日本救急医学会雑誌
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24 巻 , 7 号
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原著論文
  • 高橋 哲也, 伊藤 敏孝, 武居 哲洋, 八木 啓一
    2013 年 24 巻 7 号 p. 391-398
    発行日: 2013/07/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    【背景】低血糖は遷延性意識障害や死亡につながる可能性があり,その検出および原因検索は救急医療において重要である。【目的】救急外来における低血糖症例の特徴を検討すること。【対象と方法】2005年4月1日から2009年8月31日の4年5か月間に当院へ救急車で搬送され来院時の血糖値60mg/dl以下の症例のうち,来院時心肺停止と6歳以下を除いた症例を対象とし,その年齢,性別,血糖値,低血糖の原因,症状,転帰を検討した。【結果】救急車で搬送された37,044例中487例(1.3%)が対象で,年齢は67.8±16.9(平均±標準偏差)歳,男性297例,女性190例,血糖値は平均35.8±14.7mg/dlであった。症状はJapan coma scale (JCS)3桁が160例と最多で,121例は無症状であった。低血糖の原因はインスリン148例,経口血糖降下薬138例,慢性アルコール中毒46例,sepsis 40例,肝硬変・肝不全34例,悪性腫瘍32例,栄養不良29例,ダンピング症候群8例,内分泌疾患4例,その他8例で糖尿病治療薬以外の頻度は41.3%であった。症状と血糖値の関係では,意識レベルの低い群では血糖値が有意に低かった(p<0.001)。また低血糖性片麻痺は9例あり,低血糖症例の1.8%に認められた。低血糖の原因が糖尿病治療薬以外の非糖尿病薬群と糖尿病薬群との比較では,症状の割合で無症状とJCS3桁は非糖尿病薬群が多かった(p<0.05)。低血糖性脳症による不可逆的神経学的後遺症は5例で,全例75歳以上で低血糖の原因は3例でsulfonylurea(SU)剤であった。入院死亡は48例で全て非糖尿病薬群にみられ,この群の23.9%であった。【結論】救急車で搬送された低血糖症例の41.3%は非糖尿病治療薬性で,著しい意識障害例が多く,転帰としての入院死亡の全例を占めた。低血糖性脳症による不可逆的神経学的後遺症は高齢者のSU剤使用例に多かった。低血糖性片麻痺の頻度は低血糖症例の1.8%で,脳卒中との鑑別に注意を要する。
  • 加藤 航平, 武山 佳洋, 木下 園子, 岡本 博之, 前川 邦彦, 森 和久, 成松 英智
    2013 年 24 巻 7 号 p. 399-405
    発行日: 2013/07/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    【背景】一般に骨折のスクリーニングにおいて血液検査はあまり有用ではなく,その意義は主に合併する疾患や既往のための検査である。我々は骨折と血清D-dimer値(DD)の関連について調査し,その診断的意義について検討した。【仮説】DDの上昇は,多発外傷を伴わない鈍的外傷患者において骨折と関連がある。【方法】2008年1月から2010年2月までの約2年間に市立函館病院ERに搬入された症例を後ろ向きに検討した。鈍的外傷患者で,DDを測定された症例を対象とした。このうち専門医による最終診断が得られない症例,受傷から24時間以上が経過している症例,多発外傷,頭蓋内損傷,大動脈疾患,最近の手術歴がある,膠原病・麻痺・血栓症の既往,悪性腫瘍のある症例を除外した。最終診断名から骨折群と非骨折群に分類し,年齢,性別,ER(emergency room)における初期診断,専門医による最終診断,搬入時のDDとの関連について後ろ向きに検討し,ROC解析からそのcut-off値を計算した。【結果】対象となった341例中210例(61.6%)が骨折群,131例(38.4%)が非骨折群に分類された。骨折群は非骨折群に比較して有意に高齢であった(61±23 vs. 49±23 歳, p<0.01)。DD(μg/ml)は骨折群で有意に高かった(DD, median(IQR): 8.4(3.0-24.9)vs. 1.4(0-3.1),p<0.01, ISS, mean±SD: 7.4±3.9 vs. 2.8±2.6, p<0.01)。ROC(receiver operating characteristic)解析からROC曲線下面積は0.81(95%CI 0.77-0.86)で最適なcut-off値はDD ≥4.5μg/mlで,感度69.0%,特異度84.7%,陽性的中率90.6%であった。【結論】骨折群では非骨折群と比較してDDは有意に上昇しており,診断の参考指標として有用と考えられた。今後さらなる検討が必要である。
