日本救急医学会雑誌
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6 巻, 2 号
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  • 有賀 徹
    1995 年 6 巻 2 号 p. 121-131
    発行日: 1995/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    脳死の概念は,漠然と脳つまり中枢神経の機能を対象として考えられていた時代から,頭蓋内に存在する全脳機能,さらに脳幹(延髄・橋・中脳)に局在させた機能についての不可逆的な廃絶を主張するまでの歴史的変遷があるが,基本的には臨床神経学的手法と時間経過をみる方法によって,機能停止が不可逆的であることを診断する臨床的概念として一貫して位置付けられてきた。脳死の剖検例についての報告を総括すると,脳死に至る原疾患については当然であるが,いわゆるrespirator brainなどの自己融解の範囲,程度についても差が著しく,このことがまた脳死を臨床的概念であるとする考えにとって補助的な証拠ともみなされていた。しかし血管内・外の赤血球の自己融解像である泡沫状変化等を追跡して,脳死当初からの病態を検討する方法論によれば,脳死の過程(自己融解)は脳幹からはじまり,最終的に大脳皮質に至る。したがって,clinical entityとしての脳死はこのような病理学的背景をもつ疾患概念と位置付けられ,これによれば脳幹死がより本質的であると考えられる。また治療の過程で脳室ドレナージなどによりテント上の脳灌流圧が維持されれば,大脳の自己融解に至らない孤立性脳幹死となる。脳死の補助的客観的検査のうち,脳血流に関するものでは有効な血流の消失している全脳死状態になっていれば問題はないが,そうでない場合,順次自己融解の範囲が広がっていく病理学的過程にあるか,または孤立性脳幹死である可能性がある。電気生理学的検査,その他の結果についても同様の観点で検討し理解することが可能である。脳死についての議論のひとつは自然科学(医科学)的視点からであり,他は広い意味での医療または社会科学的な立場からのものである。本論文は,したがって「脳死は人の死か」,「生または死とは何か」などの命題を追求する議論のために必要な医科学的視点からの一部であるとも位置付けられる。
  • 太田 祥一, 行岡 哲男, 宮加谷 靖介, 高坂 康, 阿部 和巳, 松田 博青, 島崎 修次
    1995 年 6 巻 2 号 p. 132-138
    発行日: 1995/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    Computer-assisted instruction(コンピュータ支援授業,以下CAIと略す)は,近年医学教育の分野でも活用されるようになってきた。CAIの利用により基礎教育の段階では,指導者が限られた教育環境でも個々の学習者にあわせた教育が可能となる。われわれは救急蘇生法教育用のCAIコースウェアを開発しその教育効果を検討した。本コースウェアは救急蘇生法の手技だけでなく,その基本となる病態生理の解説にも重点を置いた。対象は東京都健康作り指導者養成コースの受講者30名である。学習前後に100問の正誤選択形式の試験を行い,学習者の知識量の評価を試みた。学習前の正解数は70.0±7.0(平均±標準偏差)で,学習後では82.0±6.5と有意に上昇した(p<0.05)。学習に要した時間は150.8±70.8分であった。学習前の試験の正解数と学習所要時間の間には負の相関関係(y=-2.68x+305, r=0.55, p<0.05)を認め,また,学習前後の正解数の増加と学習所要時間の間には正の相関関係(y=1.9x+96, r=0.43, p<0.05)を認めた。この結果は,本CAIコースウェアが救急蘇生法の基礎知識の習得に有用であるとともに,個人の理解度に合った個別的な学習過程を可能にすることを示すものである。この特性は,多人数の学習者に対し少ない教育者で一定の教育水準を保つには優れた効果を発揮すると考えられる。このようにCAIによる教育は,救急蘇生法教育,とりわけその基礎的段階の教育において有用な方法のひとつになり得ると考えられる。
  • 臨床診断と病理診断の限界について
    瀧 健治, 平原 健司, 富田 伸司, 十時 忠秀, 徳永 蔵, 杉原 甫
    1995 年 6 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 1995/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    当院救急部に搬入された内因性DOAの24症例について原因検索のために病理解剖を行い,これらの臨床推定診断および既往症と剖検診断とを比較検討した。死亡確認がなされた時点における臨床推定診断としては,急性心不全が14例,急性呼吸不全が4例,解離性大動脈瘤破裂が3例,下血が1例,脳内出血が1例および甲状腺機能低下症が1例であった。これらのDOA症例を病理解剖して判明した心停止原因は,急性心筋梗塞9例,解離性大動脈瘤4例,呼吸器疾患による窒息死3例,誤嚥性肺炎2例,およびうっ血性心不全,出血性胃潰瘍,脳梗塞,甲状腺機能亢進症,急性腎不全,成人T細胞性白血病の各1例と,医療の進んだ現在でも剖検で死因が明確ないし訂正された症例は高率の71% (17例)であり,DOA症例に病理解剖の必要性が再認識された。これらのほとんどの症例は病理解剖の原因検索に多大な労力を要する急性心不全であり,死因と高い比率(75%)で因果関係を有していた既往症の聴取が心停止原因の剖検検索に助けとなると思われた。それに対して,解離性大動脈瘤や呼吸器疾患によるDOAについては,臨床診断と剖検診断とが比較的高率に一致していることが認められた。
