日本乳癌検診学会誌
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27 巻, 2 号
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第26回学術総会/シンポジウム2
画像診断医,病理医の立場からみた検診のジレンマ
  • 宇佐美 伸, 大貫 幸二, 渡辺 道雄, 梅邑 明子, 高木 まゆ
    2018 年 27 巻 2 号 p. 81-85
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    BI-RADS では複数の画像を総合的に判断してカテゴリーを決定しており,その後に行うべき方針が示されている.一方,日本で広く用いられている5段階のカテゴリー分類は検診用であり,悪性の可能性を予測しているが最終的には精密検査の要否を示しているにすぎない.このカテゴリー分類を精密検査の場面でも無自覚に用いると,そこに経過観察という推奨がないために不必要な精密検査が行われる可能性がある.本検討では経過観察が適切と思われるグループを明らかにすることを目的とし,検診で石灰化カテゴリー3と判定され当科で精査を行った133例の転帰をretrospective に検討した。初診時,超音波検査でカテゴリー1,2だった109例は,MRI やステレオガイド下吸引式針生検は行わず経過観察としたところ,6症例(5%)が乳癌と診断された。カテゴリー3の12例では3例(25%),カテゴリー4以上の12例では12例(100%)が乳癌であった.また,乳癌と診断された全例で転移・再発・死亡例はなく予後は良好であった。分泌型と考えられるamorphous な石灰化(カテゴリー3)については,乳癌だとしても悪性度の低い非コメド型か,コメド型の極初期の可能性が高く,US でカテゴリー2以下の場合,経過観察という時間軸を使うことによって,比較的安全に不要な精密検査や過剰診断を回避できると考えられた。
第27回学術総会/シンポジウム4
  • 大貫 幸二, 植松 孝悦, 鯨岡 結賀, 寺本 勝寛, 東野 英利子
    2018 年 27 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    高濃度乳房問題を受けて,対策型検診にも超音波検査の導入が検討されている。マンモグラフィと超音波検査を併用した乳がん検診を行う場合,独立判定方式では要精検率が高くなり検診の不利益が増加してしまうので,それを低減させるために総合判定方式が提唱されている。 総合判定を行う場合には同時併用方式を推奨しているが,同時併用方式を運用する際には解決すべきいくつかの障壁がある。また,マンモグラフィでは病変の存在が不確かな「局所的非対称性陰影」や「構築の乱れ疑い」における超音波検査の使い方には検討すべき課題が多い。精度の高い総合判定を行うためには精度の高い超音波検査が必須であるが,多くの労力と費用が必要である。精度の高い検診施設を認定し,検診依頼団体や受診者に情報を提供するシステムが求められる。 現時点では,「マンモグラフィと超音波検査の総合判定」が日本で乳がん診療に携わっている医療従事者に広く浸透しているとは言い難い。今後も,総合判定による併用検診を日本全国で高い精度で行っている状況を作りだせるように,総合判定の普及と精度向上に関する活動が必要であると考えている。
  • 同時併用方式と分離併用方式による違いの検討
    大岩 幹直, 阿部 聡子, 岡南 裕子, 加藤 直人, 箕畑 順也, 宮城 由美, 遠藤 登喜子, 森田 孝子, 須田 波子, 大貫 幸二
    2018 年 27 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    局所的非対称性陰影(FAD)は,境界明瞭平滑な腫瘤とともにMG 検診で要精検率を高める二大要因であり,要精検におけるFAD の頻度は19~46%と報告されている。さらにFAD はポジショニングによるアーチファクトや乳腺の重なりによる偽所見が多く陽性適中率は0~7.5%と低い。要精検率を減らすためにはFAD の偽所見を精検不要にできるかが鍵である。 『マンモグラフィと超音波検査の総合判定マニュアル』では,FAD の部位が特定できればUS 優先とされている。またFAD が十分大きな陰影の場合,病変が存在すればUS では確実に検出されるであろうと判断しC1とすることは許容されると述べられている。 