日本救急医学会雑誌
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25 巻 , 3 号
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原著論文
  • 原田 正公, 上之原 広司, 杉田 京一, 菊野 隆明, 小井土 雄一, 木村 昭夫, 高橋 立夫, 若井 聡智, 川崎 貞男, 宮加谷 靖 ...
    2014 年 25 巻 3 号 p. 81-92
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2014/07/16
    ジャーナル フリー
    【目的】プロカルシトニン(PCT)は全身性感染症,とくに細菌感染症で上昇するといわれているが,一方で外傷などでも受傷後早期に上昇する例が報告されている。そこで,外傷患者における受傷後早期PCTを調査し,外傷部位や外傷の重症度,在院転帰との関連を調査した。【対象と方法】2010年4月1日から2012年2月28日までに国立病院機構の11箇所の救命救急センターを受診し,入院を要した外傷患者を対象とした。重症度,来院時(Day0)および来院後12 ~24時間(Day1)のバイタルサイン,CRPとPCTを記録し,外傷部位や外傷重症度とPCTとの関連について単変量解析を用いて検討し,また在院転帰とPCTの関係について多変量解析を用いて検討した。【結果】218名の患者が登録された。Day0とDay1のCRPとPCTを比較するとほとんどの部位の外傷においてDay1で有意な上昇を認めた。ISS(injury severity score)別にみてみるとDay1のPCTはISSが高値になるほど高くなった。Day1のPCTは頭部,四肢,多発外傷で有意にISS>20群で高くなった。在院転帰に関して調査項目の比較検討を行ったところ,GCSおよびDay1のPCTで有意差を認めた。頭部外傷患者に絞ってロジスティック回帰分析を行ったところ,GCSおよびDay1のPCTが説明変数として選択され,両者を組み合わせたROC曲線下面積は0.98309であった。【結語】外傷患者のDay1のPCTは,頭部,四肢,多発外傷では外傷の重症度が高いほど高値となる。また頭部外傷患者では,GCSとDay1のPCTを組み合わせることで,予後予測に有用である可能性がある。
  • 泉田 博, 佐々木 淳一, 田島 康介, 鈴木 昌, 藤島 清太郎, 小川 郁, 堀 進悟
    2014 年 25 巻 3 号 p. 93-101
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2014/07/16
    ジャーナル フリー
    鼻出血患者が救急受診する頻度は高いにもかかわらず,救急外来を受診する鼻出血患者を対象とした疫学検討は少ない。当院では救急搬入された鼻出血患者に救急医が初期研修医とともに対応し,必要に応じて耳鼻咽喉科医へ診療依頼を行っている。そこで,当院へ救急搬送された非外傷性鼻出血患者の患者背景,耳鼻咽喉科医に診療依頼を要した患者の因子,経過中にショックに至る患者の危険因子を検討し,救急医が初期診療を担う当院における診療方針の安全性と耳鼻咽喉科医の労務軽減に寄与しうる可能性を検討することを本研究の目的とする。対象は2012年1月から10月までに当院へ救急搬入された非外傷性鼻出血症例であり,診療録から後方視的に情報を抽出して検討した。その結果,対象は208例集まった。男性,高齢者が多く,覚知時刻は時間外(17時-8時)が多かった。搬送所要時間は3分から55分,中央値は20分であった。止血困難による耳鼻咽喉科への診療依頼は31例(14.9%)で,抗凝固薬または抗血小板薬の内服が多い傾向が認められた(32.3% vs. 16.6%,p=0.054)。9例(4.3%)がショック,11例(5.3%)が入院を要し,197例は帰宅した。帰宅後24時間以内に非外傷性鼻出血のために再度救急搬送された症例は3例であった。以上の内容より,救急車搬入された鼻出血患者を救急医が診療することの安全性は保たれており,耳鼻咽喉科医の労務軽減に寄与しうると考えられた。また出血性ショックを来す患者が含まれていることを考慮すれば,救急医の関与により患者利益が生まれうると考えられた。
症例報告
  • 藤本 枝里, 廣田 誠二, 太田 宗幸, 村上 翼, 島津 友一, 山崎 浩史, 西山 謹吾
    2014 年 25 巻 3 号 p. 102-106
