マンモグラフィ(MMG)で乳腺濃度mammographic density (MD)は,高濃度であると乳癌発症のリスク因子となると報告されている。MDと肥満度とは負の相関があるが,肥満に関連する生活習慣・脂質・糖代謝とMDとの関連についての報告は少ない。今回,MDの規定因子を調べるためにこの研究を行った。当院健診センターにて生活習慣病の検診とMMGを同時に行った受診者のうち閉経後の304例を対象とした。MDはBI-RADSにより4段階に評価し,脂肪,散在性を低濃度群(LD群),高濃度不均一・高濃度を高濃度群(HD群)と2つに分類した。LD群とHD群,それぞれにおける出産歴,肥満に関するデータ(BMI,腹囲,体重増加,運動歴,糖・脂質),他に年齢や乳癌のリスク因子(喫煙・アルコール,乳癌家族歴,ホルモン補充療法の既往等)を比較検討した。統計処理は2群間の評価をt-検定またはΧ
2検定またロジスティック回帰分析による多変量解析を行った。2群間の比較の結果,LD群の年齢,BMI,腹囲,TGはHD群に比較して有意に高かった(いずれもp<0.001)。またHDLは逆にLD群で有意に低かった(p<0.001)。また体重増加例も有意にLD群で多かった(p<0.001)。BMI・年齢で調整した多変量解析では,体重増加とHDLは有意な因子であった(それぞれp=0.004, 0.018)。閉経後では肥満度が高まるとMDは低下し,その指標はBMIのみならず体重増加の有無も大きい。またHDLは肥満度と独立して,有意にHD群で高かった。
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