われわれは検診要精検であった94例のFAD を検討して,一続きの乳腺内に存在するFAD が真の病変である場合の長径は平均23mm,US の長径はその83%であることを2015年本会誌で報告した。一方FAD の47%を占める飛び地状のFAD は平均12mm,US はその84%と小病変が多い。US で所見がない場合に,分離併用方式でも前者の多くをC1にできることが期待されるが,後者は周囲を脂肪織に囲まれた,多くが乳房の辺縁部の所見であることを考えると,分離併用でC1にすることは難しい。 同時併用であれば,MG とUS 検査で見ている部位が一致しているという信頼度が上がる。また,MG 所見に対応する部位をより注意を払って観察することができるので,その部位を走査していない可能性を減らすことができ,US 検査の検出力を高めることも期待される。
  • 坂 佳奈子, 阿部 聡子, 鯨岡 結賀, 白井 秀明, 小柳 敬子, 梶原 崇恵
    2018 年 27 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィ(MG)と乳房超音波検査(US)を併用する検診を行う際には両者を別々に判定したのちに総合的に判断する「総合判定方式」が推奨されている。 総合判定には同時併用方式(MG を参照しUS を実施する方法)と分離併用方式(MG を参照せずUSする方法)がある。同時併用方式の一番の利点はMG で腫瘤や局所的非対称性陰影(FAD)の疑いの際にその部位をある程度特定し,重点的にみることができることである。 しかしながら問題点も多い。検診現場では医師のMG 読影を待たずしてUS を行うことが多い。診療放射線技師であれば,ある程度MG の知識があるが,臨床検査技師ではどうであろうか。また大規模施設では全受診者に対して必ずMG の後でUS という順番を規定することも厳しい。さらにマンモグラフィ搭載バスによる出張検診では,アナログMG を搭載している地域が多く,またデジタルであっても出張先でMG 画像を確認すること困難である。 われわれの施設では分離併用方式で実施しているが,大きな腫瘤やFAD は部位を考慮してUS 画像にて一致した部位に同じ大きさ,形状の所見があれば医師の判定の段階で精査不要にできることも多い。非常に小さい腫瘤やFAD の所見があり,検診US で所見を指摘できないときには,精査にまわしても要精検率はそれほど上昇しない。 小規模施設や診療放射線技師が超音波を実施する施設であれば同時併用検診を推奨したいが,それ以外では分離併用方式も一つの重要な選択肢であると考える。
  • 広利 浩一, 大貫 幸二, 東野 英利子, 寺本 勝寛, 加藤 直人, 野間 翠, 阿部 聡子, 植松 孝悦, 坂 佳奈子, 箕畑 順也, ...
    2018 年 27 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    日本乳癌検診学会総合判定委員会では,総合判定に関する理解と適切な実施を目的として主に読影医師を対象とした講習会を企画し,2015年11月より4回の講習会を開催した。受講者は363名であり,このうち医師は289名であった。今回,受講時に医師を対象として行っている総合判定および講習会に関する,アンケート調査を集計し,解析を行った。 受講者の大多数は検診に従事し,75%で超音波検診に関与していた。また,その2/3ですでに総合判定を行っていた。総合判定の有用性に関して大変役に立つと思われる53%,役に立つと思われる40%,あまり役に立つとは思えない2%,未記入5%であり,多くの医師が,総合判定が有用であると判断していた。講習会の講義内容の理解度については,十分理解できた42%,まあ理解できた45%,あまり理解できなかった3%であり,本講習会にて,理解がより深まっていた。超音波検査技師対象の講習会に関して,推進に向け早めに積極的に開催すべきである66%,時期を見て開催するのが良い26%,その必要性は感じてはいない3%,わからない5%。また,超音波検査技師について。マンモグラフィの所見を読影できるレベルになり,超音波検診を行うべきかという設問に対して,そう思う50%,そう思わない7%,それは理想であるが現実的には難しい41%,わからない2%と回答があり,マンモグラフィの所見を読影できるレベルになることを期待しており,技師向けの総合判定講習会の開催を希望していることが明らかとなった。
  • 白井 秀明, 小柳 敬子, 梶原 崇恵, 広利 浩一, 大貫 幸二