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2014/07/16
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の男性。肺癌手術前,CTガイド下マーキングを施行中,突然呼吸苦を訴え,心肺停止に至った。直ちに心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation: CPR)を開始し,撮影途中のCTで左房・左室・上行大動脈内に空気の貯留を認めたため,空気塞栓症による心肺停止と診断した。難治性の心室細動(ventricular fibrillation: VF)に移行し,CT室でCPRを継続しながら経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support: PCPS)を挿入し,集中治療室へ入室した。 集中治療室では脳空気塞栓症を予防するためTrendelenburg体位とし,除細動で心拍再開した。発症4時間後の経食道心エコー(transesophageal echocardiography: TEE)で上行大動脈・左房内に空気が貯留していたため,緊急開胸下空気除去術を施行した。術中TEEで空気の消失を確認し,PCPSを抜去した。以後全身状態は軽快し,後遺症なく退院した。今回我々は,空気塞栓症により心肺停止状態を来した症例に対して,直ちにPCPSを挿入し,Trendelenburg体位で管理し,また緊急開胸術によって外科的に空気を除去し,後遺症なく救命することができた。
  • 岡本 雅雄, 大塚 尚, 西本 昌義, 天野 信行, 守 克則, 羽山 祥生
    2014 年 25 巻 3 号 p. 107-112
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2014/07/16
    ジャーナル フリー
    鈍的外力による四肢主幹動脈の内膜損傷は,放置すると遅発性の血栓閉塞や仮性動脈瘤の形成などが危惧される。しかし内膜損傷の自然経過は十分に解明されていないため,非閉塞性動脈の内膜損傷に対する治療方針には議論の余地がある。今回,鈍的外傷による下肢動脈の非閉塞性内膜損傷2例に対し保存療法を行い,良好な経過を示したので報告する。症例1:21歳の男性。injury severity score 29,墜落外傷例であった。近医で出血性ショックに対する集中治療を受けた際,偶然に左総大腿動脈内膜損傷を発見され,動脈再建目的で転送された。搬入時の末梢循環は問題なく,造影CTではintimal flapを伴った広範囲の壁不整像を認めたが開存していた。ショック離脱直後の状態であり緊急性もないことから保存療法を行った。受傷後5.3年,造影CTでは動脈は狭窄なく開存しているが,壁不整像が僅かに残存している。症例2:41歳の男性。喧嘩の仲裁に入った際,右膝を過伸展し受傷した。近医へ搬送され阻血徴候を認め,造影CTでは膝窩動脈の造影効果の欠如を認めたため血行再建目的で転送された。しかし搬入時には末梢循環は保たれ,再検査では内膜損傷を認めたが開存しており保存療法を行った。受傷後2.2年,造影CTでは動脈は開存しているが,僅かな壁不整像を残している。自験例2例は,下肢主幹動脈の阻血症状を呈さない非閉塞性内膜損傷であり,遅発性血栓閉塞に備え血行再建を即座に行える体制下で保存療法を行った。最終観察時に僅かな動脈壁不整像を残し,今後も経過観察を要するが,臨床的には良好な経過と考えられる。近年,画像機器が発達し四肢主幹動脈損傷の診断が簡便かつ詳細に行えるようになったが,これに伴い非閉塞性内膜損傷に遭遇する機会も増えると推察される。今後は,詳細な画像分析と長期成績に基づいた非閉塞性内膜損傷に対する治療指針の確立が望まれる。
  • 立澤 直子, 田島 紘己, 佐川 俊世, 田中 篤, 古井 滋, 滝川 一, 坂本 哲也
    2014 年 25 巻 3 号 p. 113-118
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2014/07/16
    ジャーナル フリー
