J-START のプライマリーエンドポイントの結果,超音波検査併用マンモグラフィ検診は感度と癌発見率が有意に上昇することが証明されたが,独立判定では特異度が低下することも明らかとなり,乳癌死亡率減少効果の証明を考慮しない場合においても,超音波検査併用乳がん検診の益と害のバランスは微妙であった。その結果を踏まえて,超音波検査併用マンモグラフィ検診を乳がん検診に導入する際には理論的に特異度低下を回避できる総合判定が強く望まれている。総合判定に期待される効果は,マンモグラフィ単独ではカテゴリー3として要精査となる境界明瞭平滑な腫瘤や局所的非対称性陰影の所見に対して超音波検査を追加することにより,その質的診断を検診の段階で行って単純嚢胞や乳腺の重なりによるマンモグラフィ偽陽性をなくし,その乳がん検診の特異度を向上させることにある。つまり,総合判定とは従来のマンモグラフィ検診要精査者に対する精査の一過程を検診の場で行うことを意味する。よって,総合判定は乳腺診療の基礎を備えた医師が行うことが望ましい。また,総合判定の検診システムやレポート・精度管理も複雑となるので,それに対応できるインフラ整備も重要となる。そして,十分な精度管理とシステムを備えた超音波検査併用マンモグラフィ検診の総合判定が施行されるのであれば,乳がん検診要精査者に対する乳腺外来診療の効率化に繋がることが期待できる。しかし,検診なので効率よく総合判定を行うことが肝要で,超音波検査施行前にマンモグラフィの所見を確認し,マンモグラフィ所見の質的診断の必要性有無を理解してから超音波検査に望むのが理想的である。また,読影する際もマンモグラフィの所見に超音波検査の所見を補助的に加味して総合判定することが基本であり重要である。乳がん検診における超音波検査の役割は,乳癌死亡率減少効果の証明されたマンモグラフィ検診を補助するモダリティであることを忘れてはならない。
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