日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
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23 巻, 11 号
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原著論文
  • Tomohiro Kikkawa, Masahiro Kojika, Gaku Takahashi, Katsutoshi Terui, H ...
    2012 年 23 巻 11 号 p. 757-767
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2013/01/17
    ジャーナル フリー
    Objective: The goals of this retrospectively study were to examine the incidences of intrahepatic and intracardiac gas using postmortem computed tomography (PMCT) in patients with nontraumatic cardiopulmonary arrest treated by cardiopulmonary resuscitation with clinical factors, and to examine the cause of occurrence of intrahepatic and intracardiac gas by cardiopulmonary resuscitation.
    Design: The incidences of intrahepatic and intracardiac gas were investigated related to age, sex, place of intubation, duration of cardiopulmonary resuscitation, total dose of epinephrine, history of treatment with an automatic cardiopulmonary resuscitation device, number of catheters, drip infusion at a tube-indwelled site, return of spontaneous circulation, bystander CPR, infection, central venous catheterization, witness to cardiac arrest, gastric distension, and presence of the other gas (intrahepatic or intracardiac).
    Setting: Emergency department.
    Patients: The subjects were 286 patients aged ≥18 years old with nontraumatic cardiopulmonary arrest in whom cardiopulmonary resuscitation was performed, but death occurred.
    Interventions: PMCT was performed within one hour after death.
    Measurements and Main Results: The incidence of intrahepatic gas was 24.1% (69/286) and that of intracardiac gas was 31.1% (89/286). In univariate analysis, the presence of intrahepatic gas was significantly associated with the absence of a witness to cardiac arrest and the presence of gastric distension and intracardiac gas, and the presence of intracardiac gas was significantly associated with the absence of a witness to cardiac arrest and the presence of gastric distension and intrahepatic gas. In multivariate analysis, the presence of intrahepatic gas was significantly associated with the absence of a witness to cardiac arrest and the presence of gastric distension and intracardiac gas, and the presence of intracardiac gas was significantly associated with the presence of gastric distension and intrahepatic gas.
    Conclusions: Intrahepatic and intracardiac gas observed on PMCT in patients with nontraumatic cardiopulmonary arrest treated with cardiopulmonary resuscitation are related to each other, and gastric distention caused by cardiopulmonary resuscitation may have influenced the production of both gases.
