日本乳癌検診学会誌
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20 巻, 3 号
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第20回学術総会/パネルディスカッション2
超音波検診の現状、問題点とその解決策
  • 2011 年 20 巻 3 号 p. 151
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2014/03/30
    ジャーナル フリー
  • 石田 孝宣, 河合 賢朗, 玉城 研太朗, 成川 洋子, 大内 憲明
    2011 年 20 巻 3 号 p. 152
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2014/03/30
    ジャーナル フリー
    乳癌は40歳代で罹患の増加が著しいことから,死亡率減少に向けた対策が急務である。現行のマンモグラフィ検診では,高濃度乳房での検診精度が劣るため,超音波の検診への導入が検討されているが,有効性(死亡率減少効果)は検証されていない。本研究は第3次対がん総合戦略研究事業(がん対策のための戦略研究:J-START)として,超音波による乳癌検診の標準化,及びマンモグラフィ検診に超音波を併用する介入群と併用しない非介入群の各群5万人で,有効性を検証するランダム化比較試験である。研究期間が4年のため,プライマリエンドポイントを感度,特異度及び発見率とし,セカンダリエンドポイントを追跡期間中の累積進行乳癌罹患率とする。
    現在のところ,約7万人がこの試験に参加しており,その約96%が,個別及びクラスターランダム化で割り付けされている。わが国で初めての大規模臨床試験であり,国内外から大きな注目を集めている。本試験を遂行するにあたり,受診勧奨や追跡の方法と効果などでみえてきたものがある。これらをふまえて検診の現状と問題点,今後の展望について報告する。
  • ―乳房超音波検診導入に向けた新たな診断基準の確立―
    玉城 研太朗, 石田 孝宣, 宮下 穣, 河合 賢朗, 大内 憲明, 笹野 公伸, 玉城 信光
    2011 年 20 巻 3 号 p. 153-159
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2014/03/30
    ジャーナル フリー
    現在「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験」(J-START)が進行中で,近い将来,乳房超音波検査が日本における標準検診方法として組み込まれることが期待される。乳房超音波検診導入に向けて,超音波検査の精度管理が重要となり,病理組織学的,生物学的現象を背景とした正しい乳房超音波画像診断法の確立がきわめて重要となる。乳癌症例154例に対し,超音波画像所見と病理組織学的所見の比較検討を行った。超音波画像と病理組織の腫瘍の辺縁部の所見の一致率は87.0%,haloの有無は一致率87.0%,内部エコーと後方エコー所見は腫瘍内部の均質性,不均質性と間質の膠原線維組織の性状よって規定されていることが分かった。前方・後方境界線の断裂と組織学的波及度の一致率は84.4%,組織型の一致率は87.0%であった。また乳房超音波におけるvascularityがガイドラインに掲載されるようになったが,超音波ドプラの使用の際の位置づけやhypervascularの定義,vascularityの定量化など,明確な診断基準が存在せず,今後,科学的根拠に基づいた診断基準の作成が急務となる。乳房超音波検査を行う上でもっとも重要なことは,背景にある生物学的現象・病理組織学的形態をイメージできるかということにつきるのである。
  • 角田 博子, 大貫 幸二
    2011 年 20 巻 3 号 p. 160
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2014/03/30
    ジャーナル フリー
    MMGとUSを併用した乳癌検診が,任意型検診を中心に広まりつつある。それぞれの所見を別々に判定するより,総合的に判定し最終結果を決定することによって,感度の上昇とともに要精検率を低下させることが可能である。そこで,日本乳腺甲状腺超音波診断会議の検診班では,総合判定基準について討論している。今回,その案について報告する。まず腫瘤については,境界明瞭平滑あるいは評価困難な腫瘤については,US所見を優先,微細分葉状以上の腫瘤については,MMGを優先することとする。局所的非対称性陰影については,USで正常乳腺と判断できれば精査不要,正常乳腺と判断できないあるいは部位を特定できなければ要精査(カテゴリー3),病変を確定できればUS所見を優先する。石灰化に関しては原則としてMMG所見を優先する。構築の乱れについてはカテゴリー4以上の場合MMG所見を優先する。この判定基準は最初の提案であり,コンセンサスの得られたものではない。しかし,総合判定は併用検診受診率が上昇した場合,精密検査機関の負担を低減させることにもなり,今後,さらに検討を重ね,よりよい判定基準を作成していく必要があると考えている。(日本乳腺甲状腺超音波診断会議http://www.jabts.net/)
