のほうが多かった。全体の感染率は前期45%,後期0%(p=0.0395),上肢は前期17%,後期0%(p=0.6),下肢は前期80%,後期0%(p=0.0397)で全体の感染率および下肢の感染率に有意差が認められたが,上肢は有意差が認められなかった。また近位関節を超えての切断は前期後期とも1例ずつあり感染はなかった。【考察】切断肢において,重度四肢開放骨折の初期治療戦略に準じてsecond-look surgeryを導入したところ,感染率の有意な低下を認めた。高度で広範囲な軟部組織の挫滅のため,初回手術で挫滅組織が残存していたり,その後壊死が進行する可能性が高い場合,創感染の発生する頻度が高くなるため,原則としてsecond-look surgeryを行うことが望ましいと考える。ただし,上肢の切断と近位関節を超える切断は一次縫合のままでも感染は少なかったことから,second-look surgeryの適応は少ないと思われる。
症例報告
  • 高橋 学, 塩谷 信喜, 松本 尚也, 菅 重典, 石部 頼子, 山田 裕彦, 遠藤 重厚
    2011 年 22 巻 12 号 p. 885-889
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2012/02/07
    ジャーナル フリー
    【背景】外傷による緊急四肢切断術後の早期合併症として最も多いのは創感染であり,その対策には多数の報告がある。我々は手関節,足関節より近位の緊急切断術では創の一次縫合を行っていたが,創感染が複数例生じたため,2008年から原則としてsecond-look surgeryを行う方針に変更した。今回,創感染率の比較により,この治療戦略変更の妥当性の検証を行った。【対象と方法】治療戦略として一次縫合を行い観察していた前期(11肢)とsecond-look surgeryを行うようになった後期(8肢)の創感染率を比較検討した。また切断部位(上肢,下肢)別も検討した。【結果】患者背景として年齢,性別,糖尿病の有無,ISS,MESSに差はなく,出血性ショックのみ後期のほうが多かった。全体の感染率は前期45%,後期0%(p=0.0395),上肢は前期17%,後期0%(p=0.6),下肢は前期80%,後期0%(p=0.0397)で全体の感染率および下肢の感染率に有意差が認められたが,上肢は有意差が認められなかった。また近位関節を超えての切断は前期後期とも1例ずつあり感染はなかった。【考察】切断肢において,重度四肢開放骨折の初期治療戦略に準じてsecond-look surgeryを導入したところ,感染率の有意な低下を認めた。高度で広範囲な軟部組織の挫滅のため,初回手術で挫滅組織が残存していたり,その後壊死が進行する可能性が高い場合,創感染の発生する頻度が高くなるため,原則としてsecond-look surgeryを行うことが望ましいと考える。ただし,上肢の切断と近位関節を超える切断は一次縫合のままでも感染は少なかったことから,second-look surgeryの適応は少ないと思われる。
  • 大塚 恭寛, 米田 宏
    2011 年 22 巻 12 号 p. 890-896
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2012/02/07
    ジャーナル フリー
    症例は5か月前に進行胃癌に対して膵頭十二指腸切除術を施行された74歳の男性で,10日前からの食思不振と全身倦怠感のため当科に入院した。腹部造影CT上,70歳時より肝右葉に認めていた嚢胞が最大径18cmに増大していたが,全身性炎症反応症候群の診断基準を満たさなかったため,3日後に待機的嚢胞ドレナージ術の予定とした。手術予定日前夜,突然の悪寒・戦慄を伴う発熱,意識レベル低下,努力呼吸が出現し,感染性肝嚢胞による重症敗血症・播種性血管内凝固症(disseminated intravascular coagulation: DIC)・急性呼吸不全と診断した。重症度評価では,SOFA score 12,APACHE II score 32,急性期DIC score 8点,予測在院致死率78%であった。直ちに気管挿管下の機械的人工呼吸管理とSurviving Sepsis Campaign guidelinesに準拠したearly goal-directed therapyを開始し,血液培養検体採取後にメロペネムを投与した。発症2時間後にbed sideにて緊急経皮経肝嚢胞穿刺ドレナージ術を施行したところ,膿性内容液4,200mlが吸引された。輸液蘇生,カテコラミン投与,抗凝固療法,シベレスタットナトリウム投与,エンドトキシン吸着療法(PMX-DHP)を含む集中治療を施行したが,発症15時間後に敗血症性ショックのため死亡した。後日,血液と肝嚢胞内容液の両者からKlebsiella oxytocaが検出された。本例を救命し得なかった要因として,初期診断・治療の不適切さが挙げられ,肝嚢胞の増大を感染兆候として的確に認識して重症敗血症への移行を予見し,入院後直ちに抗生剤投与と緊急嚢胞ドレナージ術を施行することにより,救命し得た可能性があるものと考えられた。
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