日本乳癌検診学会誌
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4 巻, 3 号
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  • 門澤 秀一, 荒木 力
    1995 年 4 巻 3 号 p. 185-196
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    外部磁場中では, 水素原子核のスピンの磁化の向きが揃い, 巨視的磁化が外部磁場の方向に発生する。適当な電磁波を照射すると, 巨視的磁化は90°傾き, 外部磁場の方向に直交する横断面上に倒れる。その後巨視的磁化は横断面上を回転するが, スピンの磁化がばらけるのに伴い, その大きさは小さくなり, やがて消失する。この過程を横緩和という。スピンの磁化が横断面上から戻り始めるのに伴い, いったん消失した巨視的磁化は外部磁場の方向に増大していき, やがてもとの大きさに戻る。この過程を縦緩和という。横緩和の速さの指標をT2, 縦緩和のそれをT1といい, 各組織は特有の値をもつ。実際には外部磁場の不均一性によりスピンの磁化のばらけ方が速まり, 巨視的磁化は横断面上で横緩和による場合よりも速く消失してしまう。そこで適当な電磁波を照射してさらに180°倒してやると, 外部磁場の不均一性による影響がキャンセルされ, スピンの磁化が揃うため, 巨視的磁化が短時間ではあるが再び出現する。この方法をスピンエコー法と呼ぶ。出現した磁化は外部磁場の方向を軸として回転しているため, コイルに電磁誘導によりエコー信号を誘導する。MR画像はエコー信号強度の強い組織を白く, 弱い組織を黒く表示している。スピンエコー法で90°倒してからエコー信号を得るまでの時間をTE, 90°倒してから次に90°倒すまでの時間をTRという。TEとTRを長く設定して撮影するとT2強調画像が, TEとTRを短く設定するとT1強調画像が得られる。
  • 関 恒明, 吉野 綾子, 蜂屋 順一, 福島 久喜, 内ケ崎 新也
    1995 年 4 巻 3 号 p. 197-203
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    1970年代後半に入ってから, 乳腺疾患に対しても応用され始めたMRIはMRI用造影剤 (Gd-DTPA) と高速撮像法を組み合わせたdynamic MRIの実現により, 病変の検出のみならず質的な診断能をも向上させた。最近の乳癌に対するMRIの診断成績をみると, sensitivityが100%との報告もあり, その完成度の高さを思わせる一方で, specificityに関しては37%ときわめて低いものから97%と高い報告もあり, 成績に大きな幅がある。このようにspecificityに大きな違いが生じる原因としては, 診断基準が定まっていないこと, sensitivityの向上に伴い乳癌とまぎらわしい良性腫瘤も多く検出されるようになったことなどが挙げられ, 診断基準の早期確立が望まれる。現在, MRIは乳腺腫瘤における良・悪性判別のための補助検査として, あるいは乳癌症例に対する術前検査に主として活用されているが, 乳癌治療の進歩に伴って流動していくものと考えられる。今後の課題としては, 癌の早期発見と治療を達成するためにspecificityの改善が挙げられ, MRIでのみ検出可能な腫瘤に対して将来的にはMRガイド下生検の必要性が高まってくるものと思われる。
  • 福田 護, 高原 太郎, 清水 要, 有村 俊寛, 太田 智彦, 中島 康雄, 山口 晋
    1995 年 4 巻 3 号 p. 205-212
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    最近MR-マンモグラフィ (MRM) の有用性が再評価されており, 当院でも積極的に試みている。MRMの撮像は矢状断および胸骨に平行な冠状断の斜位のT1強調画像 (スピンエコー法, SE法) で行い, 腫瘍の拡がりだけでなく, 腋窩リンパ節, 胸骨傍リンパ節の情報を得ている。MRMには乳腺全体の検査ができるwhole breast studyと既知の腫瘍に絞って検査するlocalized dynamic studyがあるが, この2つの方法を同時に行うことが困難であるため, key hole imaging法というユニークな方法を用いることにより, 前者に後者の要素をある程度付加して, 両立することに成功している。