日本救急医学会雑誌
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4 巻 , 1 号
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  • 北河 徳彦, 手戸 一郎, 丸藤 哲, 牧瀬 博, 大川 洋平, 富樫 敦子, 稲葉 恵子
    1993 年 4 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1993/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症に対するpolymerase chain reaction (PCR)法を用いた迅速診断法の意義を,他の診断法と比較して検討した。対象:免疫能を低下させる原因があり,臨床的にHCMV感染症が疑われた患者20名を対象とした。免疫能低下を疑った原因は多臓器不全,膠原病等によるステロイド連用,肝不全,多発外傷等であった。臨床的にHCMV感染を疑った疾患としては間質性肺炎が半数以上を占め,他は脳炎・腸炎・膵炎等であった。方法:各症例にPCR法を用いたHCMV-DNA診断法,ウイルス分離培養および血中抗HCMV抗体価測定(ペア血清)を行った。採取可能な組織については組織学的検索を行った。ウイルス分離培養または組織検索の結果をgold standardとし,PCR法と比較した。結果:PCR法はsensitivity 100%, specificity 82.4%, positive predictive value 50%, negative predictive value 100%であった。false positive 3例はいずれも抗HCMV-IgG抗体価が高値であり,潜伏感染中に起こり得る尿中へのウイルス排泄を検出した可能性あるいは検査段階での汚染が考えられた。抗HCMV-IgG抗体価は全例で高値を示したが,ペア血清で有意な上昇を示したものはなかった。またIgM抗体は全例陰性であり,血清診断が有用であった症例はなかった。結果報告までに要した平均日数は,ウイルス分離培養の18日,ペア血清抗体価の20日に対し,PCR法が8日と非侵襲的検査のなかでは最も短かった。結論:PCR法を用いた尿・血中HCMV-DNAの検出法は,specificityの問題が残るものの迅速・非侵襲であり早期スクリーニングとして有用であると思われた。
  • 木村 昭夫
    1993 年 4 巻 1 号 p. 7-16
    発行日: 1993/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    1991年7月から9月において,日本医科大学救命救急センターおよび他病棟入院患者より分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus,以下MRSAと略す)100株についてコアグラーゼ型,毒素産生性および20種の抗菌剤に対する感受性を調査した。また同期間に当センターに入院し,MRSAが分離された47症例を対象とし,臨床情報を解析した。MRSAの96%はコアグラーゼII型でtoxic shock syndrome toxin 1(以下TSST-1と略す)を産生し,そのうち33%がエンテロトキシンCを,46%がエンテロトキシンCとエンテロトキシンAを産生する菌株であった。しかしこれら毒素の産生能と感染症の成立には一定の関係は認められず,また観察期間中toxic shock syndromeそれ自体の発症は認められなかった。当センターに8日以上入院した患者の46%にMRSAが検出され,さらにその40%がMRSAによる感染症に罹患した。MRSAの検出頻度ならびにその感染症の成立は,入院期間が長いほど高率であった。喀痰,咽頭,外傷や熱傷創部からMRSAが分離されても,感染症に発展する症例は半数以下であるのに対し,血液,糞便,ドレーン等から検出された症例では,そのほとんどがMRSA感染症に陥っていた。in vitroではvancomycin(以下VCMと略す)に対し耐性を示すMRSAはなく,臨床的にはMRSA感染症に対し58%の有効率であった。このように高い有効率を示す抗菌剤は現在のところVCMのみである。しかし深部感染の重症例では無効例が存在した。
  • 盛 虹明, 増田 卓, 北原 孝雄, 相馬 一亥, 大和田 隆
    1993 年 4 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 1993/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    肺水腫を伴うクモ膜下出血患者の肺水腫液と血清の膠質浸透圧を測定し,神経原性肺水腫の成因としての肺血管透過性亢進の関与を検討した。発症24時間以内のクモ膜下出血のうち,呼吸管理を必要とした肺水腫8例を対象とし,肺水腫を有しない33症例を非肺水腫群として比較した。肺水腫群はWFNS分類でgrade Vが75%, Fisher分類では全例group 3と4であった。来院時に血圧,脈拍,意識状態,胸部レントゲン写真,動脈血液ガス分析,血漿カテコールアミン濃度を測定した。さらに肺水腫例では,肺水腫液と血清の膠質浸透圧を測定した。来院時肺水腫群では非肺水腫群に比べ収縮期血圧の低下と心拍数の増加を認めた。肺水腫群の心胸郭比は平均48±4%と心拡大は認められなかった。動脈血液ガス所見では,PaO2が非肺水腫群78±16mmHgであるのに対し肺水腫群47±12mmHgと,肺水腫群で著しい低酸素血症を呈していた。血漿ノルアドレナリン,アドレナリン濃度は,肺水腫群でそれぞれ1,800±1,300pg/ml, 1,400±630pg/ml,非肺水腫群740±690pg/ml, 340±400pg/mlであり,非肺水腫群に比べ肺水腫群で有意に高値を示した。肺水腫液の膠質浸透圧は12.4から25.0,平均16.7±4.1mmHgと肺水腫群の全例で高値を示し,血清に対する肺水腫液の膠質浸透圧比は平均0.94と血管透過性亢進を示唆する結果であった。以上により,クモ膜下出血に伴う肺水腫の発生機序のひとつとして肺血管の透過性亢進が示された。
  • 本間 友基, 葛山 雅哉, 山本 喜一郎, 最所 純平, 小林 良三, 坂本 照夫, 加来 信雄