  • ―同時併用検診で感度は上昇するか―
    宇佐美 伸, 大貫 幸二
    2011 年 20 巻 3 号 p. 161-167
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2014/03/30
    ジャーナル フリー
    【背景】乳房超音波検査を行う際には,あらかじめ特に注目すべき領域を認識して検査に臨むことで,より感度の高い検査が可能である。【目的】超音波検査技師に読影試験を実施し,感度を明らかにする。【方法】超音波検査技師15名を対象として,癌19病変,良性4病変に正常例を加えた計50症例(MLO一方向)の試験を実施。存在診断として超音波検査を施行する場合に注目すべきと考えた部分を一乳房2カ所まで図示,続いて質的診断として「異常なし」「病変がある可能性がある」「病変があり良性を疑う」「病変があり悪性を疑う」の4つから選択する形式とした。【結果】15名の平均感度は89%(74~100%)。15名中7名が90%以上,13名が80%以上の成績であった。質的診断は読影者によってばらつきがみられた。【考察】特別なトレーニングを受けていない現時点においても高い感度が示され,検査技師がマンモグラフィを読影することは有用である。検査技師による読影は超音波の感度を高める目的で行うため,特異度も重視される医師の読影とは異なった概念が求められる。【結語】超音波技師がマンモグラフィを読影したうえで超音波検査を施行することで,より精度の高い検診が実施できる可能性がある。
  • 森久保 寛, 市村 みゆき, 阿部 聡子
    2011 年 20 巻 3 号 p. 168-177
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2014/03/30
    ジャーナル フリー
    超音波とマンモグラフィを併用した乳がん検診の例を栃木県保健衛生事業団の実施する住民検診から紹介した。
    平成12年度から平成19年度に実施した出張型の住民乳がん検診延べ約14万件の検討から,超音波とマンモグラフィが乳癌発見にきわめて相補的に機能することが示された。このことは特に40歳代,50歳代の受診者において顕著で,それぞれのモダリティが乳癌発見感度を20%程度向上させていることが示されている。
    乳がん超音波検診システムを精度よく十分な効率を確保しながら運用するためのポイントは検査技師および読影医師の技術養成と設備の精度管理,それに過去画像参照などを可能とする画像読影システムのきめ細かい構築である。
    超音波とマンモグラフィによる分離併用検診では要精検率の高さが問題となる。その解消のためには過去画像との比較読影が大変有効であるが,さらに両者の情報を加味しながら検査読影を行う超音波・マンモグラフィ同時併用検診とその総合判定システムが期待される。
  • 渡辺 隆紀
    2011 年 20 巻 3 号 p. 178-182
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2014/03/30
    ジャーナル フリー
    近年,乳房超音波検査の役割が重要になってきている。このような状況の中で,乳房超音波検査の教育やガイドラインの重要性も増している。本稿では,日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)が作成した乳房超音波診断ガイドラインにおける問題点やガイドラインの今後の方向性について提示したい。例えば乳房超音波診断ガイドラインは,専門家の意見を基に作成された。しかし,今後は徐々に根拠に基づいたガイドラインに変えていかなければならない。さらに,新しい診断基準を作成する際にもしっかりした根拠に基づいたものを作っていかなければならない。この目的のためには,例えばカラードプラやエラストグラフィなど,いくつかのテーマで多施設研究を行っていく必要がある。さらに,基準の信頼性を向上させるためにも,作成のプロセスを公開していくことが必要である。また,海外との関係も十分に考慮する必要がある。JABTSのガイドラインは本邦でのみ用いられており,海外ではBI-RADS Ultrasoundが広く用いられている。JABTSガイドラインにおける用語はその多くがBI-RADSと同じであるが,いくつか違うものがある。そこで,われわれは用語に関してBI-RADSとの整合性を考慮して行く必要がある。その他,例えば内部エコーの定義や濃縮嚢胞の診断基準などさまざまな問題が存在するが,われわれはこれらの問題を一つ一つ解決し,将来に向けてよりよいガイドラインを作っていく必要がある。
