日本救急医学会雑誌
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24 巻 , 6 号
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原著論文
  • 宮道 亮輔, 石川 鎮清, 尾身 茂
    2013 年 24 巻 6 号 p. 321-328
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    【目的】震災派遣医師のストレスマネジメントにおけるSignificant Event Analysis(SEA)の有効性を検討する。【対象と方法】自治医科大学同窓会東日本大震災支援プロジェクトにより被災地(東北地方)に派遣された医師67名である。SEA施行群(SEA群)と非施行群(対照群)に無作為に割り付け,SEA群には震災派遣から帰還4週間後に質問紙にてSEA調査を行った。【主要なアウトカム評価】改訂出来事インパクト尺度(IES-R),K6質問票を用いて,帰還4週間後(SEA調査前)と8週間後の改善度を調査した。【結果】IES-Rの改善度は,SEA群: 1.27±5.08[平均±標準偏差],対照群: 2.43±4.05であり,p=0.30と有意な差を認めなかった。K6質問票の改善度は,SEA群: 1.83±2.68,対照群: 0.76±3.01であり,p=0.13と有意な差を認めなかった。【結語】ボランティアで被災地支援に行った医師にSEAを行うことは,ストレスの軽減につながらない。
  • 中村 俊紀, 篠原 真史, 六車 崇, 青木 一憲
    2013 年 24 巻 6 号 p. 329-337
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    【目的】小児重症急性脳症における頭蓋内圧(intra cranial pressure: ICP)と脳灌流圧(cerebral perfusion pressure: CPP)の推移と神経学的予後との関連を調査する。【研究方法】後方視的観察研究。【対象】2007年1月から2010年12月までに当院小児集中治療室にてICPモニタリングを行った小児重症急性脳症のうち,基礎疾患のない症例を対象とした。【方法】診療録から後方視的に患者背景,急性脳症の発症からICPセンサ挿入までの時間,モニタリング期間,ICPの最大値とCPPの最小値を調査した。神経学的転帰をpediatric cerebral performance category(PCPC)を用いて転帰良好群と転帰不良群に分け,最大ICPとICP ≥20mmHgであった総時間および最小CPPとCPP ≤40mmHgであった総時間を比較した。数値は中央値(最小-最大)で示した。【結果】15例にICPモニタリングが施行され,診断は二相性脳症9例,急性壊死性脳症1例,その他5例であった。最大ICP 37 (19-59) mmHg,最小CPP 38 (20-48) mmHgであった。ICP ≥20mmHgの症例が14例あった。ICPモニタリングは6 (4-16)日間行われ,ICU入室日数は19 (8-35)日間であった。退室時 PCPCは2: 5例,3: 2例,4: 8例であった。転帰良好群に対し転帰不良群は,最大ICPが高く(40 (16-59) vs. 28 (18-31) mmHg,p<0.05),ICP ≥20mmHgであった総時間も長かった(395 (33-3,600) vs. 16 (0-188)分,p<0.05)。最小CPPとCPP ≤40mmHgであった総時間は両群間で有意差がなかった。【結語】急性脳症では多くの症例でICP ≥20mmHgとなる。神経学的転帰が悪い症例では,良好群より頭蓋内圧が亢進し,その持続時間も長い。
症例報告
  • 高橋 哲也, 伊藤 敏孝, 遠藤 英穂, 福島 紘子, 藤澤 美智子, 武居 哲洋, 八木 啓一
    2013 年 24 巻 6 号 p. 338-344