症例報告
  • 橘高 弘忠, 西本 昌義, 福田 真樹子, 西原 功, 小畑 仁司, 大石 泰男, 秋元 寛
    2013 年 24 巻 7 号 p. 406-412
    発行日: 2013/07/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性。3年前にKlebsiella pneumoniaeを起因菌とした肝膿瘍の既往があった。発熱と全身倦怠感を主訴に他院に救急搬送され,精査の結果,肝膿瘍による敗血症,播種性血管内凝固症候群と診断され当センターへ転院となった。腹部超音波検査,腹部造影CT検査所見では,肝外側区域に隔壁を伴う膿瘍形成を認め,抗菌薬(BIPM)の投与を開始した。第2病日に呼吸状態が悪化したため,気管挿管し人工呼吸器管理を開始するとともに超音波ガイド下経皮経肝的膿瘍ドレナージ術を行った。ドレーン造影を行うと,蜂巣状の膿瘍とそれに連続して胆管が造影された。穿刺液細菌培養の結果,Klebsiella pneumoniaeが検出された。発熱が続いたため,第10病日に腹部CTを撮影したところ,肝膿瘍の増大,右腸腰筋膿瘍およびL3/L4の化膿性脊椎炎の合併を認めた。また第11病日より項部硬直が出現した。髄膜炎を疑い,髄液採取を試みたものの採取できなかったため,頭部MRIを行ったが異常所見はなかった。肝膿瘍に対してドレナージ治療の限界と判断し,第12病日に肝外側区域切除術を施行したが,発熱・意識障害は遷延した。第18病日に髄液採取に成功し,細菌培養検査を施行したところ,多剤耐性のEnterococcus faeciumが検出された。Linezolidの追加投与を開始したところ,解熱とともに意識レベルは改善し,第30病日のCTでは腸腰筋膿瘍と脊椎炎の消失を認めた。意識レベルの改善とともに視力障害の訴えがあったため,眼科へコンサルトしたところ細菌性眼内炎と診断され転院となった。本症例は肝膿瘍から転移性病変を生じ,さらに菌交代を伴ったためEnterococcus faeciumが起因菌となったものと考えた。
  • 佐藤 康次, 金森 尚美, 鷹取 治, 大谷 啓輔, 織田 裕之, 久保田 幸次, 安間 圭一
    2013 年 24 巻 7 号 p. 413-419
    発行日: 2013/07/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性。職場で倒れているところを発見され救急要請となった。救急隊が現場到着時,Japan coma scale(JCS)100であったが,その後JCS300となり心停止に陥ったため,直ちに蘇生処置が施行され当院へ搬送となった。当院来院時,自己心拍は再開していたが,救急隊によるモニター心電図にて完全房室ブロックからの心静止が確認された。冠動脈造影検査では器質的病変は認めず,心エコー検査やその他の全身検索にて原因となる異常所見は認められなかった。幸い心停止時間は短く,搬送後の意識レベルはGlasgow coma scale(GCS)E3V3M5まで回復し,一時的にペースメーカーを留置し経過観察入院とした。その後,致死性不整脈の再燃なく経過した。意識レベルの回復後に聴取した病歴より,発症当日の朝から胸部不快感を自覚していたことが判明した。冠攣縮性狭心症を疑い,第3病日に冠攣縮誘発試験を施行したところ右冠動脈近位部での完全閉塞が誘発され,123I-BMIPP心筋シンチグラフィにて下壁の集積低下を認めたため,冠攣縮にて誘発された完全房室ブロックからの心停止と診断した。薬物療法として,すでに服用していたアムロジピンをベニジピンへ変更し,硝酸薬とニコランジルも追加投与した。また恒久的ペースメーカーの留置を行い,第12病日に独歩退院した。冠攣縮性狭心症の予後は通常良好とされるが,稀に心室細動などの致死性不整脈を合併することもある。今回はその中でも比較的稀な完全房室ブロックからの心停止症例であった。心原性心停止が疑われた患者の蘇生後,その原因検索として器質的心・冠動脈疾患が認められなかった場合,冠攣縮性狭心症を疑い評価することが重要であるが,その評価方法や時期については一定の見解はなく,今後の検討が必要である。また本症例では完全房室ブロックからの心停止再発は許容されないことからペースメーカー植込みを行った。