    1993 年 4 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 1993/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    重症救急患者の長時間搬送においては,しばしば搬送中の病態悪化が問題になる。そこでこの問題に対するドクターカーの有用性と限界を検討する目的で,病院間搬送例において,従来の救急車とドクターカー搬送とを,vital signを中心に比較検討した。対象はドクターカー搬送を行ったドクターカー群149例(DC群)と,救急車で搬送後処置室で気管内挿管を必要としたコントロール群159例(C群)である。両群間には年齢,性,搬送時間,疾患分類や,搬入前の心停止,前医搬出時の意識障害(JCS≧II-10)や血圧低下例(SBP≦100mmHg)の頻度などにつき有意な差はなかった。搬送中意識レベルがJCS分類で1桁以上の改善はC群2例(1.6%),DC群25例(16.8%)で,1桁以上の悪化はC群29例(23.4%),DC群8例(5.4%)で両群間に有意差を認めた(p<0.01)。前医搬出時血圧低下例では,C群で搬送中収縮期血圧の低下傾向(83.4→73.3mmHg)を示したのに対し,DC群では有意に血圧が上昇した(81.7→96.8mmHg, p<0.01)。一方,出血性脳血管障害例ではC群は搬送前後で有意な血圧変化はなかったが,DC群では平均14%の収縮期血圧の低下をみた。搬入前の心停止例においては搬送中血圧測定不能となったり,心停止に陥った例がC群38/56例(67.9%), DC群9/40例(22.5%)で,心拍再開後の入院率もC群39.3%に対し,DC群70%といずれも両群間に有意な差を認めた(p<0.01)。またDC群の搬入前の心停止例における入院率は,搬出時血圧≧70mmHg,搬送時間30分以内では19/19例(100%)であったが,この条件を満たさなかった場合は,12/21例(57.1%)にとどまった(p<0.01)。生存退院例(救命率)も,収縮期血圧≧70mmHg,搬送時間20分以内では7/10例(70%)であったが,この条件を満たさなかった場合は4/30例(13.3%)にとどまった(p<0.01)。このようにドクターカーは重症例の搬送にきわめて有用かつ安全であったが,搬入前に心停止を起こしたような最重症例の長距離搬送に対しては限界があることも示唆された。
  • 太田 孝一, 岩崎 寛, 並木 昭義
    1993 年 4 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 1993/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    ハチ刺症にて入院加療した32症例を対象として,ハチ刺症の症状,治療法について検討した。ハチ刺症には,局所反応型,アナフィラキシー型,アルサス型の3つのタイプがある。今回検討した症例を,上記の3群すなわち,局所反応群(8例),アナフィラキシー群(18例),アルサス群(6例)に分けた。局所反応群は,ハチ刺部の腫脹と疼痛を特徴とし,局所冷却とステロイド塗布を行った。アナフィラキシー群は,ハチ刺部以外の部位に発赤や皮疹が出現した症例で,点滴とステロイド投与が有効であった。局所反応群,アナフィラキシー群は上記の治療により,24時間以内に完治した。一方アルサス群は,ハチ刺後6時間以上経過しても,ハチ刺部周囲の腫脹が強度のものでも,点滴およびステロイド投与に反応したが,完治には48時間以上必要とした。アルサス型のハチ刺症は,アナフィラキシー型のハチ刺症発症頻度の約1/3と低いものの注意が必要である。ハチ刺症では,アナフィラキシー型のみならずアルサス型も念頭に入れて,12~24時間の経過観察と早期より適切な治療を行うことが重要である。
  • 加藤 博之, 西原 学宣, 大森 啓造, 須永 俊明, 徳永 蔵
    1993 年 4 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 1993/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    A case of drug-induced fulminant hepatitis is reported. A 48-year-old female was transferred to Saga Medical School Hospital because of fever, general fatigue, jaundice and marked liver dysfunction after being treated by her private physician with several drugs containing antibiotics and aspirin DL-lysine. On admission, prothrombin time was prolonged (13%), but the patient's consciousness was clear. Viral markers for hepatitis A, B and C were negative. On the fourth hospital day, consciousness disturbance (hepatic coma: grade IV) developed, and despite intensive treatment including glucagon-insulin therapy and plasma exchange, the patients died of hepatic coma with multiple organ failure on the eleventh hospital day. The liver weighed 710g, and exhibited features of massive necrosis histologically. The lymphocyte stimulating test was positive for cefmetazol and aspirin DL-lysine. A review of literature showed that in Japan about 5% of cases of fulminant hepatitis are due to drugs other than halothane. In most cases reported recently, the lymphocyte stimulating test has been positive for the causative drugs.
