日本救急医学会雑誌
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22 巻 , 6 号
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原著論文
  • Toru Yoshida, Jun Hattori, Fumie Kashimi, Tomomichi Kan'O, Chie Satoh, ...
    2011 年 22 巻 6 号 p. 245-254
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
    It is important to assess the severity of patients' conditions using various markers upon their arrival to emergency centers. In this study, we assessed the levels of B-type natriuretic peptide (BNP), cardiac troponin I (cTnI), D-dimer, Hb, T-Bil, BUN, and s-Cr for this purpose. Out of 1954 patients who were consecutively transferred to Kitasato University Hospital Emergency Center from June 2007 to June 2008, 1253 patients without cardiopulmonary arrest on arrival were assessed with regard to the relationship between their outcome and blood BNP, cTnI, D-dimer, Hb, T-Bil, BUN, and s-Cr levels on arrival. We divided the patients into two groups according to whether they died in hospital and whether the causes of their disease were intrinsic or extrinsic, and then made comparisons between groups. The blood concentrations of BNP, cTnI, D-dimer, T-Bil, BUN, and s-Cr were significantly high while that of Hb was significantly low in the hospital death group. In multivariate analysis, age, BNP, D-dimer, and T-Bil in the intrinsic group were found to be independent predictors of hospital death; whereas, D-dimer and T-Bil were found to be independent predictors of hospital death in the extrinsic group. In particular, the cardiogenic cases in the intrinsic cause group revealed a sensitivity of 93.3%, a specificity of 83.9%, a positive predictive value of 38.9%, and a negative predictive value of 99.1% with regard to hospital death using variables selected by the stepwise method. In the extrinsic cause group, D-dimer demonstrated a sensitivity of 83.3%, a specificity was 76.0%, a positive predictive value of 22.0%, and a negative predictive value of 98.3% for predicting hospital death with a cut-off value of 10.14μg/ml. The D-dimer level of patients upon their arrival to emergency rooms is an important factor for predicting patient prognosis. Although multiple factors were related to prognosis in the intrinsic cause group, a 10.14μg/ml D-dimer level may be a good indicator of high-risk patients.
  • 鈴木 昌, 堀 進悟
    2011 年 22 巻 6 号 p. 255-263
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
