エンドトキシン投与経路の違いによる凝固機能異常の差を調べる目的で,ラットに2.0, 5.0, 10.0mg/kgの各用量のlipopolysaccharide (LPS)を気管内注入(intratracheal; i.t.),腹腔内投与(intraperitoneal; i.p.),静脈内単回投与(bolus intravenous; b.i.),あるいは静脈内持続投与(continuous intravenous; c.i.)を行い,それぞれの群で凝固機能変化および臓器障害の程度を比較検討した。その結果,血小板数はb.i.群とc.i.群で有意な低下がみられたが,i.t.群,i.p.群では変化がみられなかった。また血中フィブリノゲン(Fbg)はc.i.群においてのみ有意な低下がみられ,アンチトロンビンIII (AT III)はb.i.群とc.i.群でそれぞれ同経路で生理食塩水を投与したコントロール群に比し有意な低下がみられた。そして投与経路の異なる群間で比較すると,FbgとAT IIIはc.i.群がその他の群に比して低下の程度が高度であった。一方,肝機能の指標としたGOTや腎機能の指標としたBUNは,やはりb.i.群とc.i.群で有意な上昇がみられたが,i.t.群とi.p.群では有意な変化は観察されなかった。そして,各群間の比較ではLPS 5mg/kg投与下ではc.i.群がその他の群と比較し有意な上昇を示していた。さらに血中総蛋白とアルブミンの低下もc.i.群がその他の群よりも高度であった。組織学的変化もc.i.群で最も高度であり,肺においては細胞浸潤と出血,肝臓においては細胞浸潤と浮腫および壊死,腎臓においては糸球体におけるフィブリン血栓の形成や蛋白円柱,好中球浸潤や壊死等の所見が観察された。これらの結果から,同量のLPS投与を行った場合には,c.i.群において最も顕著に血液,組織学的な播種性血管内凝固(DIC)所見や組織障害が認められた実験モデルとして最も適切であると考えられた。
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