  • 岡原 修司, 内藤 宏道, 萩岡 信吾, 萩谷 英大, 杉山 淳一, 勝田 知也, 森本 直樹
    2012 年 23 巻 11 号 p. 768-774
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2013/01/17
    ジャーナル フリー
    心原性肺水腫や慢性閉塞性肺疾患急性増悪に対するnoninvasive positive pressure ventilation(NPPV)の有用性は明らかであるが,acute lung injury/acute respiratory distress syndrome(ALI/ARDS)に対する有用性はいまだ確立されていない。当院ではALI/ARDSに対してNPPVを症例の重症度に応じて導入しているが,重症例では気管挿管が必要となることが多く,NPPV失敗の予測が重要である。今回,我々はALI/ARDSにNPPVを導入した症例の患者背景と転帰を後方視的に調査し,NPPVの成否に対する予測因子を検討した。2008-2010年で症例数は57例であった。NPPVにて生存に至った症例38例を成功群,挿管もしくは死亡に至った症例19例を失敗群とし,成功率は67%であった。APACHE IIスコアは成功群が12.9±4.3,失敗群で17.7±7.6と失敗群で有意に高かった(p=0.003)。NPPV導入前の呼吸回数は成功群:27.1±6.3回/分,失敗群:35.9±8.6回/分と失敗群で有意に多く(p<0.0001),導入後の呼吸回数も失敗群で有意に多かった。またNPPVの成否についての多変量解析にて呼吸回数はオッズ比:0.82,95%信頼区間:0.72-0.94,APACHE IIスコアはオッズ比:0.82,95%信頼区間:0.67-0.99と成否に影響する可能性を認めた。成功率>60%を目標とすると,呼吸回数:30回/分以上とAPACHE IIスコア:17以上の症例では達成が難しいため,厳重な経過観察と積極的な挿管の検討が必要であると思われた。
症例報告
  • 伊関 憲, 朝長 鮎美, 林田 昌子, 清野 慶子, 篠崎 克洋, 羽田 俊裕, 山崎 健太郎
    2012 年 23 巻 11 号 p. 775-780
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2013/01/17
    ジャーナル フリー
    症例は45歳の男性。頭にごみ袋を被りヘアゴムで頸部を留めて,浴室の洗い場で全裸の状態で座っているところを発見された。意識はなく心肺停止状態であり,心肺蘇生を行うも死亡確認となった。蘇生中,気管チューブよりピンクから赤色の泡沫痰が多量に吸引された。死後の胸部CTでは,両側肺野に著明な肺水腫,肺胞出血の所見があり,気管から両側主気管支内に液体貯留を認めた。現場検証で浴室内からエアダスターが発見された。司法解剖では,左右の肺に高度肺水腫と肺胞出血が認められた。左右ともに濃紫赤色,血液量が多く,水腫高度であった。両側眼瞼結膜に溢血点あり,口唇結膜,上下肢にチアノーゼを認めた。さらに心臓血より1.1-ジフルオロエタン(HFC-152a,以下DFE)が検出された。DFEはフロンガスの一種であり,冷媒や噴射剤などに用いられる。吸入により多幸感や気分の高揚感が得られるため乱用される場合がある。しかし,高濃度のDFEを吸入すると中枢神経系の抑制や催不整脈作用がある。死亡例も散見され,剖検例では両肺で著明な肺水腫と肺胞出血がみられた。今回の症例では,頭からビニール袋を被りDFEの吸引をしていたところ意識を消失し,低酸素,窒息状態となり死亡したものと思われる。本症例のような吸入法での死亡例が国内で散見され,インターネットでのフロンガス吸入に関する情報の規制などが必要である。
  • 北川 順一, 吉田 省造, 中島 靖弘, 白井 邦博, 豊田 泉, 小倉 真治, 村上 啓雄
    2012 年 23 巻 11 号 p. 781-786
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2013/01/17
    ジャーナル フリー
    症例はバングラデシュから帰国した37歳の日本人女性。発熱,下腹部痛を自覚し当院を受診した。骨盤内感染症を疑われ,婦人科で試験開腹術が施行されたが感染症は否定的であった。稽留熱,海外渡航歴,脾腫,好酸球消失などから腸チフスが疑われた。第3病日に血液培養からSalmonella typhiが検出されたため,抗菌薬をdoripenem(DRPM)からceftriaxone(CTRX)に変更した。開腹術後,酸素化は徐々に悪化し,第3病日にARDS(acute respiratory distress syndrome)を合併した。そのためNPPV(non-invasive positive pressure ventilation)を施行したところ,呼吸状態は改善した。腸チフスは,現在本邦では輸入例を中心に年間60例程度しか発生していない比較的稀な感染症で,敗血症を呈する割には肺傷害を来しにくいとされる。ARDS合併は非常に稀であるが,致命的になりうる。本例では,手術侵襲がARDS合併の一因と考えられた。NPPVによる呼吸管理を含めた集学的な管理により救命が可能であった。
  • 渡邊 圭祐, 片山 哲治, 奥山 英策, 菊田 浩一, 中村 夏樹, 佐藤 大亮, 矢埜 正実
    2012 年 23 巻 11 号 p. 787-792
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2013/01/17
