日本救急医学会雑誌
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7 巻, 10 号
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  • 阪神大震災23例の分析から
    重本 達弘, 林下 浩士, 松尾 吉郎, 鍜冶 有登, 月岡 一馬, 鵜飼 卓, 嶋岡 英輝
    1996 年 7 巻 10 号 p. 633-640
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    災害医療においてクラッシュシンドロームは特徴ある疾患のひとつであるが,これまで本邦ではほとんど報告がない。今回われわれは阪神大震災に際し23例のクラッシュシンドロームを経験し,その臨床的特徴および合併する急性腎不全の治療,とくに血液浄化法の有効性につき検討したので若干の文献的考察を加えて報告する。なおクラッシュシンドロームは長時間瓦礫などの下で筋圧迫を受け,来院時の血清creatinin kinase (CK)が10,000IU/l以上であったものとした。自験23例中16例は急性腎不全のため何らかの血液浄化法を必要とし,これら血液浄化法施行例では,非施行の7例に比較し,筋逸脱酵素は著しく高く,加えて血液浄化法の離脱にまで要した日数は来院時の筋逸脱酵素値と強い正の相関関係があった。すなわち急性腎不全の重症度は圧迫挫滅を受けた筋組織の程度に大きく依存していた。つぎに施行された血液浄化法を血液透析群,血漿交換+血液透析群および持続血液透析群の3群に分けて検討したが,各群間で血液浄化法の離脱に要した日数に差はなかった。またミオグロビン(myoglobin; Mb)の血中濃度は,血液浄化の施行の有無や方法に影響されることなく時間の経過とともに低下した。それゆえ血液浄化法によるMb除去効果は認められなかったといえる。以上より,a)クラッシュシンドロームの重症度は圧迫挫滅を受けた筋組織の損傷の程度に大きく左右されていた。b)血液浄化法は合併した急性腎不全に有効性を発揮したが,高Mb血症に対する有効性は確認しえなかった。c)血液浄化法別にみた本症候群の治療成績に差はなかった。
  • 本間 正人, 須崎 紳一郎, 黒川 顕, 大友 康裕, 益子 邦洋, 辺見 弘, 大塚 敏文
    1996 年 7 巻 10 号 p. 641-648
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎に対する重症度評価の意義と早期手術の効果についてretrospectiveに検討した。対象は1985年から1994年まで当施設にて治療した厚生省基準において重症急性膵炎と診断された22例である。重症度評価として来院時acute physiologic and chronic health evaluation II (APACHE II), Ranson's score,来院時Ranson's score(5項目),厚生省予後点数,peak APACHE IIを算出し予後について検討した。来院時APACHE II,来院時Ranson's score(5項目)は来院時すぐに算出可能で治療の影響を受けない指標と考えた。全死亡率は50%であった。来院時APACHE IIは生存群7.4±5.1,死亡群13.5±5.6, Ranson's scoreは生存群4.4±1.9,死亡群6.9±2.3でいずれも有意に(p<0.05)死亡群で高く,厚生省予後点数は生存群で2.8±1.7,死亡群で6.0±2.4で有意に死亡群で高かった(p<0.01,以上mean±SD)。10例に来院後48時間以内に開腹手術が施行され(早期手術群),12例に保存的に治療された(非早期手術群)。両群間で来院時APACHE II,来院時Ranson's score, peak APACHE IIに差はなかったが,早期手術群の70%,非早期手術群の33%が死亡した(p=0.086)。さらに来院時APACHE II 10未満または厚生省予後点数5未満では有意に早期手術群で転帰が不良であった(p<0.05)。来院時APACHE II 10以上かつ厚生省予後点数5以上の群では両治療群とも転帰はきわめて不良であった。以上より,a) 48時間以内の早期手術は,急性期保存療法に比較して転帰が不良であった。b)重症急性膵炎の重症度は均一でなく,来院時APACHE II 10以上,厚生省予後点数5以上,Ranson's score 6以上は劇症型急性膵炎として他の重症膵炎と区別して考えるべきである。c)劇症型急性膵炎は治療法にかかわらず転帰不良であり,有効な治療法に関してさらなる検討を要する。
  • 青木 克憲, 吉野 篤人, 野木村 宏, 高島 正広, 上田 吉生, 浦野 哲盟, 高田 明和
    1996 年 7 巻 10 号 p. 649-659
