日本乳癌検診学会誌
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26 巻, 2 号
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第26回学術総会/シンポジウム2
画像診断医,病理医の立場からみた検診のジレンマ
  • 植松 孝悦, 岩瀬 拓士, 大貫 幸二, 笠原 善郎, 鯉淵 幸生, 鈴木 昭彦, 橋本 秀行, 中村 清吾
    2017 年 26 巻 2 号 p. 129-137
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    2015年に,日本乳癌学会検診関連委員会は日本の乳がん検診マンモグラフィカテゴリーに対するマネジメントの実情を把握する目的にてアンケート調査を行った。調査対象は日本乳癌学会評議員402人で回答率は72%と良好であった。回答者の91%が日本乳癌学会専門医を取得していた。アンケート結果からマンモグラフィカテゴリー判定とそのマネジメントに不一致が認められた。例えば,カテゴリー2の石灰化所見に要精査を施行した割合は6割あり,カテゴリー3症例に対する侵襲的検査の施行率(石灰化症例:75%,非石灰化症例:82%)も非常に高かった。つまり,不要な要精査や侵襲を乳がん検診受診者に与える不利益の増加に繋がっている可能性が示唆された。また,カテゴリー4の2割近い症例が経過観察されており,乳癌診断の遅れによる不利益も生じている可能性が示唆された。 今回のアンケート結果は,日本の乳がん検診マンモグラフィが受診者へのマネジメントの均てん化に不十分であるという実情を明らかにした。マンモグラフィカテゴリー判定とそのマネジメントに不一致が起きる原因は,日本では検診施設で判定されたマンモグラフィカテゴリーが最終判定として記録として残すことが多く,精査施設で精密検査を経て判定される最終判定カテゴリーを記録することとその重要性について教育がなされていないことにあると考えられた。米国放射線学会のBI-RADSのように最終判定カテゴリーに基づいた推奨マネジメント指針を日本のマンモグラフィガイドラインでも明示した方が良いと考える回答者はほぼ8割であった。今回のアンケートより,マンモグラフィ検診の総合理解のための再教育とマンモグラフィカテゴリー判定を検診用と推奨マネジメントに直結する精密検査用(最終判定カテゴリー)に分けて取り扱い,精密検査機関での最終判定カテゴリーに基づいて推奨マネジメントを行うという考え方の普及が日本のマンモグラフィカテゴリーに対するマネジメントの均てん化には必要と考えられた。なお,このアンケートの詳細な報告は,乳癌の臨床,31:465―479,2016に掲載されているので興味のある方はご参照下さい。
  • 新井 貴士, 安毛 直美, 兼近 典子, 綾野 はるな, 武部 晃司, 佐藤 明
    2017 年 26 巻 2 号 p. 138-142
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    当院における2005年から2015年までの11年間に行った乳癌検診成績をもとにして,検診についてのジレンマについて考察する。当院は2005年から対策型検診において,マンモグラフィ(MG)および超音波(US)同時併用検診を行っている。近年,国内最大規模の臨床試験J-START の結果により,50歳未満の女性において,MG 検診にUS を併用することで乳癌発見率が高くなり,高濃度乳腺に対するUS 併用検診への期待が高まっている。J-START とは患者背景や検診方法が異なるところもあるが,当院の検診成績は,要精査率5.3%,乳癌発見率0.8%と高い検診精度を維持している。また,数は少ないものの,発見癌の中に予後不良とされるTriple Negative(TN)およびHER2陽性(ER±)乳癌も存在し,早期の治療介入により予後の改善が期待でき,検診が唯一の早期発見方法である。一方,近年,乳癌検診による過剰精査,過剰診断も問題となっており,US を併用することでさらにその数は増加する。当院の検討では,MG 検診にUS を併用することで,発見される乳癌が約30%増加するが,要精査症例が倍以上増加し,要経過観察症例が3倍以上増加する。検診の最大の目的は死亡率を低下させることであり,対策型検診の場にUS を導入することについては,発見率だけでなく,要精査,要経過観察などの精度管理も含めて慎重に判断する必要がある。
  • 病理学的見地から
    山口 倫, 森田 道, 山口 美樹, 大塚 弘子, 赤司 桃子, 田中 眞紀, 矢野 博久