    小腸アニサキス症は強い腹痛および炎症所見を呈し,診断が困難で急性腹症として開腹される例が多く報告されている。今回我々は,①発症前数日以内の鮮魚の生食,②腹部CT上腸閉塞など特徴的所見,によりER受診当日に小腸アニサキスと診断し,保存的加療にて改善した6例を経験した。[症例1]54歳の男性。生秋刀魚を摂食した3日後,上腹部痛が出現した。[症例2]63歳の男性。生鯖を摂食した2日後に臍周囲痛・嘔吐が出現した。[症例3]57歳の男性。ほぼ毎日刺身を摂食していたが,受診前夜よりの腹部全体の間欠痛が出現した。[症例4]36歳の男性。生鰹を摂食した翌日に心窩部痛・嘔吐が出現した。[症例5]63歳の女性。生サンマを摂食した翌日,下腹部痛・嘔気が出現した。[症例6]55歳の男性。しめ鯖を摂食した2日後,心窩部から臍周囲にかけての腹痛出現が出現した。全例において来院時の腹部造影CT上,造影効果を伴う限局性・全周性の小腸壁の肥厚と内腔の狭小化,および口側の小腸の拡張と液面形成,腹水貯留を認めた。小腸アニサキスと診断し,保存的加療にて改善した。後日来院時と発症4-5週とのペア血清で特異的抗アニサキス抗体価の上昇を確認した。発症前数日以内に鮮魚を生食後,強い腹痛を主訴に来院し,特徴的な腹部造影CT所見を呈した患者は,小腸アニサキス症を常に念頭に置き,早期診断,治療をする必要があると考えられた。
  • 田中 真生, 米満 尚史, 川副 友, 宮本 恭平, 木田 真紀, 岩崎 安博, 加藤 正哉
    2014 年 25 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2014/07/16
    ジャーナル フリー
    外傷性咽頭後間隙血腫によって上気道狭窄を呈した2例を経験した。症例1:55歳の男性。高血圧の既往があった。バイクと軽自動車の接触事故にて当院に救急搬送された。頭頸部打撲と左大腿骨頸部骨折を認めたが,意識や呼吸循環動態は安定していた。受傷2時間後に意識清明な状態で上気道狭窄音が出現したため,気管挿管を実施しようとしたが困難であったため,輪状甲状靭帯切開にて緊急気道確保を行った。頸部CTで咽頭後間隙血腫を認めた。保存的加療により血腫は消退したため,第13病日に抜管し,第23病日に近医へ転院した。症例2:56歳の男性。冠動脈バイパス手術後で抗血小板薬常用中であった。バイク運転走行中の単独転倒事故で当院に救急搬送された。救急隊接触時は意識清明で呼吸・循環は安定していたが,受傷40分後に意識レベル低下,上気道狭窄音が出現した。経口気管挿管を行い,意識レベルは速やかに回復した。頭部CTで外傷性頭蓋内血腫を認めず,頸部CTにて咽頭後間隙血腫を認めた。保存的加療により血腫消退後,第6病日に抜管し,第26病日に近医へ転院となった。頭頸部外傷では咽頭後間隙血腫によって致命的な上気道閉塞を来す可能性があり,初診時画像検索も含む注意深い経過観察が必要であると考えられた。
  • 安田 英人, 須崎 紳一郎, 勝見 敦, 原田 尚重, 原 俊輔, 蕪木 友則, 片岡 惇
    2014 年 25 巻 3 号 p. 125-131
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2014/07/16
    ジャーナル フリー
    近年,外傷における出血性ショックに対して外科的治療と並んで血管内治療(intravascular radiology: IVR)が選択されることが増加している。N-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)は,低価格で塞栓時間の短縮,塞栓の確実性が得られ,患者の凝固能力に依存しない塞栓物質であるという特徴から,凝固異常を来した外傷性出血に対して有用な手段と考えられる。今回我々は,凝固異常が疑われた外傷性出血性ショックに対してNBCAによる経カテーテル動脈塞栓術が有効であった症例を経験したので報告する。症例1は交通外傷による骨盤骨折により出血性ショックを来した70歳台の男性の症例であった。凝固検査の結果や抗血小板薬の内服により出血傾向に至る可能性があったことから,NBCAによる右内腸骨動脈塞栓を施行した。速やかな止血が得られ状態は安定した。症例2は右側腹部打撲による腎損傷により出血性ショックを来した80歳台女性の症例であった。凝固異常がみられ,後腹膜のタンポナーデ効果に対する懸念があったことから,NBCAによる右腎動脈塞栓を施行した。その後速やかにバイタルサインの安定が得られた。両症例とも凝固異常がみられた症例に対してNBCAが功を奏した症例であった。外傷性出血に対する経カテーテル動脈塞栓術(transarterial embolization: TAE)の際には患者の凝固能力に応じた塞栓物質の選択が重要となり,本症例のように出血傾向が懸念される場合にはNBCAを利用したTAEが有用と考えられる。
学会通信
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