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は生来健康な56歳の女性。主訴は上腹部痛であった。来院4日前より腹部膨満感および上腹部痛が出現した。来院2日前に上腹部痛が増悪したため前医に救急車で搬送され,入院の上,経過観察されていたが,貧血の進行と腹部CTで後腹膜血腫を認めたため精査加療目的に当院へ転送された。当院来院時のバイタルサインは意識清明,呼吸数20/分,血圧127/71mmHg,脈拍数82/分・整。腹部は平坦・軟で臍上部に強い圧痛を認めたが反跳痛はなかった。血液検査ではHb 8.4g/dlと貧血を認め,腹部dynamic CTでは膵頭部下方に8mm大の内部が均一に造影される境界明瞭な腫瘤影とその周囲の後腹膜腔に広範な血腫を認めた。上腹部痛および後腹膜血腫は腹部内臓動脈瘤破裂が原因と考えられたため緊急血管造影を行った。腹腔動脈造影では起始部に狭窄を認めた。上腸間膜動脈造影では前上膵十二指腸動脈と前下膵十二指腸動脈が膵頭部でアーケードを形成している部分に紡錘状から棍棒状に拡張した動脈瘤を認めた。前上膵十二指腸動脈および前下膵十二指腸動脈から下膵十二指腸動脈にかけてマイクロコイルで塞栓した。第3病日より食事を開始したが第7病日に嘔吐がみられた。腹部造影CT検査を施行したところ拡張した十二指腸球部と増大した後腹膜血腫を認め,上部消化管造影検査では十二指腸は下降脚から水平脚にかけて狭窄していた。後腹膜血腫による圧迫で十二指腸狭窄を来したと考え,経鼻胃管を挿入し血腫の自然消褪を待つこととした。しかし,血腫縮小後も通過障害の改善に乏しかったため第36病日に胃空腸吻合術を施行した。以後経過は良好で,第46病日に退院した。膵十二指腸動脈瘤破裂症例では経カテーテル的動脈塞栓術が奏功しても続発する十二指腸狭窄に注意を払う必要がある。
  • 大嶋 清宏, 萩原 周一, 青木 誠, 村田 将人, 金子 稔, 中村 卓郎, 古川 和美
    2013 年 24 巻 6 号 p. 345-350
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は84歳の女性。認知症のため施設入所中である。某月某日朝,意識障害と40℃の発熱のため近医へ救急搬送された。動脈血ガス分析で低酸素血症と代謝性アルカローシスを認め,気管挿管され当院へ搬送された。来院後の血液検査で高カルシウム血症(13.8mg/dl)あり,胸部CT検査では左下葉に気管支透亮像を伴う浸潤影を認めた。頭部CT検査では明らかな異常所見はなかった。高カルシウム血症により意識障害を呈し誤嚥性肺炎を併発したと考え,入院の上,全身管理を開始した。呼吸に関しては人工呼吸器管理に加え,誤嚥性肺炎に対する抗菌化学療法を行った。高カルシウム血症の原因について精査したが,副甲状腺機能亢進症および悪性腫瘍は否定的であった。長期にわたり乳酸カルシウムおよび酸化マグネシウムが投与されており,これらによりミルクアルカリ症候群に陥り,その結果として高カルシウム血症性クリーゼを来したと考えられた。これら薬剤の投与を中止するとともにカルシトニンおよびビスホスホネートの投与を開始した。その後,徐々に血清カルシウム値は正常化し,それに伴い意識状態も改善した。第5病日には抜管し人工呼吸器から離脱でき,第6病日に紹介元の病院へ転院となった。ミルクアルカリ症候群は,牛乳や炭酸カルシウムのようなカルシウムと弱アルカリ性の吸収性制酸薬の過剰な経口摂取により発症するとされ,以前は消化性潰瘍治療時に認められていたが,その治療の変遷とともに激減した。しかし近年,骨粗鬆症の管理および予防に炭酸カルシウムが頻用されるようになり,再び報告されるようになってきている。とくに高齢者では,上記のような目的で長期間にカルシウム製剤を処方されている例が多く,かつ慢性の便秘に対して弱アルカリであるマグネシウム含有緩下剤を処方されている例も多い。高齢者の高カルシウム血症の際には本症候群の可能性も検討すべきと考える。
  • 入福浜 由奈, 二瓶 俊一, 長田 圭司, 伊佐 泰樹, 原山 信也, 相原 啓二, 蒲地 正幸
    2013 年 24 巻 6 号 p. 351-356
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    急性大動脈解離を有する急性脳梗塞症例にt-PAを使用し,死亡に至った事例が報告されている。救急医は救急外来において,急性大動脈解離と急性脳梗塞を的確に鑑別する必要がある。両疾患を鑑別するため,痛みについての問診や胸部レントゲン,超音波検査などの検査を行うことが重要である。しかし,問診やこれらの検査のみで急性大動脈解離と急性脳梗塞を鑑別することは困難である。我々は脳卒中様症状を呈した急性大動脈解離の4症例を経験した。これらの症例から脳卒中様症状を呈する急性大動脈解離の診断方法について考察した。これら4症例はいずれもfibrin/fibrinogen degradation products(FDP)値が高値を示しており,急性脳梗塞と急性大動脈解離の鑑別診断に救急外来でのFDP採血の有用性が示唆された。