    2017 年 26 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    以前,乳癌検診は早期発見,早期治療を掲げていたため,病理医も早期癌あるいは将来癌になるであろう病変を見出すことに重きを置いていた。しかし昨今,過剰診断の問題が取り沙汰され,特に検診では予後改善が目的で,“命に関わらない”病変を如何に見出さないかという考えにシフトしているようだ。一方で,その対象が境界病変,低異型度(LG)―DCIS,LG 浸潤癌なのか,それら全部なのかは不確かである。 DCIS はluminal だけでなく,HER2陽性も存在するheterogenous なグループで,前者はLG,後者は高異型度の浸潤癌となる。従来の乳癌モダリティでは,triple negative DCIS はきわめて検出されづらく,残念ながら致死的癌の“芽”の早期発見は大部分ができていない。一方で,大半が予後良好と思われるLG-DCIS も一定の割合で浸潤し,低頻度ではあるが数年後死に至る例もある。 これらのことから私見であるが, ( i )今後の検診について, 1.多形線状石灰化≒コメド壊死≒HER2陽性癌の早期検出にフォーカスし,抗HER2療法の抑制に繋げる。 2.早期乳癌,境界病変の病理診断者間一致率は低いため,マンモグラフィ精査基準を上げ,LG-DCIS/LN/境界病変(luminal)の検出・採取率を減らす。結果的に取扱いに悩む機会が減る。 3.致死的TN の早期検出に関しては新しいモダリティを見出す。 (ii)病理診断(癌診断基準)について, LG 乳癌は低頻度だが死に至り,LN 転移など悪性のポテンシャルも有する。したがって,しばらくの間現状のクライテリアとし,“低リスク”病変の病態を明らかにする。 今後は,“命に関わらない”病変の臨床病理学的定義とその所見を明確にしていく必要がある。
第26回学術総会/パネルディスカッション2
ハイリスクグループに対する検診
  • 磯本 一郎, 糸柳 則昭, 白藤 智之, 中村 史郎, 田口 恒徳, 大曲 武征, 三浦 史郎, 中島 正洋
    2017 年 26 巻 2 号 p. 148-153
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    乳癌スクリーニングツールとしての乳房MRI の有用性を評価するため,原発性乳癌患者の対側乳癌に対する乳房MRI の診断能をACR BI-RADS2013のプロセス指標に基づき評価した。全観察期間中の188例では乳癌検出率7.4%,リンパ節転移陰性乳癌率100%,minimal cancer 率85.7%,カテゴリー4以上の症例における陽性的中度61.9%,実際に組織学的検査が行われた症例の陽性的中度58.3%はいずれも基準値を上回っていた。一方,カテゴリー3以上を要精密検査の対象とすると要精検率は22.9%と高く,陽性的中度も32.6%であった。観察期間が2年以上の131例を対象として,ターゲットUS を併用し診療方針を決定した実際の診療では要精検率は11.5%と低下し,陽性的中度は60.0%と上昇した。また,感度90.0%,特異度95.0%とACR BI-RADS2013で示された基準値を満たし,他のプロセス指標の項目もすべて基準値を上回っていた。 乳房MRI は原発性乳癌患者の対側乳房に対する乳癌スクリーニングツールとして有用である。しかしながら,MRI 単独では要精検率の増加や陽性的中度の低下など受診者の不利益が増大することが予想される。ターゲットUS を併用することにより,要精検率や偽陽性率を低下させ,受診者の不利益を軽減できる可能性が示唆された。
  • 大住 省三, 清藤 佐知子, 高橋 三奈, 青儀 健二郎, 杉本 奈央, 金子 景香
    2017 年 26 巻 2 号 p. 154-158
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    遺伝性乳がんの診療を行う場合,乳がん患者の中から遺伝性の方を同定するのがまず第一の段階であるが,その次には血縁者で同じ体質を有している人の同定,さらにはその家系を同定するきっかけとなった患者ならびに同じ体質を有する高リスクの血縁者に対する乳がん予防を実施する必要がある。 乳がん高リスク者に対する乳がん予防の方法はいくつかあるが,そのうちで最も受け入れやすく,日本でもすぐに行うことが可能なのは乳房MRI である。 今回は乳がん高リスク者に対する検診としての乳房MRI に注目する。 四国がんセンターでは,乳がん高リスク者に対する乳房MRI を用いた検診を行っている。まず,当院での検診としての乳房MRI の実施の現状を報告する。次に,当院で乳がん未発症で遺伝性乳がん卵巣がんの体質を有していることが判明した後に乳がんを発症した患者が3名いるが,その乳がんの診断までの経過を示す。 当院での状況をみても,実際に検診として乳房MRI を行うのはかなり困難を伴う。今後,実際にわが国で乳房MRI 検診を進めていく上での問題点等を考察する。
