日本救急医学会雑誌
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5 巻, 1 号
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  • その歴史的意義と将来への展望
    島崎 修次, 三島 史朗
    1994 年 5 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    敗血症および敗血症性ショックの動物実験モデルに関する論文をreviewした。近年,humoral mediator等に関する研究の進歩とともに,敗血症に関連する種々の概念にも大きな変化がある。本稿では敗血症を,感染に対するsystemic inflammatory responseの出現であるとする定義に則り,その病態と敗血症モデルに関して今日的視点より概説した。さらに動物実験モデルを敗血症研究の進歩とともに,(1)軟部組織膿瘍モデル,(2)菌血症モデル,(3)腹膜炎モデル,(4)エンドトキシン血症モデル,(5)グラム陰性菌以外のモデル,(6)humoral mediatorモデルの6つに分類し,それぞれの歴史的意義を検討し,各モデルを評価した。動物モデルは再現性に優れ,かつ敗血症の特徴であるhyperdynamic/hypermetabolic stateを呈する必要があること,従来の感染巣作成モデルのように,focusの起炎菌と血液培養で陽性を示す菌が一致をみる必要はなく,むしろSIRSを誘発する起炎物質のモデルが重要であること,さらに敗血症性ショックは病期により各血行動態が異なるので,実験動物においても各時期の詳細なモニタリングが必要であることなどが提言できる。
  • 極小開頭・血腫洗浄除去療法の再評価
    有賀 徹, 坂本 哲也, 佐々木 勝, 三井 香児, 前川 和彦
    1994 年 5 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    急性硬膜下血腫に合併する脳実質病変には,脳挫傷,びまん性軸索損傷等の一次的脳損傷,二次的な脳浮腫,脳腫脹,またこれらによるhypoxic~ischemic damage等が含まれる。そこで,このような脳実質病変を合併した急性硬膜下血腫120例に対して,極小開頭・血腫洗浄除去療法(68例)と広範囲減圧開頭術(52例)を行い,合併するびまん性脳損傷の病態と治療選択について総括した。症例はすべて15歳以上で,他の頭蓋内血腫合併症および上記の脳実質病変を伴わない急性硬膜下血腫の症例は除外した。2つの治療法のうち,前者は頭蓋内圧制御の目的で積極的にbarbiturate療法を導入するもので,びまん性脳損傷に対する保存的治療がその主旨であり,後者は外科的に減圧処置を行うものである。生存・死亡にみる治療成績は,Japan coma scale(以下JCSと略す)にて3~20および300の症例については両治療法で差はなかったが,JCS 30~200の症例では統計学的に有意の差をもって後者が勝っていた。また,前者の治療成績を諸家の報告とあわせ考察した結果,急性硬膜下血腫に伴う脳実質病変はびまん性脳損傷のうちで最も重症度の高いclinical entityとみなすべき病態であることが示唆された。したがって,JCS 30~200の重症度を示す本病態に対してはまず広範囲減圧開頭術を行い,必要に応じてbarbiturate療法を導入する方法が最良であったが,真に治療法の選択に解決を得るには合併する二次的損傷の諸々の要素への経時的,分析的把握が必要であり,そのような手法は現時点において得られていない。一方,患者の搬入から治療の開始まできわめて限られた時間的余裕しか許されない,また手術室への搬入に時間的制約が避けられない場面がしばしばあり得る。そこで今後においては,可及的速やかにemergency trephinationとして極小開頭・血腫洗浄除去療法を行い,しかる後に頭蓋内圧の推移によってbarbiturate療法,広範囲減圧開頭術を行う治療戦略が有力である。
  • 吉田 裕彦, 藤井 紀男, 岩井 敦志, 島津 岳士, 横田 順一朗, 吉岡 敏治, 杉本 侃
    1994 年 5 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,脳死後長期間にわたり循環を維持した際の造血能を検討することである。対象は外出血のない単独頭部外傷に起因する脳死例で,血液像の変化とともにエリスロポエチン,骨髄像を検討した。なお,脳死後の循環はarginine vasopressin(以下ADHと略す)とcatecholamine(以下CAと略す)で平均21.6±15.0日間維持した。Hb値は脳死前に比べ約4g/dlの低下が認められ,その後も低値のままで推移した。エリスロポエチン値は平均50.2±19.4mU/mlと正常より高値であり,他の原因による貧血患者とほぼ同等の分泌が認められた。網状赤血球数は脳死後第20病日までは(8.8±4.3)×104/mm3とあまり増加しないものの,第21病日以降には(25.5±14.6)×104/mm3と著しく増加した。一方,赤血球より産生反応が早い血小板は,脳死後いったん低下するものの,脳死後第10病日には脳死前値にまで回復し,その後正常以上となった。骨髄像では肺炎像を呈した感染群と非感染群のうち,脳死後1週間以内施行群で骨髄球が有意に増加していた。成熟した分節核球は感染群と非感染群の脳死後1週間以降群で有意な増生を認めた。脳死後の循環維持のために,脳死直後に2,000ml/day以上の体液負荷がなされており,この希釈性因子と赤血球産生反応に時間を要することが脳死後の貧血持続の原因と考えられた。以上より,脳死患者の骨髄機能は正常に保たれていると結論した。
  • 搬送を要請する現地医師からのアンケート調査の検討
    井上 仁, 箕輪 良行, 河野 正樹, 崎原 永作, 立花 一幸, 沼田 克雄
    1994 年 5 巻 1 号 p. 32-41