    【目的】日本救急医学会専門医および指導医指定施設(以下指定施設)数は400をこえる。これら指定施設は本邦の救急医療において中心的な役割を担っていると考えられるが,入院を要する救急患者をどの程度受け入れているかは明らかでない。本研究の目的は指定施設や救命救急センターが受け入れた緊急入院件数を調査することである。【対象と方法】厚生労働省が公表した平成20年7月から6か月のDPCデータを用いた。DPC対象および準備病院(計1,559病院)のうち救命救急センターまたは指導医指定施設220病院を救命病院,専門医指定施設200病院を認定病院,その他1,139病院を一般病院と定義した。DPC入院件数のうち緊急入院件数と予定入院件数,および救急車搬送後に入院した(以下救急車入院)件数を病院群別に調査した。緊急入院の多い診断群(MDC)分類である神経系,呼吸器,循環器系,消化器系,および外傷・中毒の緊急入院件数も同様に調査した。【結果】入院件数の合計は420万件,緊急入院件数の合計は190万件,そして救急車入院件数の合計は50万件であった。このうち,救命病院はそれぞれの入院件数の30.3%,27.7%,32.1%を占め,認定病院は18.0%,17.5%,19.2%を占めた。MDC分類別の緊急入院件数では,救命病院は神経系疾患の29.4%,呼吸器系疾患の24.7%,循環器系疾患の31.3%,消化器系疾患の25.2%,そして外傷・中毒の28.9%を占めた。認定病院では18.0%,17.3%,18.2%,17.4%,17.1%であった。各病院において,緊急入院件数と救急車入院件数が占める割合(中央値)は救命病院が45%と13%,認定病院が49%と13%,そして一般病院が54%と10%であり,救命病院と認定病院では予定入院件数が一般病院より多かった。【結語】DPC対象となった緊急入院や救急車入院件数のほぼ半数は救命病院と認定病院が受け入れていた。
症例報告
  • 細見 早苗, 宮市 功典, 林下 浩士, 池原 照幸
    2011 年 22 巻 6 号 p. 264-270
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
    重症の肺挫傷を伴うフレイルチェストに対し,気道圧開放換気airway pressure release ventilation(APRV)モードでの呼吸管理が有効であった一例を報告する。症例は63歳の男性。歩行中に乗用車と接触し受傷した。多発肋骨骨折・フレイルチェストを伴う大量血胸に対して,緊急開胸止血術を行った。術後,pressure support(PS) モードで人工呼吸管理を施行したが,PaO2/FIO2 ratio(P/F ratio)は45 mmHgと重度の低酸素血症を示した。低酸素血症に対しAPRVモードで呼吸管理をしたところ,モード変更2時間後にはP/F ratio 175mmHgと著明に酸素化能は改善した。第3病日には更に改善し,多発肋骨骨折に対する肋骨固定術の施行が可能となった。その後,合併症なく経過し,第8病日には人工呼吸から離脱可能となった。本症例では外傷性急性呼吸窮迫症候群の状態に至っており,これに対してAPRVモードを用いることで虚脱肺のリクルートメントを行い,酸素化の改善につながったと考えられた。重症の肺挫傷を伴うフレイルチェストの急性期治療として,APRVモードによる人工呼吸管理は有効であると考えられた。
  • 杉山 和宏, 松岡 夏子, 柏浦 正広, 山本 豊, 田邊 孝大, 安田 睦子, 濱邉 祐一
    2011 年 22 巻 6 号 p. 271-276
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
    腎性尿崩症とは腎集合管の抗利尿ホルモンへの感受性低下により多尿を来す疾患である。我々は外傷での入院と緊急手術を契機に腎性尿崩症を指摘された症例を経験したので報告する。症例は27歳の男性。バイクで転倒し救急搬送され,左足関節開放骨折の診断で入院し緊急手術となった。術前から絶食とし,術中,術後と細胞外液の投与を行ったが,来院時から多尿であり,来院後に血清ナトリウム濃度の上昇を認め,来院18時間後にNa 161mEq/lとなった。この時点で多量の希釈尿と高浸透圧血漿から尿崩症を疑い,飲水を開始し輸液を5%ブドウ糖液に変更し高ナトリウム血症は緩徐に補正された。desmopressin(DDAVP)に不応であり,後に水制限試験で腎性尿崩症と診断された。多飲は幼児期からであることが判明し,また母方の親族に同様の症状の者が複数いることがわかり,先天性腎性尿崩症が疑われた。腎性尿崩症では,手術等にあたり通常通り絶食とし細胞外液の投与を行うと高ナトリウム血症,高浸透圧血症が急速に進行し重篤な場合には神経学的後遺症を残しうるため,救急での対応には注意を要する。また,抗利尿ホルモンの投与により尿量がコントロールされず,腎から大量に排泄される自由水を全て輸液で補正しなければならず,周術期の対応には格別の配慮が必要となる。腎性尿崩症は稀な疾患ではあるが,その存在に気づかずに治療を行うと重篤な転帰を招く可能性があり,患者の既往歴が必ずしもわからない状況で診療を余儀なくされる救急医にとって銘記すべき疾患である。
  • 金澤 寛之, 小倉 靖弘, 小川 晃平, 上本 伸二
    2011 年 22 巻 6 号 p. 277-283
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
    熱射病に起因した急性肝不全に対して生体肝移植を施行した症例と人工肝補助療法を施行した症例をそれぞれ経験した。症例1は16歳の男性で運動中に卒倒した。前医入院後,一時的に意識状態が改善したが再び昏睡状態となり第4病日に急性肝不全の診断で人工肝補助療法を開始し同日,生体肝移植を施行した。術後2日目に意識状態の改善を得た。症例2は15歳の男性で運動中に卒倒し,その後熱射病による急性肝不全の診断で人工肝補助療法を開始した。昏睡状態が遷延したが第14病日に意識状態の改善を得た。両者とも神経学的後遺症なく軽快退院することができた。熱射病による急性肝不全は,播種性血管内凝固症候群や熱射病による脳症の合併により肝移植適応を含めた肝不全の評価が困難となる。本病態に対しては人工肝補助療法を行うことで肝性脳症による不可逆的脳障害の回避や肝性昏睡からの覚醒効果に期待し,その間に致死的合併症を制御しながら肝再生あるいは肝移植につなげていく治療戦略が妥当であると考えられる。
