日本乳癌検診学会誌
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19 巻, 2 号
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第19回学術総会/鼎談
乳癌検診の過去、現在、未来
第19回学術総会/シンポジウム
乳癌の予防は可能か―疫学からみたriskと予防
トピックス
地域で活躍する乳腺クリニック―乳癌検診・診療における役割と現状・今後の課題
  • 井本 厚志
    2010 年 19 巻 2 号 p. 116
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
  • 鎌田 義彦, 玉城 信光, 長嶺 信治, 上原 協
    2010 年 19 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    乳癌診療においては,がんセンターや大学病院,総合病院とともに乳腺クリニックも大きな役割を担っている。当クリニックの診療実績として2008年の乳癌手術件数261件,術前術後化学療法91症例,術後照射紹介123症例(紹介先は5施設),骨シンチ撮影依頼260症例以上(手術時および定期検査)であった。現在,進行・再発乳癌で化学療法継続中48症例。一次検診として地域マンモグラフィ検診年間約700件,地域マンモグラフィ読影年間約2,000件。一次検診や人間ドックなどからの精査依頼年間1,000件以上で,マンモトーム生検依頼を受けてのマンモトーム生検は年間約30件である。一般市民を対象とした講演会や患者・家族を対象とした勉強会,交流会を通して検診の啓発やサポートにも力を入れている。一方,ホスピスや在宅支援との連携がマンパワーや採算面から課題となっている。乳腺クリニックは各診療科のスタッフや機器が同施設に集約されていないというデメリットを地域診療機関と有機的な連携の構築により補い,患者のニーズに応えていく努力によって,地域連携の中で継続的にその機能を果たし,発展させていくことが可能である。
  • ―受診パターンに応じた任意型検診提供と教育啓発による死亡率低下への期待―
    島田 菜穂子
    2010 年 19 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    近年増加傾向にある,乳がん死亡率を低下させるためには乳がん検診受診率向上が不可欠である。2000年のマンモグラフィ併用検診導入を皮切りに,ピンクリボン活動など乳がん啓発活動の広がりと並行し,国家施策としても,がん対策基本法制定や,平成21年度補正予算による検診無料クーポンの配布など,乳がん検診受診率向上を目指す変化が進んでいる。一方,乳がん検診受診率は現在約20%程度と,進歩はみられるものの死亡率低下に至るには程遠い現状がある。2009年NPO乳房健康研究会による一般女性の認識行動調査によると,実際に受診者パターンの違いにより,受診行動を動機づけるには,それぞれ行動を促進する因子が異なることが検出され,多様な検診サービスの提供が受診率向上に対して重要であることが判明した。受診率向上を目指すには対策型検診に加え,若年者や職域を対象とした任意検診の拡充が不可欠であり,mass screeningと並んで個人やあらゆる年齢層に近づく医療サービスが求められている。このように受診者意識やニーズの多様化の伴い,乳がん検診提供機会の選択肢拡大は受診率向上のための一つの鍵である。乳腺かかりつけ医として乳腺クリニックは,利便性・気軽さ,迅速さ,配慮などの特徴を生かし,従来の受診行動者や年齢層に加え,非受診者に対する受診機会の提供と教育・習慣づけの役割を担っていると考えられる。
  • 秋月 美和, 西村 令喜
    2010 年 19 巻 2 号 p. 130-135
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    熊本市では平成17年度より40歳以上の偶数年齢の女性に対してマンモグラフィ併用検診(以下市乳)を行っており,平成19年度の受診率は7.2%,うち乳癌発見率は0.75%であった。当院は,問診・視触診・MMGすべてを行うA方式医療機関(全13施設)であり,同時に熊本県の精検施設(全27施設)としても登録されている。平成19年度(5月~)の当院での市乳受診者数は192名(40歳代は131名,50歳以上は61名),精査となったのは35名,うち1名に細胞診を施行し乳腺症だった。平成20年度は348名(40歳代は207名,50歳代は141名),うち31名が精査となり4名に細胞診を施行,線維腺腫2例,乳腺症1例,乳腺腫1例だった。市乳受診者の中で,発見乳癌症例はなかった。