  • 田中 宏典, 正久 康彦, 石井 祥裕, 王 克鏞
    2013 年 24 巻 6 号 p. 357-362
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性。主訴は背部痛と発熱である。前医にて腹部CT施行し急性膵炎の診断にて当院へ紹介となった。急性膵炎の診断で紹介されたが,当院で施行した各種検査にて細菌性肺炎による敗血症と急性腎前性腎不全と診断した。集中治療室で抗菌薬投与,大量輸液にて加療を開始した。入院後比較的安定して経過していたが入院翌日から病状は急激に悪化した。集学的治療を継続したが入院3日目には多臓器不全,播種性血管内凝固症候群の状態となり死亡退院となった。施行した病理解剖,入院時の血液および胸水,喀痰培養全てからStreptococcus pyogenesを検出し原発性腹膜炎を伴う劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症と診断した。A群溶血性連鎖球菌による原発性腹膜炎は極めて稀な疾患である。自験例を除く7症例に死亡例はなく,原因不明の腹膜炎もしくは消化管穿孔の術前診断にて腹腔内洗浄・ドレナージ術が施行され,術後の集学的治療を経て救命し得ている。自験例が救命可能であったかの検討を踏まえ報告する。
  • 橋本 亘, 谷口 真一郎, 柴田 隆一郎
    2013 年 24 巻 6 号 p. 363-366
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    急性大動脈解離(acute aortic dissection: AAD)に類似した症状を呈し,診断に苦慮した急性特発性脊髄硬膜外血腫(acute spontaneous spinal epidural hematoma: ASSEH)の1例を経験した。症例は49歳の男性。ゴルフプレー中に背部痛が出現し救急搬送された。搬入時は苦悶表情で心窩部痛と背部痛を認め,血圧は192/100mmHgと高値であった。搬入後,一過性に両下肢脱力を認めたが改善した。発症様式や症状から急性大動脈解離などの循環器疾患を疑い精査を進めた。しかし諸検査を行ったが確定診断は得られなかった。入院後も背部痛は続いており,一過性に両下肢脱力を認めていたことより磁気共鳴画像検査(magnetic resonance imaging: MRI)を行ったところ頸椎~胸椎レベルに脊髄硬膜外血腫を認め,ASSEHと診断した。神経症状が安定しており保存的加療を行い後遺症なく自宅退院となった。ASSEHの発生は稀であるが,急性期の診断や治療の遅れが後遺症を残す可能性がある疾患であり,救急鑑別疾患のひとつとして認識することが重要である。
  • 櫻井 聖大, 山田 周, 北田 真己, 橋本 聡, 原田 正公, 木村 文彦, 高橋 毅
    2013 年 24 巻 6 号 p. 367-373
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    熱中症では様々な合併症を来すが,とくに肝機能障害や腎機能障害は頻度が高い。重症例になると意識障害を来し,横紋筋融解やショック,disseminated intravascular coagulation(DIC),多臓器不全などを来す。DICを来す機序は著明な血管内脱水による末梢循環不全や,高熱による直接的な組織障害・血管内皮障害,それらに引き起こされる高サイトカイン血症,腸管粘膜の透過性亢進からのbacterial translocation,また肝障害に伴う凝固因子の産生低下に伴う出血傾向などが原因と言われているが,選択される抗凝固療法については統一された治療法は確立されていない。今回,熱中症に伴うDICに対し,遺伝子組み換えトロンボモデュリン製剤(rTM)で抗凝固療法を行い,良好な成績を得た2症例を経験した。2例とも高齢女性で,非労作性熱射病であった。いずれも高度の意識障害を伴い,肝・腎機能障害を認め,日本救急医学会の急性期DIC診断基準では5点と7点であった。抗凝固療法として,前者ではrTM単剤で,後者ではメシル酸ガベキサートとの併用を行った。いずれも経過良好で,出血性合併症もなく第5病日と第14病日にDICを離脱でき,後遺症なく第57病日と第27病日に軽快転院となった。rTMは熱中症に伴うDICに対して有効な薬剤であると思われた。
研究速報
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