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,ヘリコプターなどによる救急患者搬送の諸問題に関して,搬送を要請する側の離島に勤務する現地医師の立場からの意見を,アンケート調査により集約し検討したものであり,この種の研究としては本邦ではじめてのものである。対象は,北海道,東京,島根,長崎,鹿児島,沖縄の6地域の遠隔離島などに在任中または勤務経験をもつ医師200人とし,記名による回答を94人(47.0%)から得た。収容病院の特徴としては,十分なコミュニケーションが可能な病院(68.1%),臨床研修を受けた病院(33.0%)が多くみられた。北海道や長崎の離島では,明確に規定された搬送要請基準が回答された。なかでも長崎では,極小未熟児分娩の予想される母体,先天性心疾患で緊急手術を必要とする症例など,適応疾患5項目を具体的にあげていた。2名以下の医師が勤務する東京,鹿児島,沖縄の小離島では,スタッフや施設機能の不十分に起因する要請が多く,診断がつかない場合や,長期入院を要する場合にも搬送要請の基準としている回答が多い傾向があった。要請から搬送までの問題点としては夜間,荒天時搬送機能の確保充実を求める回答が59.6%と最も多く,搬送時間短縮のために基幹病院ヘリポートの設置を求める意見が多くみられた。医師の添乗義務については,全例に必要と,重症のみ必要が同数であった(43.6%)。添乗医の確保ができず,要請を撤回することもある現状が9回答報告された。また,添乗医の安全性確保を現地医師の75.5%が強調していた。現状では搬送中機内での医療行為がほとんど不可能であることから,医師添乗を義務づけるならば医療行為可能な搬送専用ヘリコプターの導入が望まれる。問題点のある搬送76例,搬送を考えたが最終的には搬送しなかった37例が報告された。このなかで気象条件,患者の容態,要請手続きなどに関して具体的に問題点が指摘された。
  • 須崎 紳一郎, 小井土 雄一, 冨岡 譲二, 大泉 旭, 布施 明, 黒川 顕, 山本 保博
    1994 年 5 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    International repatriation(国際患者搬送帰還)を担当実施した自験例19例(邦人帰還12例,外国人送還7例)を報告し,その実態と問題点を検討した。相手地はアジア,南北米,欧州からなど4大陸13ヵ国で,総搬送距離は133,643km,搬送飛行時間は171時間35分に及び,平均搬送距離は7,034km,平均飛行所要時間も9時間2分を要した。最長はLimaからのLos Angels経由15,511kmの搬送で,飛行時間だけでも21時間を超えた。随行医師は当施設から1名ないし2名を派遣した。原疾患は多岐にわたり,19例のうち意識障害例は4例,移送経過中人工呼吸を必要としたものは2例あった。最近の10例は国際アシスタンス会社からの依頼を受けた。航空機は全例民間定期便を利用した。移送経費は平均で300万円程度を要した。搬送途上の医療面では呼吸管理が最も重要であったが,一般の大型定期旅客機を利用する範囲では騒音,離着陸加速度,振動などは患者の循環動態には大きな影響を認めなかった。国際患者搬送帰還は,相手先病院,航空会社,保険会社,空港当局はじめ諸方面の協力と綿密な準備連絡があれば医療上は必ずしも困難ではないが,目下のところ本邦は欧米に比べ,これまでこのような医療需要に対する受け入れや派遣の実績,経験が乏しく,支援体制の整備,組織化が遅れているのが最大の問題点である。
  • 大松 正宏, 池内 尚司, 桂田 菊嗣, 川本 誠一, 阪本 敏久
    1994 年 5 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    A case of traumatic bile duct stenosis treated with an expandable metallic stent (EMS) is reported. A 48-year-old man was admitted with hemorrhagic shock caused by hepatic trauma. Several days after emergency surgery to repair of the hepatic laceration, he showed jaundice and leakage of bile on abdominal CT. Thirty days after admission, PTCD was performed to reduce the intrabiliary tract pressure. Two months later, remarkable stenosis was detected at the common bile duct, although the leakage of bile was decreased. We inserted the EMS (“Strecker” stent) through the PTCD to improve common bile duct stenosis. This improved bile flow, and no side effects were recognized during the one-year observation period. Recently, EMS has been used for obstructive jaundice mostly associated with malignant lesion, and many benefits have been reported compared mith usual biliary endoprosthesis. EMS might also be useful for traumatic biliary tract stenosis without operative invasion.