第26回学術総会/ワークショップ1
地域での人材育成
  • 小林 剛
    2017 年 26 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    東京都立病院では2007年に放射線科技師長会教育研修員会を設置して診療放射線技師の人財育成・能力開発に取り組んできた。5カ年計画プログラムが終了したことを受け,2014年新たに人財育成専門性向上委員会が設置された。モダリティ別に7専門部会があり,そのひとつとしてマンモグラフィ部会が設置されている。総技師数195名で構成され,マンモ部会は18名で活動している。技師長会より相談役が配置されるが,活動の中心は係長級が行っている。 マンモグラフィ部会の年間活動は,マンモグラム読影研修会,精度管理勉強会,病院経営本部専門性向上研修が3つの柱となる。読影研修会はマンモグラムを中心とした症例検討会に研修生が参集する。人財育成専門性向上委員会の中で唯一服務として認められている部会活動である。精度管理勉強会は年2~3回各病院持ち回りで,精度管理の実習を行っている。病院経営本部専門性向上研修は東京都保健医療公社職員も含めた研修となり,プログラム作成を担当している。これらの活動を通して,専門性の向上を目指し,人財育成に取り組んでいる。 課題としては,病院の特色上マンモグラフィを行っていない施設がある。また人事異動が5~6年で行われるため,エキスパートを育成しても職務上それを活かせない状況が存在する。部会活動はこれらの問題点を解消する手段と成り得るため,人財育成とともに能力維持や情報発信も重要な役目となる。
  • 伊藤 美香, 中村 雅美, 阿曽 真弓, 丹野 麻実子, 大澤 三和, 井坂 あずみ, 安田 光慶, 崔 昌五, 佐藤 久弥, 加藤 京一
    2017 年 26 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    本学では,乳房撮影を行っている附属病院は4施設あるが,新人教育については各施設に委ねられているため,乳房撮影の習得項目や単独撮影の開始時期については統一されていない現状であった。各施設の新人教育における共通の問題点としては「新人が単独撮影を開始する明確な基準や評価方法がないため充分な研修ができないうちに撮影をさせなければならない」という点であった。そこで多施設において同レベルの撮影や患者接遇が提供できるよう統一した新人教育方法の検討を行い,その効果について評価を行った。 まず共通のOSCE,乳房撮影の習得項目,乳房撮影マニュアル,乳房撮影患者接遇マニュアルを作成した。次に統一した習得項目に沿った指導前後でのOSCE を行ったところ最大80%の指導効果があった。また,明確な単独撮影開始基準を設けることで関連4施設の業務の統一化が可能であることが示唆された。 今後は自身を客観的に評価することを目的とした動画を撮影し振り返りを行うことをマニュアルに取り入れ,更なる指導効果の向上と統一化を図っていきたい。
第26回学術総会/ワークショップ2
経過観察症例に対する地域連携
  • 横浜市乳がん検診に対しての当院の対応
    嶋田 恭輔, 久保内 光一, 川口 正春, 荘 正幸
    2017 年 26 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    現在普及している対策型乳がん検診において,過去画像との比較読影をすることでどのような向上効果があるか検討した。 2014年1月~2015年12月に当院を受診した自治体の対策型MMG 併用乳がん検診で,C―3以上で要精査となった288例のうち精検完了の285例を対象に検討を行った。初回診察時に良悪の鑑別がつかず診断保留となったものは6ヶ月後に再検とし,変化が認められなければさらに1年後に再検とした。その結果,C―3と診断された275例中のうち癌の診断となったのはわずか7例(2.5%)のみであった。また,285例のうち216例(76%)が初回もしくは次回診察時に良性あるいは悪性と診断されたが,69例(要精検者の24%)は次回診察以降も経過観察となっており,石灰化が57例と最も多かった。石灰化が多かった原因として,所見の変化が経時的に1~2年では出にくいこともあり,長期に経過観察となることが多いことが挙げられた。こうした変化のない石灰化病変を,一次検診にて過去画像と比較し経過観察できるようになれば,乳腺外来で経過観察せず検診に戻せるようになる。その結果,検診の受診率向上にも繋がり医療費の削減も期待されると考えた。 しかし,比較読影の構築にはワークステーションの導入や患者ID の統一など問題が山積しており,今後も積極的な議論が必要であると考えられた。