  • 武藤 義和, 丹羽 雄大, 長谷川 隆一, 川瀬 正樹, 中島 義仁, 市原 利彦
    2011 年 22 巻 6 号 p. 284-290
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
    フルニエ壊疽は,会陰部を中心とした壊死性筋膜炎の一種であり,医学の進歩した現代においても依然として予後は不良である。我々は,急激に敗血症性ショックに陥った重症のフルニエ壊疽に対し,多くの診療科の迅速な連携による集学的治療を行って救命し得た一例を経験した。症例は79歳の男性。糖尿病と高血圧の既往があった。自宅で倒れているところを家人により発見され当院へ救急搬送された。来院時,発熱および重度の代謝性アシドーシスを伴い,初療中からショック状態が進行した。陰嚢から両側大腿,下腹部~右季肋部にかけて黒色壊死と発赤腫脹が観察され,フルニエ壊疽による敗血症性ショックと診断し,直ちにICUに収容した。入室時のacute physiologic and chronic health evaluation(APACHE)II scoreは33点,Fournier’s gangrene severity index scoreは15点であった。直ちにSurviving Sepsis Campaign guidelines 2008に基づき輸液負荷と抗菌薬治療を行うとともに,外科,泌尿器科,整形外科,救急科で協議し,合同で陰嚢から大腿にかけての広範囲のデブリードメントならびにドレナージ術を施行した。術後も人工呼吸管理,カテコラミンによる循環維持,エンドトキシン吸着療法やステロイドの持続投与を行った。術後,外科系各科により連日の創洗浄やデブリードメントの追加が行われ,感染は徐々にコントロールされ,ショック状態を離脱した。第9病日には人工呼吸器から離脱。第12病日に一般病棟へ転棟し,その後高圧酸素療法併用による感染コントロールと人工肛門,膀胱瘻造設による排泄路変更を施行,第62病日にリハビリテーション目的に近医へ転院となった。本症例の経験より,フルニエ壊疽に対しては,適確な重症度評価から迅速な対応を心がけることと,多くの診療科の協力が不可欠であることを再認識した。
  • 山口 充, 間藤 卓, 大井 秀則, 中田 一之, 井口 浩一, 熊井戸 邦佳, 杉山 聡
    2011 年 22 巻 6 号 p. 291-296
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
    患者は22歳の女性。自殺目的に薬局で購入した殺菌消毒薬を服用した。来院時,意識障害と頻呼吸,SpO2の低下が認められた。胸部X線写真では両側の肺うっ血が認められ,心エコーでは左室駆出率が25%と心機能の低下が認められた。ナファゾリンによる心不全,肺水腫と考え,dobutamine,phentolamine,olprinoneなどを投与した。症状は改善し,第13病日に軽快退院となった。入院当初,原因物質は不明であったが,血中薬物毒物分析などによってナファゾリンであることが判明した。ナファゾリン中毒は交感神経α1とα2作用が混在し,複雑な症状を呈するのが特徴である。本症例においても,重度の肺水腫のほか,意識障害,著明な心機能低下,低血圧が認められたが,徐脈や不整脈は認めなかった。肺水腫に対しては人工呼吸管理,心不全に対してはdobutamineを使用したが,十分な心係数の上昇は認められず治療に苦慮した。薬理学的な機序を考え,α遮断薬を使いつつ,更にPDE III阻害薬を開始したところ著明な心係数の改善が認められた。ナファゾリン中毒としてよく知られた“マキロン”には,現在ナファゾリンは含まれていないが,マキロン類似品のほとんどには未だにナファゾリンが含有されている。外用薬のナファゾリン中毒には十分な注意が必要で,重症の場合には呼吸管理に加えて,その循環動態に応じてα遮断薬などを使用した循環管理が必要と考えられた。
  • 鈴木 裕之, 中野 実, 蓮池 俊和, 仲村 佳彦, 畠山 淳司, 庭前 野菊, 清水 尚
    2011 年 22 巻 6 号 p. 297-302
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性。自宅で呼吸苦を自覚し自ら119番通報をした。救急車内収容時に無脈性電気活動(pulseless electrical activity; PEA)となり,救急隊員による約1分間の心肺蘇生術で心拍再開し当院へ搬送された。当院到着時に再びPEAとなり,アドレナリン1mgを投与し,気管挿管,当院スタッフによる約8分間の心肺蘇生術で心拍は再開した。心エコーで著明な右心負荷所見,胸部造影CTで左右の肺動脈に血栓を認め,肺塞栓と診断した。へパリン3,000単位静注後,肺動脈造影を施行したところ,肺動脈主幹部の血栓は既に溶解しており,造影欠損像を末梢に認めるのみであった。循環動態,呼吸状態ともに安定したため,抗凝固療法のみ行う方針でICUに入室させた。しかし,ICU入室4時間後から徐々に血圧が下がり始め,入室6時間後にはショック状態となった。心エコーで右心負荷所見は改善傾向にあり,肺塞栓による閉塞性ショックは否定的だった。腹部エコーで大量の腹水を認め,腹部造影CTでは血性腹水と肝裂傷を認め,胸骨圧迫による肝損傷から出血性ショックに至ったと診断した。硫酸プロタミンでへパリンを拮抗し,大量輸血で循環を安定させ塞栓術による止血を試みた。しかし,肝動脈と門脈からの血管外漏出は認められず,塞栓術による止血は不可能であった。静脈性出血の自然止血を期待し腹腔内圧をモニターしながら,腹部コンパートメント症候群に注意しつつ経過観察した。第2病日循環動態は安定し,第9病日抗凝固療法を再開した。第10病日人工呼吸器離脱し,第40病日独歩退院した。心肺蘇生術後の患者では,蘇生術に伴う合併症の発生を常に念頭に置きながら,原疾患の治療にあたることが重要である。
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