  • 大下 宗亮, 馬越 健介, 大坪 里織, 菊池 聡, 西山 隆, 相引 眞幸, 岡田 昌浩
    2013 年 24 巻 7 号 p. 420-424
    発行日: 2013/07/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    頸部壊死性筋膜炎のため開放創内に気管切開孔を必要とした症例に対し,創全体を陰圧閉鎖することで良好な経過が得られた。症例は63歳の男性。受診4日前より嚥下痛を自覚し,増悪したため前医を受診した。右頸部膿瘍の治療のため当院へ転院搬送となった。来院時,努力様呼吸,ショックを呈しており,気管挿管の後,緊急手術を実施した。第6病日よりVacuum Assisted Closure®(V.A.C.®)ATS治療システム(KCI社,米国)を用いた局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy: NPWT)を開始した。NPWTを用いるにあたり,気管切開孔と気管切開チューブにわずかな間隙があり,良好な陰圧が形成されないかと危惧されたが,気管切開チューブ周囲を密閉する形でグラニューフォームを敷き詰め,気管切開チューブのネックフランジとともにフィルムで覆うことで陰圧形成が可能となった。本症例は創部と気管切開孔が交通しており,両者間の汚染も危惧されたが,NPWTを用いることで浸出液が創部に貯留することなく,感染の拡大を予防することができた。効果的に創部ドレナージがなされ,第56病日に右大胸筋皮弁を用いて頸部を再建し,皮膚欠損部に対しては分層網状植皮術を行った。本症例で用いたNPWTの工夫は,気管切開を必要とする頸部壊死性筋膜炎の開放創に対するNPWTの適応を拡大するにあたり有意義である。
  • 三谷 知之, 間藤 卓, 松枝 秀世, 大井 秀則, 山口 充, 中田 一之, 輿水 健治
    2013 年 24 巻 7 号 p. 425-430
    発行日: 2013/07/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    患者は22歳の女性。既往に躁うつ病があり,自殺目的に近医からの処方薬を過量服用した(炭酸リチウム,バルプロ酸など)。入院時,意識レベルがJCS II-30と低下している以外は異常なく胃洗浄と活性炭の投与を行った。その後血圧低下と多尿,高アンモニア血症を認めた。多尿は炭酸リチウムによる尿崩症と考えた。バルプロ酸血中濃度は190.2μg/dl,リチウムの血中濃度が1.11mEq/lであることから,持続的血液濾過透析を開始した。さらにlactulose,levocarnitine chloride懸濁液も併用した。24時間で持続的血液濾過透析は中止し,その後の悪化は認められず,第6病日に軽快退院となった。炭酸リチウムの過量服用では致死的な不整脈を起こして死に至ることがある。本症例は,炭酸リチウムの長期服用に加えて過量服用した。さらにバルプロ酸の過量服用は脳浮腫などを来し,加えて高アンモニア血症を併発して致命的になることがある。本症例の血中濃度は高値であった。炭酸リチウムは蛋白結合率が低く,バルプロ酸も過量服用においては蛋白結合率が低下する。そのため持続的血液濾過透析を施行し良好な経過を得た。本症例のバルプロ酸は徐放製剤であり,体内への吸収や血中濃度,蛋白結合率がどのように推移するのかを予想するのは困難であった。結局,経時的に血中濃度を測定し,治療方針を決定した。血中濃度の推移は,通常のバルプロ酸製剤と大きな違いはなかった。重症の経過を辿る可能性が高い複数の薬剤による中毒は,中毒症状の複雑化に加え,治療法の優先度や選択に苦慮する。複雑な薬物中毒に対応するためには経時的かつ迅速な毒物・薬物分析と血中濃度測定の体制が不可欠であると思われる。