  • 伊藤 吾子, 周山 理紗, 三島 英行
    2017 年 26 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    乳癌検診においては,ある一定数の良性腫瘍が発見される。精密医療機関において,細胞診,組織診等を行い,良性腫瘍と診断されたものは,一定期間以上の経過観察は不要である。これらを引き続き医療機関で経過観察することは,真に必要な患者への医療が滞る一因ともなる。しかし,これらの受診者に検診受診を勧めると,再度要精密検査となることも多く,受診者,医療機関双方の負担,不満が増す。 茨城県北部には当院を含め,精密検査のできるクリニックが2つ,病院が2つあるが,いずれも多くの良性病変の経過観察を行う余力はない。対して当地域には,超音波併用乳癌検診を行っている検診施設が複数あり,当院にて良性病変と診断し,病院での経過観察が不要と判断した場合には,以降の検診受診を勧めている。 この際,超音波の画像をプリントアウトし,余白に経過,施行した検査,診断名等を記載したものを本人に渡し,次回の検診受診時に持参するよう伝えている。これを次回検診受診時に超音波を行う技師に見せることにより,精査済みの良性病変を再度要精査としてしまうことをある程度防ぐことができる。 既知の良性病変に対しての不要な要精査を減らすためには,医療機関と検診施設が良性病変の情報共有,連携を図ることが必要である。
  • 当院および併設健診センターの取り組み
    吉田 雅行, 入駒 麻希, 荻野 和功, 小倉 廣之
    2017 年 26 巻 2 号 p. 180-188
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    乳がん検診要精査で治療を要しない受診者が検診に戻る時,同施設なら比較読影可能だが比較データがない時は同所見で再度要精査となる。受診者の負担軽減のため併設の健診施設と連携してきた。市内の乳がん検診一次・二次検診施設対象のアンケート結果も併せて報告する。1)地域連携:健診施設で精密検査を施行し,治療を要しない受診者を経過観察する。2)医師会との連携:医師会の二次読影は80%以上がソフトコピー診断である。異なる一次検診施設の画像と比較読影可能となる。3)マンモグラフィの比較読影:受診者本人が次回検診時にCD-R で過去画像を持参し,比較読影後は受診者管理とし,その後も有効活用可能にする。4)受診者教育:データ持参の意義と自己検診の重要性を説明する。理想と現実:理想は,受診者が精検・治療等の履歴の所持,追記可能な全国共通システムによる受診者と医療者の利益最大化・不利益最小化だが,実現には時間と労力と費用が必要となる。将来展望:1)医療者側の環境整備:相互に利用可能な情報提供の協議会の設置,2)受診者教育:“検診サイクル”(検診⇒精検(⇒治療)⇒経過観察⇒検診)の受診者教育,データ自己管理,自己検診啓発,3)健診施設の健診・診断センター化:健診施設で精密検査を含め針生検まで行い治療や更なる検査が必要な方を治療施設へ紹介,経過観察可能な方を健診施設で経過観察する役割分担と連携構築を目指したい。
原著
  • 宮永 美幸, 平野 祉江, 成井 一隆, 山田 顕光, 石川 孝, 遠藤 格
    2017 年 26 巻 2 号 p. 189-194
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    ステレオガイド下吸引式乳房組織生検は侵襲的な検査であり,検査時間の短縮に努める必要がある。検査技術の習得のためには穿刺ファントムを用いた穿刺実習が有用と考えるが,市販の穿刺ファントムは高価で頻回の購入は困難である。そこでわれわれは,実習用の穿刺ファントムの自作を検討した。 穿刺ファントムの素材には,作成する観点および実用性の観点から,軽量粘土およびウレタン樹脂が選択された。さらに使用感について検討し,ウレタン樹脂を採用した。ウレタン樹脂の主剤(主成分ポリエーテルポリオール)と硬化剤(主成分ジイソシアネート)の配合割合についても検討を行った。模擬石灰化の深さは,中央部,表層部,深部の3段階に意図的に配置することが可能であった。 柔らかい乳房を想定した配合割合で,3層の模擬石灰化を含むウレタン樹脂のファントム(直径7cm,高さ5cm 円柱型)を作成したところ,作成日数30日,作成費用約2,000円であった。 安価かつ容易に教育用穿刺ファントムを自作することが可能であったので報告する。
  • 川口 佳奈子, 木村 光誠, 結城 雅子, 森永 泉美, 服部 恵里香, 寺沢 理沙, 藤岡 大也, 栗栖 義賢, 岩本 充彦, 鳴海 義文 ...
