船橋市では1993年4月から現場出動型のドクターカーを24時間365日体制で運用している。本報告の目的は4年間にドクターカーが出動した院外心肺停止(OHCPA) 986例の転帰をUtstein styleに則って分析することによりOHCPAの治療におけるドクターカーの有用性を検証し,あわせてプレホスピタルケアの問題点を明らかにすることにある。986例のうち発作を目撃された心疾患によるCPAは247例であった。247例の現場での心電図所見はAsystoleが154例,VF, VTが58例,その他が33例,不明2例であった。現場での二次救命処置によって45.7%に心拍再開が得られ,23.1%が入院,8.5%が退院,6.9%が1年生存し,6.5%が社会復帰または家庭内自立となった。社会復帰または家庭内自立にまで回復したOHCPAのうち72.7%は心疾患によるものであり,witnessed VF, VTがそのうち68.8%を占めた。したがってwitnessed VF, VTはOHCPA中最大のターゲットであることが明らかになった。witnessed VF, VTの1年生存率,社会復帰率はそれぞれ20.1%, 17.2%であった。この成績は米国中都市での成績と比肩しうるものであり,ドクターカーがOHCPAの治療に有用であることが明らかとなった。さらに救命率,社会復帰率を向上させるには,先着する救急隊全隊に救急救命士を配備すること,市民によるbystander CPRの実施率を高める努力をすることが必要である。一方現場で遭遇するVF, VTの頻度は米国のそれと比べ著しく低く,両国間での疾病構造の違いが示唆された。この点を明らかにするために,多地域における疫学的調査を行う必要があると考えられた。
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