  • 萩谷 英大, 小古山 学, 赤堀 洋一郎, 河原 義文, 内藤 宏道, 萩岡 信吾, 森本 直樹
    2013 年 24 巻 7 号 p. 431-436
    発行日: 2013/07/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    患者は慢性関節リウマチのため少量のプレドニゾロンとサラゾスルファピリジンを長期内服中の79歳の女性である。右大腿骨骨折に対する骨接合術のため入院中であったが,術後13日目に突然の腹痛が出現した。腹部全体に腹膜刺激症状を認め,腹部CTにて腹腔内に遊離ガスと液体貯留を認めたため消化管穿孔に伴う汎発性腹膜炎が疑われた。しかし同時に内部にガス産生を伴う腫大した子宮を認めたため経膣的ドレナージを施行すると大量の排膿があり,子宮留膿腫の穿孔に伴う汎発性腹膜炎の診断にて開腹手術となった。子宮底に穿孔部位を認め,子宮全摘術および両側付属器切除術を施行し,術後エンドトキシン吸着療法を含めた集学的治療により軽快した。子宮留膿腫は高齢女性にみられる予後良好の慢性疾患である。しかし稀に腹腔内に穿孔し汎発性腹膜炎の原因となり,致死的な疾患となり得ることが報告されている。腹腔内の遊離ガスと液体貯留を呈することが多いため,消化管穿孔の診断のもと開腹手術となり術中に診断されることが多く,術前診断率が低いことが指摘されている。本症例はステロイドと免疫抑制薬を長期併用する慢性関節リウマチ患者に発症した穿孔例であるが,急性腹症として発症する前に明らかな下腹部痛,異常帯下などは認めなかった。腹部CTにて子宮留膿腫の穿孔を疑ったことが,迅速な婦人科紹介,経膣的ドレナージ,適切な術式選択につながり救命できたものと考えられた。一般的に腹腔内の遊離ガスと液体貯留を伴う急性腹症の原因は消化管穿孔と考えられるが,高齢女性においては稀に子宮留膿腫の穿孔があることを救急医は認識しておくべきである。
  • 平野 洋平, 林 伸洋, 角 由佳, 井上 貴昭, 松田 繁, 岡本 健, 田中 裕
    2013 年 24 巻 7 号 p. 437-442
    発行日: 2013/07/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    非閉塞性腸管虚血症(non-opcclusive mesenteric ischemia: NOMI)は早期診断が難しく,致死率の高い疾患である。敗血症や外傷,急性膵炎などの循環不全を来す疾患に合併することがよく知られているが,我々は偶発性低体温症に伴う循環不全にNOMIを合併した症例を経験したので報告する。症例は74歳の男性で,意識障害を主訴に搬送された。来院時,直腸温22.7℃,収縮期血圧72mmHgと重度の低体温症と循環不全を認めており,加温輸液および体外式加温装置による復温を開始した。来院4時間後には体温は36℃台まで復温され,循環動態も安定した。しかし,その後再度徐々に循環動態は悪化し,大量輸液,カテコラミンに反応しない著明な乳酸値の上昇を認め,ショック状態が遷延した。Disseminated intravascular coagulation(DIC)の合併も認められ,乾燥濃縮ヒトアンチトロンビンⅢ製剤および遺伝子組み換えトロンボモジュリンアルファ製剤投与を開始した。徐々に腹部膨満が増強し,エコー上腹水の貯留も認めたため,来院48時間後に腹腔穿刺を施行したところ血性腹水が確認された。緊急腹部造影CT検査施行し,急性腸管虚血症(acute mesenteric ischemia: AMI)の所見を認め,緊急開腹術を実施した。開腹するとTreitz靱帯より20cm位からS状結腸に至るまで,全層性の腸管壊死所見を認め,全小腸結腸切除術を施行した。しかしながら術後循環不全を離脱できず,第4病日に死亡した。病理所見上,腸管の全層性の虚血壊死を認めたが,血管内に血栓像は指摘されず,画像所見,術中所見と合わせてNOMIと診断した。偶発性低体温症では,復温までの循環不全の遷延化に起因すると考えられるNOMIなどのAMIを合併する可能性をがあり,発症予防とともに早期の発見・治療に努めるべきである。
  • 大塚 恭寛, 五十嵐 信之, 小松 悌介, 高橋 誠