  • 広畑 優, 菊池 泰輔, 中島 裕典, 宮城 潤, 重森 稔, 坂本 照男, 加来 信雄
    1995 年 6 巻 2 号 p. 146-154
    発行日: 1995/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    脳塞栓急性期症例に対して,tissue-plasminogen activator(以下t-PAと略す)またurokinase(以下UKと略す)を用いた超選択的線溶療法の自験例14例をもとに,この治療法の問題点について考察する。13例で血管撮影上の再開通所見が得られ,8例で治療後早期に臨床症状の改善が認められた。合併症として2例(A2部の閉塞とM2部の閉塞)で,再開通直後に再開通した動脈の末梢部の破綻による脳内出血を来し,臨床症状も著明に悪化した。またM1部の閉塞例で再開通1週間後に再閉塞を起こした。閉塞部位が末梢であるほど側副血行路が乏しくなる。そのため血管閉塞時間は非常に短時間であっても,すでに閉塞部位より末梢部は血管を含めて不可逆的な虚血性変化を起こしている可能性がある。このような例では再開通が可能であっても臨床症状の改善は期待できず,かえって再開通により虚血で脆弱化した血管壁が破綻し,出血を起こす可能性がある。脳の主幹動脈の閉塞に対する超選択的血栓溶解療法は非常に有効であるが,M2より末梢部の閉塞に対する適応には慎重な検討が必要であると思われる。また,いわゆるthromboembolismであっても本療法の適応はあるが,再閉塞の予防のためにとくに厳重な循環管理が必要である。
  • 高桑 徹也, 遠藤 重厚, 中永 士師明, 谷口 繁
    1995 年 6 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 1995/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    致死量を超えるアルコール中毒例の臨床症状および生命を脅かす危険因子を明らかにするために,1983年1月1日から1994年3月31日までに岩手医科大学高次救急センターを受診し,来院時の血中アルコールが400mg/dl以上であった症例について,意識レベル,バイタルサイン,血液検査値,治療法,血中アルコール消失速度について検討した。性別は男性29例,女性4例で平均年齢は42.1±12.1歳であった。血中濃度が500mg/dl以上の9例はいずれも意識レベルがJapan coma scale(以下JCSと略す)100以上で,うち4例はJCS300であった。瞳孔径は,血中濃度が500mg/dl以上の9例のうち3例は散瞳,2例に瞳孔不同を認めた。対光反射は,血中濃度が500mg/dl以上の9例のうち2例は反射消失,4例に反射遅延を認めた。血中アルコール濃度が500mg/dl未満の症例は全例対光反射は迅速で,意識レベルは個人差が大きかった。収縮期血圧,平均心拍数,呼吸数で生命を脅かす徴候は認めなかった。20例に軽度の低体温,16例に低酸素血症,6例にPaCO2の蓄積を認めた。血中アルコール消失速度は-225mg/dl/hrであった。治療は輸液および呼吸管理のみで,全例軽快退院した。多量飲酒者の生命を脅かす徴候は呼吸不全と低体温が考えられたが,医療機関で適切な管理が行われれば生命を脅かすには至らないと思われた。
  • 西村 章, 冨永 正夫, 藤岡 政行, 奥地 一夫, 田伏 久之, 宮本 誠司, 榊 寿右
    1995 年 6 巻 2 号 p. 162-166
    発行日: 1995/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    We report a case of spinal arteriovenous malformation. A 34-year-old man with abrupt onset of neck pain, nausea and vomiting came to our hospital. Computed tomography showed subarachnoid hemorrhage (SAH) mainly located in the posterior cranial fossa. Conventional 4-vessel angiography was performed, but abnormal vessels were not pointed out. Digital subtraction angiography (DSA) revealed arteriovenous malformation (AVM) fed by the anterior spinal artery and anterior radicular artery. Feeder ligation against the anterior radicular artery was carried out 39 days after the onset. Spinal AVM is an uncommon disease and its onset as SAH is rare. We consider it important to examine the upper cervical region by DSA, especially in cases of unkown SAH mainly located in the posterior cranial fossa.
