日本乳癌検診学会誌
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11 巻, 3 号
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  • 視・触診とマンモグラフィ併用検診の比較検討
    千島 隆司, 須田 嵩, 田村 暢男, 有田 英二, 福田 護, 土屋 周二
    2002 年 11 巻 3 号 p. 245-250
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    [目的] 横浜市乳癌集団検診結果について, 視・触診法による乳癌検診 (以下, 集団検診) と, マンモグラフィ併用乳癌検診 (以下, MMG検診) の結果を比較して, 乳癌検診の精度, 効率について検討した。
    [対象と方法] 対象は平成5年度から平成11年度の7年間に, 横浜市在住30歳以上の女性で集団検診を受診した192,633人と, 主に50歳以上の女性でMMG検診を受診した3,205人である (両群とも繰返し受診者を含む) 。マンモグラフィは二方向撮影とし, 視・触診法とあわせて要精検者を決定した。
    [結果および成績] 要精検者 (率) は集団検診群で14,542人 (7.5%), MMG検診群で838人 (26.1%) であった。発見乳癌 (率) は集団検診群で254人 (0.13%), MMG検診群で27人 (0.84%) であった。そのうちマンモグラムで発見された乳癌は25人, 非触知乳癌は4人であった。マンモグラムで所見を認めなかった乳癌は, 血性乳頭分泌で発見された非浸潤性乳管癌症例, dense breastを呈していた硬癌症例の2人であった。
    [考察] MMG検診群での要精検率は集団検診群に比べて高率であったが, 発見乳癌のうち非触知乳癌が14.8%を占めており, MMG併用乳癌検診は早期乳癌発見に寄与する可能性が示唆された。
  • 齊藤 美穂子, 大貫 幸二, 山田 隆之, 齋藤 春夫, 石橋 忠司, 大内 憲明, 高橋 昭喜
    2002 年 11 巻 3 号 p. 251-256
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    MMG併用乳癌検診においてマンモグラフィ (以下, MMG) 専用のCAD (computer-aided detection) を用い, その有用性を評価した。
    対象は平成12年2月から10月に宮城県対がん協会においてMMG併用乳癌検診を受診した50歳以上の女性2,231名のマンモグラムである。MMG併用乳癌検診は一会場同時併用方式で行われ, 後日行われた再読影時にCADを用いた。CAD使用前後における診断結果を記録し, 要精査率, CADの病変検出率などを検討した。
    2,231症例中59症例が要精検となり, そのうち7症例がCAD参照後に新たに検出されたものであった。要精検率はCAD参照前後で2.3%から2.6%に増加した。CADの検出率は石灰化が95.0%と高値であったが, 腫瘤およびその他の所見の検出率はそれぞれ29.2%, 25.0%と低値であった。MMG1枚あたりの偽陽性病変数は石灰化0.13個, 腫瘤0.25個であった。要精検となった59症例中6症例で癌が認められ, いずれもCADは検出していた。CAD参照後に要精検となった7症例の中に癌は認められなかった。
    検診MMGにおける微細石灰化に対するCADの有用性が確認された。一方で腫瘤の低い検出率や多数の偽陽性候補数, 処理能力の限界など改善が望まれる点も多かった。これらの発展によりMMG併用検診においてCADは今後より重要な役割を果たしていくものと思われる。
  • 2年間隔の場合
    飯沼 武, 松本 徹
    2002 年 11 巻 3 号 p. 257-264
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    わが国においてマンモグラフィ併用検診が2年間隔で全国的に実施された場合, どの位の乳癌死亡減少がおこり得るかを定量的に予測した。対象は日本人女性50~89歳とし, これらの女性が2年間隔で定期的にマンモ検診を受診するものと仮定した。方法は決定論的な癌検診数学モデルを利用した。モデルに代入する数値はがん研究助成金大内班で集めた数値を使った。結果はこの年齢の女性100%が受診した場合, 相対リスクは0.60から0.69となり, かなり大きな死亡減少効果が期待できそうであるが, もし, 受診率が低く, 10%受診では0.97となり, また, わが国の目標である受診率30%でも0.88から0.90であり, 効果が認められないことが分った。今後はマンモグラフィ検診の精度管理をきちんと実施し, 精度の高い検診を行わなければならないことは前提条件であるが, いくら高精度の検診をやっても肝心の受診率を高めなければ相対リスクで示される実際の日本女性全体に対する乳癌死亡減少にはつながらないことは明らかである。これからの乳癌検診対策の重要な柱の1つは受診率向上であり, その目標はスエーデンと同じ80%以上とすべきである。
  • 山崎 美樹, 那須 繁, 古賀 淳, 森 寿治
    2002 年 11 巻 3 号 p. 265-269
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    40歳代の検診発見乳癌39例におけるマンモグラフィ (MMG), 超音波 (US) の検出率について検討した。全発見癌39例における検出率は MMG74.4%, US92.3%, しこりなどを自覚していない無症状例26例における検出率は MMG69.2%, US88.5%, 病期0およびI期の早期癌症例28例における検出率はMMG71.4%, US92.9%, 病期IIおよびIII期11例における検出率は MMG81.8%, US90.9%で, いずれの場合もUSがMMGよりも高率であった。MMGの検出率は無症状例や早期癌例において, 超音波に比べ低率で, 40歳代の乳癌検診においては, USを実施することが望ましい。
  • 房常 朋視, 藤原 伸行, 甲斐 倫明, 草間 朋子
    2002 年 11 巻 3 号 p. 270-280
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    大分県におけるスクリーニングマンモグラフィの調査を行ったところ, 各施設における実質的乳腺線量は, 対象年齢や記録系の違いにより施設間で最大4.25倍の差があり, 記録系別に評価すると, F-S系施設における線量平均はCRのそれに比べて約2.4倍の差があった。そこで, 大分県におけるACR156ファントムの平均濃度における基準線量を導入し, 基準線量と画質との関係を調査したところ, F-S系では線量と画質にある程度の相関が認められるものの, 画質が著しく上昇するまでの効果はなかった。また, CR (computed radiography) でもその傾向は認められなかった。
    以上の結果, 適正なスクリーニング検査を行うためには, 施設毎に最適電圧を決定し, グリッドを使用の上, 中高感度増感紙を使用したコンベンショナルシステムによる撮影が良好な結果をもたらすことを確認した。
  • 確定診断への診断過程
    松永 忠東, 太田 大介, 三坂 武温, 細川 勝正, 田代 聖子, 藤井 雅彦, 中山 俊, 海瀬 博史, 日馬 幹弘, 小柳 〓久
    2002 年 11 巻 3 号 p. 281-288
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    1994年から2001年までの期間で, 乳頭異常分泌が癌発見の契機となり, 明らかな腫瘤性病変を除く59例 (発見乳癌中9.1%) を対象に, 分泌液細胞診, 乳管造影, 乳管内視鏡, 乳管内生検および乳管内擦過・洗浄細胞診の診断能とその役割について検討した。
    初回の直接塗抹細胞診の感度は, 乳癌の疑いを陽性とすると27.1%, 蓄乳法では28.6%であった。経過観察例での最終成績で判定すると, それぞれ33.9%と39.3%であった。乳管造影の異常所見出現率は85.5%で, 乳管内視鏡での病変部検出率は72.7%であった。乳管内視鏡観察下乳管内生検は18例に対して施行され, 乳癌と診断されたのは7例 (38.9%) で, 疑陽性を含めた癌の検出率は66.7%であった。
    以上から, 乳管内進展乳頭側先進部の適格な組織診断は困難であり, これらの症例においては, 厳重な経過観察と繰り返し検査を行う必要性が示唆された。
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