  • 丹羽 篤朗, 堀江 康夫, 大野 宣孝, 成田 守, 三井 敬盛, 佐々木 信義, 角岡 秀彦
    1993 年 4 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 1993/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    A 61-year-old man was admitted to a local hospital for consciousness disorder, hypotension and monoplegia of the left leg. Before admission, he had remained asleep on an electric carpet for 17 hours after drinking beer and whiskey. Although his consciousness disorder and hypotension improved, he was transferred to our hospital 6 days after the injury because of oligouria. Examination revealed pain and swelling of the left buttock and left sciatic palsy. Laboratory data showed azotemia and elevated serum CPK, GOT, LDH, and myoglobin levels. CT and MRI demonstrated damage to the left gluteal muscles. A tentative diagnosis of non-traumatic rhabdomyolysis of the left gluteal region complicated by acute renal failure with left sciatic palsy was made. The patient remained oligouric despite treatment with fluid challenge and diuretics. Hemodialysis was started on the second day after admission. Renal function recovered completely after hemodialysis 6 times in 8 days, but necrosis and atrophy of the left gluteal muscles developed, and the left sciatic palsy persisted. This case represents a gluteal compartment syndrome caused by prolonged coma due to alcohol abuse. The compartment syndrome is a serious complication of non-traumatic rhabdomyolysis. Early diagnosis and rapid decompression of the affected area by fasciotomy are important to a good functional prognosis.
  • 竹尾 浩真, 左野 千秋, 神代 龍之介, 政所 節夫, 田中 幸一, 山崎 繁通, 犬塚 貞光
    1993 年 4 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 1993/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    We encountered two cases of PTP foreign bodies of the esophagus; the foreign body was easily removed from one patient, but the other patient had misswallowed two PTPs. One case was diagnosed easily and the foreign body was removed immediately. The other was difficult to diagnose and removal was achieved on the 14th day after misswallowing. The persistence of PTPs in the esophagus for fourteen days was complicated by mediastinitis as a result of perforation of the esophagus. Fortunately the patient responded to conservative therapy and did not become seriously ill. As a result we feel strongly that an accurate history must be taken by repeating questions concerning the patient's anamnesis. Patients should be treated after early diagnosis, and it must be kept in mind that multiple foreign bodies may be present in the esophagus as a result of misswallowing.
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