    2018 年 27 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィ(以下MG)と超音波検査(以下US)を併用して行う乳がん検診において特異度改善のために考えられたのが総合判定であるが,実際に検査に携わる技師がどの程度これらの方法を認識しているのかは不明であった。そこで,われわれ総合判定委員会はその実態を知るべく日本超音波検査学会(以下JSS)の協力を得て,アンケート調査を行った。調査対象はJSS のホームページに掲載されたアンケートに回答をして頂いた学会会員である。方法は総合判定委員会によって作成された12項目の質問の回答をもとに,総合判定に対する認知度や自身の施設で行われている判定方式の現状と総合判定に対する考えについて調べ,判定法の現状と今後総合判定を推進してゆくためには何が必要なのかについて検討した。 その結果として,今回アンケートに回答頂いた239名は総合判定について理解しており,その導入にも前向きな意見が多かった。ただし,これはJSS 会員全体の約1%に過ぎず,総合判定自体への関心の低さが際立った結果となってしまった。以上より,総合判定推進には,まずそれ自体の啓発が必要と考えた。また今後は,超音波施行者のためのMG 講習会の開催や判定医,MG の撮影を担当する放射線技師などとの一層の協力体制の強化が必要であると考えた。
  • 植松 孝悦, 大岩 幹直, 岡南 裕子, 東野 英利子, 野間 翠, 宮城 由美
    2018 年 27 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    J-START のプライマリーエンドポイントの結果,超音波検査併用マンモグラフィ検診は感度と癌発見率が有意に上昇することが証明されたが,独立判定では特異度が低下することも明らかとなり,乳癌死亡率減少効果の証明を考慮しない場合においても,超音波検査併用乳がん検診の益と害のバランスは微妙であった。その結果を踏まえて,超音波検査併用マンモグラフィ検診を乳がん検診に導入する際には理論的に特異度低下を回避できる総合判定が強く望まれている。総合判定に期待される効果は,マンモグラフィ単独ではカテゴリー3として要精査となる境界明瞭平滑な腫瘤や局所的非対称性陰影の所見に対して超音波検査を追加することにより,その質的診断を検診の段階で行って単純嚢胞や乳腺の重なりによるマンモグラフィ偽陽性をなくし,その乳がん検診の特異度を向上させることにある。つまり,総合判定とは従来のマンモグラフィ検診要精査者に対する精査の一過程を検診の場で行うことを意味する。よって,総合判定は乳腺診療の基礎を備えた医師が行うことが望ましい。また,総合判定の検診システムやレポート・精度管理も複雑となるので,それに対応できるインフラ整備も重要となる。そして,十分な精度管理とシステムを備えた超音波検査併用マンモグラフィ検診の総合判定が施行されるのであれば,乳がん検診要精査者に対する乳腺外来診療の効率化に繋がることが期待できる。しかし,検診なので効率よく総合判定を行うことが肝要で,超音波検査施行前にマンモグラフィの所見を確認し,マンモグラフィ所見の質的診断の必要性有無を理解してから超音波検査に望むのが理想的である。また,読影する際もマンモグラフィの所見に超音波検査の所見を補助的に加味して総合判定することが基本であり重要である。乳がん検診における超音波検査の役割は,乳癌死亡率減少効果の証明されたマンモグラフィ検診を補助するモダリティであることを忘れてはならない。
第27回学術総会/ワークショップ5
  • 鈴木 直
    2018 年 27 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    2004年にベルギーのDonnez 博士らによる,若年ホジキン病患者に対する卵巣組織凍結・移植による生児獲得の報告によって,2006年以降海外ではあらためて若年がん患者に対する妊孕性温存の診療が注目されている。2006年に米国臨床腫瘍学会(ASCO)は米国生殖医学会(ASRM)との共同で,がん患者における妊孕性温存に関する世界初のガイドラインを発表し(2018年に改訂),また同年米国のWoodruff 博士らによって全米にわたるがん・生殖医療連携ネットワークとなるOncofertility Consortium が設立され,またスイスのvon Wolff は博士らによってドイツ語圏を中心とするネットワークであるFertiPROTEKT が設立された。さらに2007年には,Donnez 博士らによってISFP(国際妊孕性温存学会)が設立され,2年に1回学術集会が開催され,世界中から本領域の研究者が集まり熱い議論が交わされている。本邦では,2014年4月に日本産科婦人科学会は「医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取・凍結・保存に関する見解」を示しており(2016年に改訂),2017年には『小児,思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2017年度版』が日本癌治療学会から刊行された。本邦においてもがん・生殖医療は新たな一分野として確立しつつある。