    ジャーナル フリー
    症例は45歳の男性。自殺企図による一酸化炭素(CO)中毒で当院入院となった。経過良好であったが,第6病日に突然無脈性心室頻拍を生じ,心電図上II,III,aVF,V1-V6で著明なST上昇を認めた。カテーテル室入室時にはST上昇は改善し,冠動脈造影検査では有意狭窄はなく,エルゴメトリンによる冠攣縮誘発試験も陰性であった。硝酸イソソルビドの持続静注を行っていたが第7病日にも同様のイベントが生じ,ST上昇が持続している間に再度冠動脈造影検査を行った。左右冠動脈に狭窄や血栓性病変はないものの右冠動脈に著明な造影遅延所見を認め,冠微小血管攣縮と診断した。血中CPKは2,660 IU/lと上昇し心筋梗塞と診断した。ニコランジルの持続静注を加えたところその後は心室頻拍,ST上昇とも再出現せず経過した。CO中毒に伴う心筋梗塞の報告は散見される。原因としてCO-Hb結合に伴う組織低酸素や,ヘモグロビンとは関係しないミトコンドリアレベルでの直接的な障害がいわれているが,冠動脈攣縮の関与を推察した報告もある。冠動脈攣縮は主として心表面を走る太い冠動脈に生じるが,心筋内の微小冠動脈にも生じることが知られており,これを冠微小血管攣縮という。本症例ではCO中毒によって血管内皮障害が生じ,そこに後日何らかの自律神経機能異常による刺激が加わって冠微小血管攣縮が生じたのではないかと推察された。STが上昇している急性期に冠動脈造影検査を行い,冠微小血管攣縮が診断できた報告は本症例が初めてと思われる。CO中毒に際しては,致死的不整脈を伴う心筋虚血を合併することがあり,その病態として冠微小血管攣縮が存在することも念頭に置いて治療にあたる必要がある。
  • 廣瀬 智也, 大西 光雄, 小倉 裕司, 鍬方 安行, 嶋津 岳士, 神山 雅史, 福澤 正洋
    2012 年 23 巻 11 号 p. 793-798
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2013/01/17
    ジャーナル フリー
    IIIb型膵損傷は発生頻度が低く,とくに小児症例は少ない。また,手術適応や手術術式に関する標準的治療方針は確立されていない。今回我々は膵切除術を施行せずに腹腔ドレナージ術のみで治癒した小児IIIb型膵損傷を経験したので報告する。症例:5歳の男児。自転車で走行中に転倒し,腹部を打撲した。腹痛と嘔吐があり,近医を受診したところ,経過観察との判断により帰宅した。その後,発熱と腹痛が増強したため,受傷2日後に再度近医を受診した。腹部造影CT検査で膵尾部断裂所見があり,後腹膜腔に液体貯留を認めたため,膵損傷に対する治療目的で当センターへ紹介された。画像所見よりIIIb型膵損傷と診断し,腹膜刺激症状を認め,血液検査上も炎症所見が高度であったため,膵尾部切除術の適応と判断し緊急手術を実施した。術中所見では,少量の腹水と後腹膜・膵臓に発赤を伴う軽度の炎症性浮腫を認めた。また,後腹膜腔より網嚢内に浸出液の漏出を認めたが,腹腔内の炎症や癒着はほとんどなく,周囲の鹸化も認めなかった。後腹膜腔に限局する炎症が主体と判断し,膵切除術は施行せず,腹腔内洗浄・ドレナージ術のみを施行した。術後6日目のドレナージ排液中のアミラーゼ値は178,300 U/lと高値であったが,炎症所見および腹部所見は経日的に改善した。23日目には腹部CT検査で仮性膵嚢胞形成を認めたが,55日目の腹部CT検査では自然に縮小した。また,35日目に施行したMRCPにて主膵管途絶像を認め,IIIb型損傷が確認された。術後58日目に自宅退院となった。結語:小児IIIb型膵損傷は,膵切除を施行せずに治癒したとする報告が散見され,手術適応・術式の選択にさらなる検討が必要と考えられる。
  • 明石 暁子, 阿部 裕之, 黒木 識敬, 田邉 孝大, 杉山 和宏, 山川 潤, 濱邉 祐一
    2012 年 23 巻 11 号 p. 799-805
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2013/01/17
    ジャーナル フリー
    症例は,神経科入院歴のある61歳の女性。かかりつけ医から処方されていた徐放性塩化カリウム錠(スローケー®,600mg錠で,1錠につき塩化カリウム8.0mEq含有)約90錠を自殺目的で過量服薬した。救急隊搬送中に心肺停止状態となった。服薬後約90分で病院に到着したが,来院時も心肺停止状態であった。来院時の心電図は,高カリウム血症が原因のventricular tachycardia(VT)であった。Advanced cardiovascular life support(ACLS)に反応がないため,percutaneous cardiopulmonary support(PCPS)を装着することによって循環の維持が可能となり意識も回復した。高カリウム血症(K 11.6mEq/l)の是正のためにhemodialysis(HD)を行いつつ,腹部単純X線に写った大量の徐放性塩化カリウム錠の錠剤を上部消化管内視鏡で除去した。翌日にはPCPSより離脱し,経過中左側胸水や肺炎を合併しながらも全身状態は改善して第26病日,救命救急センターから一般病棟へ転棟した。入院時の上部消化管内視鏡の所見で,著しいびらんと出血を認めた。第68病日の上部消化管内視鏡では,胃弓隆部の狭小化と胃体部の著しい狭窄を認めた。この徐放性塩化カリウム錠が原因の瘢痕狭窄に対して,第81病日に胃分節切除術を施行した。全身状態も良好となった第136病日精神病院へ転院した。塩化カリウム製剤の過量服薬症例では,正常な腎機能を有する場合でも短時間のうちに致死的な高カリウム血症を生じる危険性がある。また急性期の高カリウム血症に対する治療が終了した後も胃の瘢痕狭窄に対して注意深いフォローアップを要する。
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