来院時心肺停止例(cardiopulmonary arrest on arrival; CPAOA)において心拍再開の予測因子について検討した。1991年3月より1992年12月までに東邦大学付属大森病院救命救急センターに搬送された内因性心肺停止239例について,心拍非再開群193例(I群)と再開群46例(II群)に分け,臨床的背景,原因疾患,動脈血および中心静脈血の血液ガス分析値,電解質,乳酸(LA)について比較した。心拍再開群は非再開群に比し年齢差,性差,response time, CPR時間に有意差はなかったが,心停止目撃者あり(p<0.01),到着時心電図が心室細動(ventricular fibrilation; Vf)や電導収縮解離(electromechanical dissociation; EMD) (p<0.01), bystander CPRあり(p<0.05)の例ではII群で有意に多かった。心停止からCPR開始までの心停止時間はI群9.3±7.9min, II群6.7±2.9minとII群で有意に短かった(p<0.01)。原因疾患では脳血管障害が最も再開率が高かった。中心静脈血は心停止に伴う末梢循環をより反映しており,II群の方がpH, PvCO
2, PvO
2, BE, SatO
2でI群との間に有意差を認めた。血清カリウム(K)もI群6.6±2.4mEq/lに対してII群で5.5±1.5mEq/lと有意に低値であった。心停止時間と中心静脈のPvCO
2とはr=0.52, Kとはr=0.49と正の相関が認められたが,PvCO
2は心停止時間が比較的短くても高値で心拍再開例があった。LAとは相関がなかった。心停止目撃者ありの例,到着時の心電図がVf, EMDの例でPvCO
2, Kは有意に低かった。LAは二次救命処置(advanced life support; ALS)開始10分後のLAの変化値(ΔLA)が2.0mmol/l以上の上昇例に心拍再開例はなかった。以上より中心静脈のPvCO
2, Kは心停止時間と相関があったが,心拍再開の予測因子としてはとくにKが有用と思われた。また,ΔLAは到着後の蘇生術の効果判定の指標として有用と思われたが,今後十分な検討が必要と考えられた。
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