    当院はクリニックという特性を生かし,問診の段階で超音波検査が必要と考えられる受診者に対して説明を行い,平成20年度は市乳から一般検査に変更した受診者が157名,そのうち3例に乳癌が発見された。また,通常は受診者に対して後日郵送される結果説明を当日に行うことができ,その際に超音波検査の受診経験がない人にその必要性を説明,触診方法も指導するようにしている。
    地域の乳腺クリニックとして,いかに受診率を上げ早期の乳癌を発見するか,「カテゴリー3」症例に対して,いかに大病院の混雑を解消できるかが重要である。
  • 山川 卓
    2010 年 19 巻 2 号 p. 136-140
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    当院は乳腺専門クリニックとして2004年4月に開院した。開院後5年を経過した当クリニックでの地域での現状,役割,問題点等を検討した。対象は04年4月~09年4月の当クリニック乳腺初診患者9,194例。患者内訳は,高知市からの住民検診1,325例,診療検診,その他5,104例,他医よりの精密検査依頼2,765例であった。このうち,乳癌発見数(率)は住民検診5例(0.4%),診療検診,その他222例(5.3%),精密検査依頼288例(10.4%)であり,合計515例(5.6%)であった。当クリニックでは,入院設備を持たないため,全麻手術は他施設(厚生年金高知リハビリテーション病院,国立病院機構高知病院)に著者が出張している。乳癌手術総数は484例であり,乳房温存410例,乳切除74例,その成績は5生率98.9%,5年無再発率97.9%であった(平均観察期間814日)。また,乳癌診断,治療以外に一般への乳癌知識啓発のため,院内セミナーも開催している。問題点は,末期患者における終末期ケアへの対応,マンパワー不足等が挙げられる。地域における乳腺クリニックは,乳癌死の減少を目指して,専門性の維持向上,厳密な精度管理およびさまざまな地域医療連携の構築が必要である。
  • ―施設検診担当機関,精密検査機関,治療機関としての現状と課題―
    大江 信哉, 近藤 理恵, 蔭山 典男, 沢井 清司
    2010 年 19 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィ併用乳がん検診はここ数年の間に全国の市町村で開始され,2009年現在,京都府でも全市町村で実施されている。検診開始に伴い,地方にも検診実施機関,精密検査および治療機関が必要になる。こうした状況の中で地方に乳腺専門クリニックを開設した場合,(1)地域住民等への乳がん早期発見の啓蒙,(2)市の乳がん検診施設,(3)地域のマンモグラフィ読影施設,(4)乳がん検診精密検査機関,(5)乳腺(特に乳がん)診療専門施設等の役割が期待される。当院は京都府北部の地方都市(舞鶴市)に2007年6月に開院した乳腺専門有床診療所であり,常勤医師1名,スタッフ18名で上記の役割を徐々にではあるが果たしつつあると考えている。しかし,現状でも医師1名に少なくとも1日30名の外来診察,15件のUS (年間約3,000件),30件のマンモ読影(年間約7,000件),年間約400件の細胞診,40件のマンモトーム生検,120件の手術に加え,入院患者診療業務をこなさなくてはならない。また,臨床放射線技師1名に,少なくとも1日13件(年間約3,000件)のマンモグラフィ撮影の他に一般撮影,CT撮影,およびマンモトーム生検介助が求められている。今後もさらに患者数の増加が予想されるため,スタッフのさらなる充実が課題である。また,患者数が増加しても乳腺診療の質を維持,向上させることが必要であり,そのためのスタッフが一体となった業務の効率化,システム化も重要な課題である。
  • 増岡 秀次, 森 満, 桜井 美紀, 吉田 佳代, 白井 秀明, 山崎 弘資, 下川原 出, 浅石 和昭, 三神 俊彦, 三原 大佳, 野村 ...