  • 清水 千佳子
    2018 年 27 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    がん・生殖に関わる診療ガイドラインの認知が向上し,乳癌患者の診療の現場で,将来の妊娠・出産の可能性を話し合われるようになってきた。がん薬物療法前の妊孕性温存に焦点をあたりがちであるが,最も大切なのは,患者が,自分のおかれた状況をふまえ,自分にとって納得のいく選択ができることであり,選択そのものよりもプロセスとしての継続的な支援が重要である。本稿では,がん専門病院と院外の医療機関とのがん・生殖連携システムを構築した自身の体験をふまえて,乳癌患者の妊孕性に関する支援のあり方について論じる。がん治療医,生殖医療医だけでなく,多領域,多職種の連携と対話を促進することが,よりよい支援につながると考えられ,施設内だけでなく地域でのネットワークを育てることが求められている。
  • 滋賀がん・生殖医療ネットワークについて
    木村 文則
    2018 年 27 巻 2 号 p. 135-138
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    滋賀県内に滋賀・がん生殖医療ネットワークを構築した。本ネットワークは,産婦人科,泌尿器科を中心とする診療科との連携で,その診療科を中心として,がん・生殖医療の情報を拡散していくものである。また,設立は非常に容易であることから都市部においても活用できるものと考えている。また,本ネットワークは地方自治体である滋賀県と協力し,がん診療従事者に対する啓発と日本国内初となるがん患者の妊孕性温存に対する助成システムを構築している。
第27回学術総会/教育講演7
  • 高松 潔, 橋本 志歩, 杉山 重里, 小川 真里子
    2018 年 27 巻 2 号 p. 139-147
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    ホルモン補充療法(HRT)は中高年女性のQOL の維持・向上に欠かすことのできないツールであり,よく知られている更年期障害や脂質異常症,骨粗鬆症のみならず,エビデンスレベルを問わなければ,閉経後に惹起されるほとんどの愁訴に有効であると考えられている。従来より懸念されていた乳癌リスクについても,肥満やアルコール摂取といった生活習慣要因による上昇と同等かそれよりも低いことが明らかになっており,乳癌リスクに及ぼすHRT の影響は小さいことに国際的なコンセンサスが得られている。 一方,HRT はマンモグラフィ所見に影響を与えることが知られており,レジメンによってその程度は異なるものの,乳腺濃度を上昇させる。このため異常所見率やrecall 率が上昇することが報告されている。ただし,HRT による乳腺濃度上昇が乳癌リスクと関連しているかどうかにはいまだ議論がある。 HRT 施行時に推奨される乳癌検診についても,一般女性同様,国や地域によって異なっている。新たなモダリティの導入などHRT 施行時の適切な乳癌検診のあり方についてはさらに議論が必要であるが,現状ではホルモン補充療法ガイドラインに従うことが望ましいと考えられる。
第7回全国集計結果報告――2014年度
原著
  • 岩本 奈織子, 有賀 智之, 大西 舞, 後藤 理紗, 堀口 和美, 本田 弥生, 宮本 博美, 堀口 慎一郎