    2013 年 24 巻 7 号 p. 443-447
    発行日: 2013/07/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は67歳時にS状結腸癌・肝転移に対してS状結腸切除術・左肝切除術を施行され,多発性肺転移再発に対して埋込型中心静脈カテーテル挿入留置下にがん化学療法を継続中であった75歳の女性である。就寝中に突然出現した咳嗽と呼吸困難を主訴に当院外科を救急受診した。意識は清明であったが頻脈,呼吸数増加,SpO2低下,顔面浮腫,四肢末梢冷感を認め,胸部単純X線上の心陰影拡大と超音波検査上の多量の心嚢液貯留を認めた。心タンポナーデの診断下に緊急心嚢穿刺ドレナージ術を施行したところ,血性心嚢液800mlが吸引され,速やかにバイタルサインの改善と自覚症状の軽快が得られた。心嚢液の細胞診にて異型円柱上皮細胞の集塊を認め(class V),本例の病態は大腸癌心嚢転移による癌性心タンポナーデ(carcinomatous cardiac tamponade: CCT)と診断した。第3病日に心嚢ドレーンを抜去し,第17病日に独歩退院したが,9か月後に肺転移増悪のため永眠された。我々が文献的に検索し得た範囲では,生前診断された大腸癌心転移の本邦報告例は8例で,うちCCT併発例は4例である。化学療法の進歩により進行大腸癌患者の長期生存が期待し得る現代においては,CCTは今後増加することが予想される重要なoncologic emergencyのひとつであり,積極的な緊急心嚢穿刺ドレナージによる突然死の回避が,患者のさらなる生存期間延長とquality of life向上に大いに寄与することを全ての救急医が認識しておくことが重要である。
  • 市原 利彦, 川瀬 正樹, 長谷川 隆一, 中島 義仁, 丹羽 雄大, 佐々木 通雄, 西村 正士
    2013 年 24 巻 7 号 p. 448-452
    発行日: 2013/07/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    ナイフによる穿通性外傷の中で内胸動脈損傷は鋭的損傷の多い欧米では少なくないが,国内の報告は少ない。今回受傷機転が刺創の21歳の男性が独歩で来院し,救急外来(emergency room: ER)でショックとなり,primary surveyのみでCT等の検査を施行することなく手術に踏み切った。肺損傷を伴った内胸動脈損傷(完全断裂)による左側の大量血胸であり,胸骨正中切開のアプローチにて緊急手術を行い,救命できた症例を経験した。内胸動脈損傷によるショックに対する治療法は種々なものがあり,手術治療,血管内治療(塞栓術),保存的など施設により対応は異なる。本症例に対し,二次救急医療施設における外傷対応の一貫として,JATECの概念の導入により適切な初期治療を行い,preventable trauma deathを回避できたことからその意義は大きいと考えられる。
  • 宇根 一暢, 山賀 聡之, 中川 五男, 藤崎 成至, 江藤 高陽, 谷川 攻一
    2013 年 24 巻 7 号 p. 453-457
    発行日: 2013/07/15
    公開日: 2013/10/16
    ジャーナル フリー
    Wegener肉芽腫症に対してステロイド長期投与を受けていた患者の転落による多発外傷例を経験した。症例は49歳の男性。来院時,頻呼吸,ショック状態であった。来院後呼吸状態はさらに悪化し,疼痛も強くショックに伴って不穏状態となったため救急外来で気管挿管,胸腔ドレナージを施行した。その後,脾損傷に対し緊急脾動脈塞栓術を行った。多発肋骨骨折に対しては鎮静・鎮痛の上,人工呼吸下で保存的に加療したが1週間経過後も高い呼気終末陽圧を要する状態が続いた。第7病日から区域麻酔を併用したが人工呼吸器からの離脱が困難であり,第15病日に観血的肋骨固定術を施行した。術後は経過良好で第60病日に退院となった。Flail chestの患者において,前側方の骨折などで内固定により固定が得られにくい場合や肺炎などの合併症を生じやすい高齢者や,ステロイド長期内服など易感染性患者では早期から外固定を考慮すべきである。
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