2015年に,日本乳癌学会検診関連委員会は日本の乳がん検診マンモグラフィカテゴリーに対するマネジメントの実情を把握する目的にてアンケート調査を行った。調査対象は日本乳癌学会評議員402人で回答率は72%と良好であった。回答者の91%が日本乳癌学会専門医を取得していた。アンケート結果からマンモグラフィカテゴリー判定とそのマネジメントに不一致が認められた。例えば,カテゴリー2の石灰化所見に要精査を施行した割合は6割あり,カテゴリー3症例に対する侵襲的検査の施行率(石灰化症例:75%,非石灰化症例:82%)も非常に高かった。つまり,不要な要精査や侵襲を乳がん検診受診者に与える不利益の増加に繋がっている可能性が示唆された。また,カテゴリー4の2割近い症例が経過観察されており,乳癌診断の遅れによる不利益も生じている可能性が示唆された。
今回のアンケート結果は,日本の乳がん検診マンモグラフィが受診者へのマネジメントの均てん化に不十分であるという実情を明らかにした。マンモグラフィカテゴリー判定とそのマネジメントに不一致が起きる原因は,日本では検診施設で判定されたマンモグラフィカテゴリーが最終判定として記録として残すことが多く,精査施設で精密検査を経て判定される最終判定カテゴリーを記録することとその重要性について教育がなされていないことにあると考えられた。米国放射線学会のBI-RADSのように最終判定カテゴリーに基づいた推奨マネジメント指針を日本のマンモグラフィガイドラインでも明示した方が良いと考える回答者はほぼ8割であった。今回のアンケートより,マンモグラフィ検診の総合理解のための再教育とマンモグラフィカテゴリー判定を検診用と推奨マネジメントに直結する精密検査用(最終判定カテゴリー)に分けて取り扱い,精密検査機関での最終判定カテゴリーに基づいて推奨マネジメントを行うという考え方の普及が日本のマンモグラフィカテゴリーに対するマネジメントの均てん化には必要と考えられた。なお,このアンケートの詳細な報告は,乳癌の臨床,31:465―479,2016に掲載されているので興味のある方はご参照下さい。
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