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    外傷後の線溶系の変動とくにfree PAI-1の反応を検討するため,搬入時ショックを呈した多発外傷10例[男6:女4,平均年齢42.1歳(19~78歳),平均injury severity score 32.6 (25~48),転帰:軽快退院9,多臓器不全死1],重症熱傷5例[男2:女3,平均年齢45.2歳(27~78歳),平均総熱傷面積42.0% (32~67%),平均burn index 31.6 (21~46),転帰:軽快退院4,多臓器不全死1]を対象に,受傷直後から第7日まで経時的に血漿t-PA, PAI-1およびt-PA・PAI-1 complexをenzyme immunoassay法にて測定しfree PAI-1およびfree t-PAを算出した。その結果,(1) total PAI-1とfree PAI-1の間に強い正相関がみられ,総抗原量の増加は活性の増加と判断された。(2) euglobulin clot lysis timeの測定で溶解を認めなかった検体は,free t-PA値の著明な低下を呈したことより,線溶活性はfree PAI-1の産生に規定されると考えられた。(3) t-PAは受傷後より持続的に基準値の2~3倍の範囲内に増加したが,free PAI-1は受傷直後から基準値の30~70倍の増加を示した。この結果,free t-PA値は受傷直後から0.5以下に低下し,とくに熱傷群では168時間まで低線溶状態が続いた。これは受傷直後の侵襲に加え,敗血症の新たな関与が考えられた。(4) free PAI-1値とthrombin-antithrombin III complex/plasmin-α2 plasmin inhibitor complex, antithrombin IIIおよび乳酸値との間に有意の相関が認められた。(5) AT III/free PAI-1平均値は死亡群で有意に低下した(p<0.05)。以上より,受傷直後から過凝固とそれに伴う反応性の線溶亢進が出現するが,12時間以後はPAI-1の産生亢進により低線溶状態へ移行した。このPAI-1の増加は過凝固の傾向に拍車をかけ,とくにAT III/free PAI-1の低下は過凝固・低線溶を背景とする臓器障害を反映するものと考えられる。外傷直後および敗血症においては,線溶系の変動に十分注目し臓器障害型DICの予防に努めるべきである。
  • 宮地 茂, 武田 章敬, 田口 栄一, 丹羽 淳一, 宮崎 素子, 谷口 克己, 前田 憲幸
    1996 年 7 巻 10 号 p. 660-668
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    内頸動脈系の脳塞栓に対する急性期局所血栓溶解療法の適応と問題点を,この治療法の成功例,不成功例,未施行例を含めた32例で検討した。対象は内頸動脈系の脳塞栓急性期に局所血栓溶解療法を行った26例に,血栓溶解を行わなかった6例を加えた。血栓溶解に使用した薬剤はウロキナーゼ(UK)が20例,tissue plasminogen activator (t-PA)が6例で,発症から再開通(または治療終了)までの時間は2~12時間(平均4.5時間)であった。再開通の得られたのは26例中19例(73%)(完全13,不完全6)であった。内頸動脈終末部および中大脳動脈M1近位部の閉塞14例のうち再開通の得られた8例では全例広範な脳梗塞を認め,3例で外減圧を要した。機能的予後は,同部位の閉塞で未開通の2例と血栓溶解を行わなかった4例と同様,不良であった。一方,M1遠位部,M2-M3部の閉塞18例のうち,再開通11例中10例で症状の劇的改善が得られたのに対し,未開通または非施行7例では,1例を除き障害が残った。以上の結果より,内頸動脈終末部およびM1近位部の塞栓で血管撮影上側副血行が不良の場合,血栓溶解は脳浮腫の増強などむしろ不利益が大きいためその適応は少なく,M1遠位部以降の塞栓では,再開通により早期に脳を虚血から救うことができるため,積極的に血栓溶解療法を行うべきと考えられた。
  • 柳川 洋一, 柳田 茂樹, 石川 浩史, 大村 浩之, 岡田 芳明
    1996 年 7 巻 10 号 p. 669-672
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    A 7-year-old boy accidentally swallowed a round fishing sinker (φ15mm). The sinker lead content was 99% or more. We could not introduce the sinker into his duodenum. The sinker was removed endoscopically 6 hours after the ingestion. The blood concentration of lead increased to 38.0μg/dl. This is the first report in which only 6hr retention of solid lead in the stomach elevated the blood lead concentration. Therefore, lead is a harmful metal even with only short term exposure. We recommend early evacuation or induction into the small intestine.
  • 1996 年 7 巻 10 号 p. 677
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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