撮影は腹臥位で, 自作した胸壁固定台を用い, 3D-spoiled gradient echo (T1 FFE) 法によって高い空間分解能と優れたT1コントラストを得ている。さらに, SPIR法 (脂肪抑制法), MTC, Gd-DPTA造影により, さらに優れたコントラストを得ている。矢状断像は造影前, 造影後 (early), 造影後 (delay), およびサブトラクション (early, delay) の5種類の画像を作成し, これに冠状断像 (造影後) を加え, 全部で6種類の画像で検討している。また, 手術方法決定に役立たせる目的で, これらの最大値投影法 (MIP) の画像も作成している。以上の方法により, 良悪性の診断, 腫瘍の進展範囲の判定, 多発腫瘍の診断などを行い, 乳房温存療法の適応と切除範囲の決定, 乳房温存療法後の局所再発の診断, 進行乳癌の術前化学療法の有効性の判定などに有効な結果を得ている。しかし背景乳腺が豊富な小葉や著明な腺症を含んでいる場合, 造影しても乳癌組織と乳腺組織の境界が不明瞭であることがあり, 今後の課題である。
  • 北田 正博, 鮫島 夏樹, 境 晋子, 黒蕨 邦雄, 岩淵 修司, 久保 良彦
    1995 年 4 巻 3 号 p. 213-218
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    乳癌集団検診におけるマンモグラフィの正診度を検討するため, 旭川がん検診センターで発見された乳癌267例のマンモグラフィ所見を retrospectiveに解析した。われわれは1次検診の段階で, 視触診とその所見をもとにマンモグラフィ, 超音波検査, 針生検を施行している。マンモグラフィ上, 癌を確診できた陽性例は172例 (64.4%), 癌を疑う所見を得た偽陽性例は58例 (21.7%), 陰性例は37例 (13.9%) であった。50歳以下の症例は有意に陽性率が低く (p<0.05), 腫瘤最大径が20mm 以下の群も陽性率が低い傾向にあった。また, 偽陽性所見は正常または良性疾患例にも認め, 癌に特異的な所見ではなかった。現行のマンモグラフィの精度では, マンモグラフィのみで1次検診を行うとすると癌を見逃す危険性があり, 検診は視触診を行い, 所見を認めた例に対し, 必要に応じてマンモグラフィ, 超音波検査, 生検を行うべきと考えられた。
  • 小池 綏男, 寺井 直樹, 若林 透, 土屋 眞一
    1995 年 4 巻 3 号 p. 219-225
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    昭和58年10月から平成5年12月までに長野県がん検診センターの乳腺外来で乳癌と診断し, 他施設に紹介して手術が行われ, 病理組織学的に乳癌が確認された症例中, 最終診察時にマンモグラフィ (MMG) と超音波検査 (US) を施行した448例を対象とした。両検査はI (異常なし) からV (悪性確定) までの間を5段階に分けた判定基準を用いて診断し, その診断能を臨床的および病理組織学的な面から比較検討した。さらに集検に導入すべき補助診断法に関しても考察を加えた。
    1) USの悪性 (V・IV・IIIb) 診断率は71.9%とMMG の60.9%より有意に高かった。
    2) 触診で乳癌を疑った症例の悪性診断率はUSでは83.3%とMMG の73.7%より有意に高かった。乳腺症と診断した症例の悪性診断率もUSの方がMMGより高かった。
    3) 触診と組み合わせた誤陰性率はMMGの方がUSより高い傾向がみられた。
    4) 腫瘤を触知しない症例ではMMGの方が悪性診断率が高い傾向がみられたが, 5.0 cm以下の腫瘤を触知した症例ではUSの方が悪性診断率が高かった。
    5) 癌型の割面肉眼分類, 癌浸潤の波及程度, 組織型および肥満度からも検討した。
    以上の結果, USの方がMMGより診断能が高い傾向がみられた。したがって, 集検に導入するべき補助診断法の選考に当たってはUSも考慮すべきであると考える。
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