  • 根来 伸行, 福本 仁志, 加藤 洋二, 西本 孝, 森田 大, 田邊 治之, 冨士原 彰
    1994 年 5 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    A 49-year-old man went into deep shock soon after an intravenous injection of Neurotropin® and was referred to our medical center. He developed cardiac arrest in the ambulance about 7 minutes before arriving at our center. Cardio pulmonary resuscitation was performed for about an hour in the emergency room, but ventricular fibrillation (VF) was sustained. The emergency percutaneous cardio pulmonary support system (PCPS) successfully resuscitated the patient and maintained general circulation. The refractory VF indicated the presense of ischemic heart disease. Coronary angiography (CAG) under PCPS support showed a marked spasm on the proximal site of the coronary arteries. We suggest that the refractory VF was related to the coronary spasm induced by anaphylactic reaction. He was soon weaned from PCPS and discharged without any remaining neurological deficits. Emergency application of PCPS could improve the survival of cardiac arrest.
  • 松浦 克彦, 夕部 富三, 寺迫 潔, 村山 隆起, 瀬尾 憲正, 角田 三郎, 朝本 俊司
    1994 年 5 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    We report a case of acute permeability pulmonary edema after the transfusion of fresh frozen plasma (FFP). The patient was a 68-year-old female who was transferred to our hospital for the treatment of subarachnoid hemorrhage. After clipping the aneurysm in the left middle cerebral artery, the patient developed a bleeding diathesis. Laboratory findings confirmed disseminated intravascular coagulopathy (DIC). After the transfusion of FFP to treat the DIC, the febrile attacks recurred and were reduced by corticosteroids. At the time of the last febrile episode, dyspnea and hypoxia suddenly developed. The chest X-ray revealed alveolar opacities in the right upper and middle lung field without heart enlargement. The ultrasound cardiogram was normal. Based on the clinical course, the acute clinical features were considered to represent non-cardiogenic permeability pulmonary edema. Anti lymphocyte antibody was detected in the patient's serum. The leucoagglutination reaction was confirmed between the patient's serum and the FFP used on the day when the acute pulmonary edema occurred. Therefore, this reaction suggested the allergic permeability pulmonary edema. To prevent pulmonary edema after the transfusion of FFP, the use of a leucocyte reduction filter is considered effective in reducing the leucoagglutination reaction.
  • 相引 眞幸, 白川 洋一, 西山 隆, 吉村 裕, 小林 裕之, 小栗 顕二
    1994 年 5 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    バリウムの注腸造影中の肺塞栓による心停止例の報告は散見されるが,バリウムの瘻孔造影中しかも少量の血管内迷入による心停止の報告はきわめて少ない。症例:68歳,女性。ガス壊疽にて右股関節より切断後,皮膚瘻孔が閉鎖せず,瘻孔造影施行。瘻孔にバリウム約10ml注入後,意識消失,呼吸停止,心停止となった。人工呼吸が施行され,アドレナリンの静脈内投与にて心拍が再開し,自発呼吸および意識も回復した。心停止当日の胸部写真および肺血流スキャンで,バリウムによる肺塞栓は証明できなかった。また,本例に使用したものと同形のバリウム液中のEndospecy法で測定したエンドトキシン濃度は325pg/mlであった。なお,造影検査前より,瘻孔の分泌液から大腸菌等が検出されていた。バリウムの血管内迷入に関しては,瘻孔造影後に撮影されたX線フィルムで下大静脈が描出されており,瘻孔造影後に生じたものと判断された。考察:本例の心停止の発生機序として,バリウムによる肺塞栓は否定的である。バリウム中のエンドトキシンの全量が血管内に迷入したとしても,エンドトキシン量は3μg程度で,致死的反応を起こすには少量と考えられる。造影検査施行前より,瘻孔から大腸菌等の細菌が検出されており,バリウム注入時にその部のエンドトキシンや細菌または糞便等が同時に迷入し,激烈な症状が発現した可能性がある。今回は瘻孔造影にバリウムを使用して心停止に陥ったが,仮に瘻孔が感染しさらに循環系と交通があれば,水溶性造影剤でも瘻孔造影時にエンドトキシンが迷入し,循環虚脱が出現する可能性があり注意が必要と思われる。
  • 1994 年 5 巻 1 号 p. 116
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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