  • 徳原 孝洋, 福本 仁志, 西本 孝, 松山 南律, 中井 康成, 森田 大, 冨士原 彰
    1995 年 6 巻 2 号 p. 167-171
    発行日: 1995/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    We report the successful repair of a ruptured abdominal aortic aneurysm in a 66-year-old man. He was admitted with cardiopulmonary arrest. Emergency surgery was successfully performed after cardiopulmonary resuscitation. Although postoperative MRSA infection developed in the retroperitoneal cavity, it was treated by continuous irrigation with 1% povidone iodine solution. He was discharged without any neurological difficulty and returned to his usual life.
  • 北野 光秀, 吉井 宏, 奥沢 星二郎, 長島 敦, 土居 正和, 茂木 正寿, 山本 修三
    1995 年 6 巻 2 号 p. 172-177
    発行日: 1995/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    Intestinal injuries are usually diagnosed by abdominal findings or radiographically. It is difficult to diagnose intestinal injuries in multiple injury patients particularly if combined with severe head injury. We used laparoscopy for the definite diagnosis of three patients who were suspected to have intestinal injuries. These three patients had severe thoracic injury, severe head injury, and only abdominal injury, respectively. The first and third patients had intestinal rupture. Under general anesthesia, a laparoscope was inserted through a left lower abdominal port. We lifted the small intestine with two Debakey forceps (Jarit) through a left upper abdominal port and a right lower port, and examined all areas of the small intestine. Laparoscopic examination is thought to be a useful method for the definite diagnosis of intestinal injuries.
  • 山下 茂樹, 兒嶋 四郎, 米井 昭智
    1995 年 6 巻 2 号 p. 178-182
    発行日: 1995/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    Recently, toxic shock syndrome (TSS) has been described following Staphylococcus aureus infections in various clinical settings, e.g., surgical wound infections, skin lesions and respiratory tract infections. In 1987, Sperber and MacDonald reported TSS during an influenza outbreak. We report a 42-year-old man who presented with a high fever, watery diarrhea, sore throat, cough, and diffuse erythroderma during an outbreak of influenza in 1993. On the tenth hospital day, the patient developed profound shock with severe metabolic acidosis and loss of consciousness. He fulfilled the Centers for Disease Control confirmed case definition for toxic shock syndrome. Though neither TSST-1 nor enterotoxin was detected, his feces grew out Staphylococcus aureus. The patient required massive infusion of half saline and administration of catecholamines to recover from shock. Staphylococcal pneumonia is a well-recognized complication of influenza. This patient showed no evidence of pneumonia. However, MacDonald noted that TSS may occur during influenza without overt clinical evidence of suppurative bacterial respiratory tract infection. We must recognize TSS as a rare but severe complication of influenza.
  • 大沼 寧, 根上 茂治, 高木 敏貴, 滝田 真司, 杉山 貢, 岡本 連三, 腰野 富久
    1995 年 6 巻 2 号 p. 183-185
    発行日: 1995/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 6 巻 2 号 p. 194-197
    発行日: 1995/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 6 巻 2 号 p. 198-201
    発行日: 1995/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 6 巻 2 号 p. 204
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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