  • 武部 晃司, 安毛 直美, 綾野 はるな, 松本 昌子
    2011 年 20 巻 3 号 p. 183
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2014/03/30
    ジャーナル フリー
    有効な超音波検診が広く行われるためには,超音波検査担当者が的確な検出力を持たなくては行けない。そのためには超音波検査で要精査になる病変がどのような形で見えてくるのかをしっかりと理解し,さらには経験しなくてはいけないと従来から考えてきた。それにはどうしても動画による超音波検査教材が必要になる。当院では2003年から超音波検診の従事者向けに動画教材を作成してきた。年々,改正を繰り返し現在では第3版の教材が完成し,希望者に配布している。現在の動画教材はwindows用のpower pointで作成したプレゼンテーションをCDに収めた様式を用いている。また従来型の紙(本)の教材は,CD内にPDFファイルにして収め,それを印刷して作成するようにしている。現在はそれを一歩進めて,iPadで供覧できるibookで教材作りに取りかかっている。またこの教材を用いて,全国各地で講演会を行っている。当院での教材作り,教材を用いた講演会活動を通じての超音波検診普及活動について報告する。
  • 2011 年 20 巻 3 号 p. 184-190
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2014/03/30
    ジャーナル フリー
原著
  • 大田 浩司, 西出 裕子, 橋爪 泰夫, 海崎 泰治
    2011 年 20 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2014/03/30
    ジャーナル フリー
    石灰化の診断基準や生検の適応には,現状では年齢が加味されることはない。しかし,良性微小石灰化の代表である乳腺症の頻度は年齢と大きく関与するため,年齢は重要な診断要素であると考えられる。石灰化診断における年齢因子の必要性を検討するために,随伴所見を伴わないカテゴリー3以上の石灰化病変を年齢別に解析した。30歳台から60歳台までを10年ごとに層別化し,さらに70歳以降を高齢者群とし,受診者数,石灰化要精査率,生検施行率,陽性反応適中率(PPV),癌発見率,非癌病変の内訳,各病変の比率を調査した。石灰化要精査率の年齢分布では,30歳台,40歳台,50歳台で高く,60歳台,高齢者群で低い結果であった。PPVでは,60歳台および高齢者群で高い傾向を認めた。非癌病変の内訳では,乳腺症が81.0%と最も多く,40歳台から増加し,50歳台でピークとなり,65歳以降は急激に減少していた。癌発見率では各年齢層に大きな差は認めなかった。以上より,随伴所見のない石灰化病変に関しては,60歳以上では乳腺症の頻度が低下するためPPVが上昇することが確認された。高齢者で見られることの多い脂肪性乳腺における高濃度腫瘤の場合と同様に,石灰化診断においても年齢や背景乳腺を加味したカテゴリー診断,生検の適応基準の決定が肝要と思われた。
  • 大岩 幹直, 遠藤 登喜子, 白岩 美咲, 西田 千嘉子, 森田 孝子, 佐藤 康幸, 林 孝子, 加藤 彩, 市原 周, 森谷 鈴子, 長 ...
    2011 年 20 巻 3 号 p. 196-203
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2014/03/30
    ジャーナル フリー
    硬化性腺症を背景にもつ乳癌は,近年診断する機会が増加している疾患であるが,その臨床像の検討がなされた報告は少ない。そこでわれわれは,硬化性腺症を背景にもつ乳癌の臨床像を明らかにするために,臨床所見の検討を行った。2005年1月から2009年12月に名古屋医療センターで生検,切除などにより病理組織学的に硬化性腺症と診断された57人を対象とした。
    乳癌合併例は42人で,初発片側乳癌手術時の平均年齢は47.8歳と,全乳癌に比べ有意に若かった(p<0.0001)。発見契機はマンモグラフィ検診による無自覚症例が多く,乳癌合併例で40.5%(17/42)であった。乳癌合併例は両側乳癌比率が26.2(11/42)と高く,さらに片側乳癌31例には多中心性発生と考えられる癌の合併が8例に認められた。また浸潤性乳癌発生のリスク病変の合併が片側乳癌の48.4%に認められた(15/31)。合併した癌の組織型,組織学的異型度,intrinsic subtypeに明らかな特徴は認められなかったが,初発片側乳癌では非浸潤性乳管癌の比率が54.1%(20/37)と有意に高かった(p<0.0001)。癌合併例の多くが早期発見されるために良好な予後が期待されるが,異時多発乳癌の発生に十分留意し,温存乳房のみならず対側乳房に対しても慎重な経過観察が望まれる。
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