    2018 年 27 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィのカテゴリー3(C-3)石灰化症例におけるステレオガイド下吸引式組織生検(ST-VAB)の結果を検討する。2005年1月から2017年4月に当院で施行したST-VAB 症例のうちC-3の石灰化を有する287症例289病変を後方視的に検討した。 ST-VAB 結果は,良性194例,悪性69例(浸潤癌11例,非浸潤癌58例),良悪性鑑別困難26例であった。良性と悪性では石灰化の形状と分布に差は認められなかった。悪性では55歳以上の割合が高く(χ 二乗検定p=0.02),乳房造影MRI 検査(以下MRI)で造影域を認めた症例が多かった(χ 二乗検定p=0.0001)。ST-VAB で非浸潤癌の診断で手術を施行した55例のうち,術後病理診断で浸潤部を認めた症例は13例(24%)であった。51例でセンチネルリンパ節生検が行われ,すべて転移陰性であった。 55歳以上でMRI 検査において造影所見を有する症例ではST-VAB の適応と考えられる。一方,今回の検討結果から良性が大部分を占めること,悪性であっても非浸潤癌が80%であることが明らかとなった。閉経前でMRI でも造影所見を認めない症例では,即時にST-VAB を行わず,経過観察でも妥当性があると思われた。
  • 叶 亮浩
    2018 年 27 巻 2 号 p. 167-172
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    Digital breast tomosynthesis(DBT)の被曝線量評価について標準的な乳房構成を想定した報告は多いが,異なる乳房構成を考慮した報告は少ない。そこで今回,2D マンモグラフィに対するDBT の被曝線量比(DBT/2D ratio)を乳房厚や乳腺密度といった乳房構成と撮影法の違いを考慮して検討した。その結果,DBT/2D ratioは乳房構成と撮影法に依り1~5倍程度変動したが,乳房厚が厚く,乳腺密度が濃いほど低い値を示し,DBTの振り角が大きいほど高い値を示す傾向が見られた。今後,画質評価を含め,克服すべき課題はあるが,被曝の観点からはdense breast への有用性が示唆された。
  • 竹田 奈保子, 渕上 ひろみ, 井上 裕子, 佐藤 一彦
    2018 年 27 巻 2 号 p. 173-177
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    乳房温存手術の適応となる比較的小腫瘤の乳癌について,乳房濃度別にマンモグラフィ(以下MMG)による読影所見と異常所見検出率を比較し,併せて非乳癌症例を用いて偽陽性率を検討した。2015年1月から2016年10月までに腫瘤形成性乳癌と診断され,乳房温存術を施行した134症例と,同時期の非乳癌1,036症例を対象とした。各々に対して,背景の乳房濃度を脂肪性および乳腺散在の非高濃度群と不均一高濃度および高濃度の高濃度群に分け,各群の年齢,腫瘤径,読影所見内容を比較した。乳癌症例の乳房濃度は非高濃度群で46症例,高濃度群で88症例であった。年齢中央値は非高濃度群で65歳(36~91歳),高濃度群で53歳(37~76歳)と高濃度群において有意に若年であった(p<0.05)。病理学的腫瘤径の中央値は非高濃度群で15mm,高濃度群で15mm と差を認めなかった(p=0.23)。カテゴリー3以上の異常所見は,非高濃度群で44症例(95.7%),高濃度群で76症例(84.4%)と有意差は認められなかったが,MMG 所見内容においては,腫瘤が36症例(78.3%)と36症例(40.9%),構築の乱れは4症例(8.7%)と24症例(27.3%)と有意な差が認められた(p<0.05)。非乳癌症例における偽陽性例は,非高濃度群の17症例(5.6%)に対して高濃度群で89症例(12.2%)と有意に多かった(p<0.05)。以上より,高濃度乳房では腫瘤の感度・特異度とも低下する傾向が認められ,またMMG 読影に際し構築の乱れに注意を払う必要があると考えられた。
  • 川崎 あいか, 小清水 佳和子, 有泉 千草, 井上 謙一, 荒井 学, 合田 杏子, 長島 美貴, 土井 卓子
    2018 年 27 巻 2 号 p. 179-186