    2010 年 19 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    平成19年よりの約1年半の当院初診受診者は5,046名で,年齢は7歳から95歳まで,平均44.5歳である。乳癌症例の平均年齢より約10歳若い。受診者は,北海道全域からの来院があるが,所在地の住民が一番多く,次いで近隣区が多く地域性がある。受診の動機は,当院受診者よりの紹介,知人・家族よりの勧めによる受診者で約60%を占める。他施設よりの紹介は約16%である。最近は乳腺科よりの紹介も増加傾向にある。Second opinionの増加も一因である。
    5年前と比較し,受診動機の割合はほぼ不変であるが,乳癌発見率は減少し,最近の発見率は,精査紹介が10.5%,主訴あり受診者が7.0%,検診受診者は0.9%である。マンモトーム生検,超音波ガイド下細胞診など微小,微細な病変に対する診断の技術の向上により早期癌の発見が増加しているが,乳癌罹患のリスクが低い若年者の受診の増加が発見率の低下に繋がっていると思われる。
    乳癌の死亡数を減少させるためには受診率の向上が不可欠であるが,受診者が殺到すると検診機関,精査機関ともに対応が困難となる。その対策として,検診の精度向上とリスクの高いグループを選定し,効率の良い検診を構築する必要があると思われる。
原著
  • ―アンケート調査結果からの考察―
    大田 浩司, 笠原 善郎, 田中 文恵, 前田 浩幸
    2010 年 19 巻 2 号 p. 154-158
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    福井県では08年5月より技師,医師を対象に超音波勉強会を開始し,現在まで計3回を終了した。対象は県内の検診,2次精査機関に所属する技師,医師とした。勉強会終了後,4週以内に参加者全員にアンケート用紙を配り,職種,施設,各講義の時間配分,その内容の良し悪し,JABTS講習会の参加希望や今後の勉強会参加意思などを調査した。3回の参加者は計26施設のべ177名,参加総数は102名(医師35名,医師以外67名)であった。参加施設の内訳は,2次精査機関,開業医,検診機関の順であった。医師以外の内訳では,放射線技師が86.7%を占めた。医師の専門科では,一般外科医が最多であり,放射線科,その他(開業医,検診医),乳腺外科,産婦人科の順であった。各講義の理解度では,腫瘤像形成性病変は「理解できた」との回答が100%であったが,腫瘤像非形成性病変では,61.1%にとどまった。JABTS講習会への参加希望は56.2%であった。その他の意見には,「動画をもっと見たい」,「実際の症例をたくさん提示してほしい」などのコメントが多く見受けられた。アンケート結果を踏まえ,今後は症例検討,動画を多数盛り込んだより実践的な勉強会を行い,超音波の検診導入に向けた準備を行いたい。
  • 中井 克也, 田口 良子, 奥出 有香子, 齊藤 光江, 霞 富士雄
    2010 年 19 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    順天堂大学附属病院(本郷地区)の35歳以上の女性職員を対象として乳がん検診の現状についてアンケート調査を行った。調査期間は平成20年度12月15日~平成21年1月10日に行い,対象者420名に対して237名の回答を得た(回答率56.4%)。職員で乳がん検診を行ったことがあるのは28.9%であった。マンモグラフィ併用の乳がん検診は16.6%であった。定期的に乳がん検診を行っているのは8.4%にすぎなかった。乳がん検診を受けたきっかけについては,第1位は「年齢的に検診の必要性を感じた」であった。一方,乳がん検診を受けたことがない理由は,第1位は「検診を受ける機会が少ない」であった。乳がん検診率と自己検診の関係をみると,自己検診をする群のほうが,乳がん検診率が高かった(p<0.001)。乳がんの職域検診の希望を問うと,「はい」63.1%,「条件によって」29.7%,「いいえ」7.2%,の結果であった。医療機関に勤務する職員であっても,乳がん検診受診率は低く,その理由としては検診受診の機会の少なさが考えられた。職域検診に対する要望が高かったことからも,職域検診が乳がん検診受診機会の一つとして提供されることによって,乳がん検診受診率向上の可能性があることが示唆された。
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