日本乳癌検診学会誌
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12 巻, 3 号
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  • 桜井 正児, 辻本 文雄
    2003 年 12 巻 3 号 p. 243-249
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    デジタル超音波装置の特徴は, デジタルビームフォーマーを使っているため, さまざまな処理を短時間に行えることである。臨床応用では, tissue harmonic imaging (THI) を用いることにより, 腫瘤の辺縁および乳管内あるいは嚢胞内の観察が明瞭にできた。また, パワードプラモード三次元表示では腫瘤と血管構築の関係が立体的に観察でき, Sie-Scape法では広範囲病変の検出や乳頭腫瘍問距離が離れていても計測が可能となった。
  • 飯沼 武
    2003 年 12 巻 3 号 p. 250-257
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィを用いる乳癌検診は世界的に無作為化臨床試験 (RCT) が最も多く行われた検診として有名である。その結果, 乳癌死亡率減少を指標とする有効性が認められ, サービス検診として定着している。日本においても2000年からマンモグラフィを併用することが正式に承認された。ところが2000年に至り, 確実と思われていた乳癌検診のRCTに対して重大な疑問符を突きつける論文 (GO論文と呼ぶ) が発表された。これは世界的に大きな問題となり, 多くの論争が戦わされた。筆者もこの問題について以前から検討していたが, 検診を行っていなかった集団に検診を初めて導入した初回検診において発見される癌に着目し, その癌による死亡数を求める決定論的モデルを作成した。このモデルによるとマンモグラフィ検診の初回検診では通常の罹患率の2-5倍の乳癌が発見され, それらの乳癌による死亡数は過渡的には従来の死亡数を上回る可能性があることを示す。すなわち, 初回検診のRRは検診開始後, 数年間は1.0を超える可能性が高い。一方, 検診を長期間継続して実施していると, 検診発見の乳癌は定常状態となり, この時期には死亡数が減少してRRは1.0を下回ることも明らかにした。すなわち, RCTであっても死亡数の観察は検診開始直後からではなく, ある一定期間経過して検診が定常状態になってから行う必要があると結論される。GO論文はこの点で決定的な誤りをおかした。
  • 赤堀 泰一郎, 大木 規義, 山本 ひとみ, 赤堀 周一郎, 赤堀 眞三郎, 赤堀 和一郎, 伊波 茂道, 妹尾 亘明
    2003 年 12 巻 3 号 p. 258-265
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    平成4年4月から14年3月までの10年間に49例の乳癌症例を発見することができた。うち41例は外来発見例で, 残りの8例が検診発見例であったが, 検診発見例の内訳は最近8ヵ月間に行ったマンモグラフィ併用検診によるものが4例, 過去10年間の視触診によるものが4例と同数であった。早期乳癌比率はマンモグラフィ導入後の検診群で最も高く50.0%であり, 外来群ではマンモグラフィ導入前後で著明な変化は認められなかった。
    平成13年8月からマンモグラフィを導入, 平成14年3月までに1,044例のマンモグラフィ症例を経験した。うち検診希望者が986例, なんらかの訴えを持って受診した症例が58例であった。マンモグラフィ併用検診での要精検率, 精検受診率, 乳癌発見率は各々4.26%, 92.8%, 0.41%であり, 外来群でのそれらは各々27.6%, 100%, 6.89%と高い傾向が見られたし, 感度, 特異度はマンモグラフィ併用検診群で100%, 96.0%, 外来群で100%, 84.0%であったが, 精度管理の面からみても満足のいくものと考えられた。
    過去10年間の当院産婦人科診療の検診, 外来を通じて乳癌発見に一定の役割を果たすことが可能であった。またマンモグラフィの導入により発見乳癌症例が増加し, 早期癌比率も上昇する傾向が認められ, 検診群においてそれが著明であった。
  • 時間差によるリンパ節微小転移発現を指標として
    木下 智樹, 内田 賢, 野木 裕子, 塩谷 尚志, 川瀬 和美, 鳥海 弥寿雄, 武山 浩, 吉田 和彦, 永田 徹, 山崎 洋次, 小峰 ...
    2003 年 12 巻 3 号 p. 266-270
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    [目的] 穿刺吸引細胞診 (FNA) から根治術に至るまでの適正な期間推定を試みた。
    [対象・方法] 1989年~1991年の当院における女性初治療乳癌のうちFNA陽性, 通常の病理組織学的検索でリンパ節転移が認められなかった59例を対象とした。コントロールとして, 同時期にFNAが施行されずに根治術が行われた30例を選択した。既存のリンパ節パラフィン包埋ブロックから新たにH&E, IHC染色を行い, リンパ節微小転移を検索した。転移ありをevent case, 転移なしをcensored case, FNA~手術の期間をtime to eventとし, Kaplan-Meier法による解析を実施した。最悪でもコントロール群の微小転移発現率を超えない期間を算出した。
    [結果] 微小転移ありは5例 (コントロールでは1例) であった。FNA~手術期間は各々13, 17, 20, 26, 30日で, コントロール群の微小転移発現率3.3%からcutoff値0.97とすると, 13日目で0.98 (95%CI : 1.0~0.94), 17日目で0.94 (同1.0~0.88) であった。
    [結論] FNAから手術までの期間は概ね2週間を超えないことが望ましい。
  • 野村 長久, 園尾 博司, 紅林 淳一, 大久保 澄子, 山本 裕, 池田 雅彦, 田中 克浩, 山本 滋
    2003 年 12 巻 3 号 p. 271-276
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    1992年1月から2000年12月の9年間に, 当科外来を受診した乳頭異常分泌237例の潜血反応, 細胞診, マンモテックCEAおよび乳管造影を検討した。潜血反応は全例に施行し, 乳癌における感度100% (21/21), 特異度71.8% (155/216), 陽性反応的中度25.6% (21/82) であった。潜血反応陰性例は経過観察中, 乳癌症例は1例も認めていない。乳頭分泌物細胞診は112例に施行し, class IV以上を陽性とした場合, 感度10% (2/20), 特異度100% (92/92), 偽陰性率90% (18/26) であった。マンモテックCEAは94例に施行し, 1,000ng/ml以上を陽性とした場合, 感度53.3% (8/15), 特異度96.2% (76/79), 陽性反応的中度72.7% (8/11) であり, 400ng/ml以上を陽性とした場合, 感度73.3% (11/15), 特異度83.5% (66/79), 陽性反応的中度45.8% (11/24) であった。乳管造影は47例に施行し, 感度81.8% (9/11), 特異度39.5% (15/36) であった。自験例から潜血反応はスクリーニング検査, マンモテックCEAは補助診断, 乳管造影はmicrodochectomyのインフォメーションとして有用であったが, 乳頭分泌物細胞診は感度, 偽陰性率の問題があった。
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