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    乳癌検診におけるマンモグラフィ(MG)と超音波検査(US)を用いた総合判定方式は,独立判定方式と比べて特異度の上昇が期待できる。総合判定を臨床の場で実践していくには,MG で描出した病変がUS ではどこに該当するかを正しく推定することが重要である。MG で描出した病変の位置を推定する方法は,2015年に発行された『マンモグラフィと超音波検査の総合判定マニュアル』に掲載されているが,臨床の場でより手軽に簡便に位置を推定するための新しいツールを考案した。 このツールは,ベース盤に鉄粉入りシートを使用し,マグネットを使用して推定位置を表示する。推定の手順は,CC,MLO ともにFPD(CR・アナログではカセッテホルダ)の傾きを基軸とし,乳頭から乳房辺縁までを3等分にした比率をもとに基軸上の該当位置に印をつけ,各基軸の印から垂線を引く。垂線が交差した場所がMG で描出した病変の推定位置となる。2014年1月から2015年7月の間に両検査を施行した100症例について,このツールを用いてMG 画像から推定した病変の位置とUS で検出した病変位置の方向および距離の誤差を検討した。方向誤差は15°以下の症例が91%,距離誤差を認めなかった症例が96%であり,他の方法と遜色ない結果であった。 このツールは安価に作成でき,複数病変にも対応可能である。MG 画像の病変の位置をそのまま各軸に投影する手法を用いた位置情報支援ツールは,簡便に自動的に時計表記に変換でき,位置推定時の労力軽減効果が期待できる。
  • 使用ファントムや測定方法による違い
    北岡 ひとみ, 川島 博子
    2018 年 27 巻 2 号 p. 187-194
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィにおけるcontrast to noise ratio(CNR)測定に使用するファントムは,International Electrotechnical Commission(IEC)規格,European Reference Organization for Quality Assured Breast Screening and Diagnostic Services(EUREF)規格や,DMQC ファントム,1ショットファントムなど,複数存在する。今回,使用ファントムや測定法による違いを比較,検討した。 Computed radiography(CR)装置にてCNR,コントラスト,Signal-to-noise ratio(SNR)を測定した。測定位置を検討するため,EUREF 規格のファントムをそれぞれの位置に配置し測定を行った。同一位置でのファントム材質の違いも検討した。 1ショットソフト,DMQC 測定ではEUREF 規格とほぼ同等の結果が得られた。1ショットのImageJ での測定ではヒール効果の影響によりSNR が減少しCNR も低くなった。1ショットソフトは補正が加えられているためと思われた。測定位置変化によるCNRは,左右の画素値変化によりコントラストが増加し,IEC,DMQC 測定位置に比べEUREFのCNR が増加した。増感紙・フィルムでは左右差が検出されず,CR 撮影のみに画素値の左右差が検出され,CR 読み取り装置の特性によるものと考えられた。同一測定位置で各ファントムのCNR は有意差がみられなかった。CNR 測定において同一の測定方法を用いることが好ましいが,やむをえずファントムを交換して測定する際は,このような違いを考慮する必要がある。
  • 篠原 範充
    2018 年 27 巻 2 号 p. 195-201
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,管理用ファントム静止画,臨床静止画,臨床動画を超音波モニタに表示させて,その視認性を確認し,超音波モニタを超高コントラスト比モニタ,GSDF で運用する可能性を検討した。本実験では市販の乳房超音波付属モニタ(表示関数γ:モニタA),超高コントラスト比モニタ(表示関数γ:モニタB),超高コントラスト比モニタ(表示関数GSDF:モニタC)を使用した。予備実験として,画像診断に習熟した医師46名を対象として行った。評価者は,モニタの正面に座り,3台のモニタに管理用ファントム静止画,臨床静止画,臨床動画を順に表示させた。それぞれの静止画および動画において,より診断しやすいと感じたものを二肢強制選択法にて評価した。管理用ファントム静止画は,評価対象が明確であるため,超高コントラスト比モニタを適応できる可能性が示唆されたが,臨床静止画および動画は普段環境に依存した結果となった。また,GSDF については輝度不足であると指摘があった。これら予備実験を基に階調や輝度などの問題点を改善し,12名により本実験を行った。その結果,乳房超音波付属モニタとして,超高コントラスト比モニタおよびGSDF を適用できる可能性が示唆された。
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