    2017 年 26 巻 2 号 p. 195-199
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィ(以下MMG)のみで指摘される石灰化病変に対してはステレオガイド下吸引式乳腺生検(以下StVAB)が考慮されるが,適応の選択に苦慮することがある。今回,MMG でカテゴリー3以上に分類し乳房MRI およびSt-VAB を施行した23例を対象に,St-VAB 適応選択におけるMRI の有用性を検討した。年齢中央値は58歳(39―69歳)であった。MMG はカテゴリー3が3例(13.0%),カテゴリー4が12例(52.2%),カテゴリー5が8例(34.8%)であった。23例中St-VAB で14例に境界病変を含む悪性所見(浸潤性乳管癌1例,非浸潤癌10例,境界病変3例)がみられ,MMG の陽性適中率(PPV)は60.9%であった。MRI で23例中13例を悪性疑いと判定したが,このうち2例のSt-VAB 組織診断が良性(adenosis)であった。一方,MRI で良性と診断した10例のうちSt-VAB の組織診断で悪性所見を認めたものが3例で,いずれも境界病変であった。MRI 結果を追加した場合は感度78.6%,特異度77.8%,PPV84.6%,陰性適中率70.0%と精度の向上を認めた。MMG で精査対象となる石灰化を認めた場合,MRI で悪性所見を示唆する所見を認めない場合は乳癌の可能性が極めて低いと判断し,St-VAB の適応について再考すべきと考える。
  • 内田 賢, 久美子 堀内, 三本 麗, 大橋 仁志, 木下 智樹, 山下 晃徳, 神尾 麻紀子, 武山 浩
    2017 年 26 巻 2 号 p. 200-203
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    2014年4月~2016年3月の2年間にマンモグラフィ検診を受けた3,712人(53.1±9歳)を対象に,乳房濃度と年齢について検討した。年齢は乳房濃度と強い負の関連を示した(p<0.001)。乳房濃度は,脂肪性2.4%(89名),乳腺散在性41.6%(1,548名),不均一高濃度40.5%(1,506名),高濃度15.5%(575名)であった。<不均一高濃度と高濃度>は全体の56%を占めた。年齢別の<不均一高濃度と高濃度>の頻度は,40歳代;72.4%,50歳代;52.6%,60歳代;36.3%,70歳代;27.8%であった。40,50歳代では,特に<高濃度>の頻度が25.3%,12.9%を占め,false negative を引き起こすリスクが高い。受診者への告知と補助検査の対策が必要である。
  • 井上 謙一, 川崎 あいか, 小清水 佳和子, 山中 千草, 土井 卓子
    2017 年 26 巻 2 号 p. 204-208
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    乳癌検診は,検診を行う地域の地理的条件や読影医師数などによりその運営に幅があり,全国レベルで精度を底上げする方法の開発が待たれる。今回われわれは,マンモグラフィの読影判定を,ディープラーニングを用いて自動的に判定することでその精度を計測し,検診に応用できるか検討した。乳癌の存在が確認されているマンモグラフィ104症例を正方形の画像20枚に自動的に切り出し,反転もさせた合計2,048枚の画像に対し畳み込みニューラルネットワークを用いて判定,乳癌を含む画像かどうかを判断させ,その正診率を計測した。学習させた結果,正診率は94.9%,感度は88.5%,特異度は97.1%,陽性適中率は91.1%,陰性適中率は96.1%となった。高い正診率を誇るディープラーニングを乳癌検診に用いることで,将来乳癌検診の全国規模での精度向上や効率化に寄与する可能性があると思われた。
検診発見乳腺疾患報告
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