日本乳癌検診学会誌
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7 巻, 2 号
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  • 鯉淵 幸生, 飯野 佑一, 横江 隆夫, 武井 寛幸, 前村 道生, 堀口 淳, 長澤 雅裕, 堀井 吉雄, 長岡 弘, 松本 広志, 二宮 ...
    1998 年 7 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    乳癌集団検診 (集検) 受診者の変化と発見乳癌の特徴を比較するために, 1980-1984年 (A群;85例), 1985-1989年 (B群;137例), 1990-1994年 (C群;106例) の期間の繰返し受診率および集検発見乳癌患者の自覚症状 (腫瘤等) 保有率, 自己検診率等を比較した。また, これらと1980-1994年の外来乳癌 (D群;588例) との病期や予後についても比較した。全集検受診者中の繰返し受診者率は各年代毎に (以下同様) 41, 71, 87%と増加し, 乳癌発見率は0.10, 0.07, 0.05%と減少した。集検乳癌患者の自覚症状保有率は55, 41, 33%と減少し, 自己検診率は13, 28, 48%と増加した。最大腫瘤径はA, B, C, D群の順に (以下同順) 2.8, 2.2, 2.3, 3.3cm, リンパ節転移率は40, 25, 30, 40%で, A, D群に進行癌が多かった。健存率はD群に比べ, B, C群が良かった。初回受診での癌発見患者の特徴をA, B, C群で比べると, 自覚症状保有率は60, 41, 52%で, それらの患者の腫瘤径は3.3, 2.5, 3.1cmで, 腫瘤自覚が集検受診の動機となる場合が近年でも少なくないことが示唆された。
    [結語] 当初に比較して, 早期例が増加したが, 近年の発見乳癌の平均腫瘤径には差がない。腫瘤自覚が集検受診の動機になる場合も見られ, 腫瘤自覚の際には即座に医療機関を受診するよう啓蒙が必要である。
  • 上田 泰章, 稲葉 征四郎, 小道 広隆, 中田 雅支, 伊藤 和弘, 池添 清彦, 牛込 秀隆
    1998 年 7 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    視・触診法による乳癌検診からマンモグラフィ併用乳癌検診への移行期である現在, マンモグラフィ併用乳癌検診開始までは視・触診による乳癌検診を継続, 実施し, その効果を追及することが必要である。第一線の乳癌臨床医は検診担当医としての経験を応用し, 病院施設内にて視・触診法による乳癌検診を定期的, 継続的に行う必要がある。院内の医療器械の有効利用, 病院職員の応援, 経費の削減などの結果となり, 病院の経営に貢献できる。病院施設内にて定期的に実施することは, 奈良県での乳癌検診方法 (個別検診と集団検診の併用) と奈良市の地域住民のニーズと合致する。
    視・触診法による乳癌検診はマンモグラフィ併用の乳癌検診に比し, より早期の乳癌発見と発見率では見劣りがするが, 外来 (偶然) 乳癌よりT1乳癌は多い。したがって地或住民に乳癌検診を継続的, 定期的に行っていることをPRし, 第一線の乳癌臨床医は積極的に病院施設内で乳癌検診を行うべきである。奈良県北部での乳癌検診担当医の長期間の経験の結果, 1992年 (平成4年) 国立奈良病院での検診初年には5,496人の受診者があった。国立奈良病院での乳癌例は91年までは年間90例以下であったが, 施設での乳癌検診実施後は年間108-120例と乳癌例の増加となり, 結果的に医療器械の有効利用に結びつき, 病院の収入増加となった。平成4年-8年までの5年間に延べ28,671人の受診者があり, 初回受診者は1,300人より659人と半減したが, 要精検者は再受診者の増加により減少した。乳癌95人を発見し, 乳癌発見率は0.33%と高率であった。精検受診率100%, T1乳癌発見率53.7%, QOLでも乳房温存療法率は92年の40%から96年の61%へと増加した。とくに繰返し受診者1~1.5年以内例のT1乳癌発見率は84.3%と良好であった。
  • 川上 義弘
    1998 年 7 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    千葉県では, 平成2年以降女性のがん罹患率 (年齢調整・訂正) で乳癌が第1位となり (がん登録事業報告, 平成4年統計値, 乳 : 1,136人, 胃 : 942人, 子宮 : 524人), しかも増加を続けている。また乳癌死亡率も増加している (人口10万対死亡率 : 平成元年8.2が平成6年12.1に漸増) 。これらのことは検診事業が現状では十分に機能していないことを示している。千葉県対がん協会では, 従来の触診法によって見逃されてきた癌の早期発見を目的としてMMG検診車を導入した。この1年間に3,948人を試験実施し, 10例の乳癌 (内9例が触診では非触知) が発見された (要精検率 : 6.9%, 発見率 : 0.25%) 。MMG検診は独自事業であるため経費や運用面でたいへん困難であるが, 受診者の反響は良好であった。
  • 植木 浜一, 田枝 督教, 角田 博子, 東野 英利, 村上 穆
    1998 年 7 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    茨城県においては, 平成6年度よりマンモグラフィ検診を乳癌検診に導入した。平成6年度はモデル事業として, 平成7年度からは事業化され, これを希望する17市町村で出張検診の形で行われた。平成7年度実績は, 視触診のみの受診者も含めた総受診者数31,813名で, 3,990名でマンモグラフィ併用検診が行われた。マンモグラフィ検診のみの要精検率は3.9%であり, 癌発見率は0.28%, 早期癌比率は72.7%であった。平成8年度実績は, 総受診者数は32,273名で, 5,645名にマンモグラフィ併用検診が行われた。要精検率は3.0%であり, 癌発見率は0.23%で, 早期癌比率は69.2%であった。視触診検診の受診者が横ばいなのに対して, マンモグラフィ検診の受診者は増加し, 検診精度も向上していると思われた。
    しかし, 茨城県において癌登録による乳癌の年代別罹患率は40歳代が最も高い。さらに年代別の受診者でみても40歳代の受診者が最も多いので, 現在の乳癌検診のシステムである視触診のみの検診では, 要精検率5.3%で癌発見率0.05%の最も精度の低い検診を受けることになり, 大きな問題である。この年代にもマンモグラフィを含めた画像診断の導入が必要である。
  • 西島 千都, 田中 真紀, 中原 博子, 松崎 利恵, 高尾 由紀, 井手 亜佐子, 森 かおる, 山下 静子
    1998 年 7 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    われわれは従来より自己検診を含む乳癌の啓蒙に努めてきた。その中で, MMGの重要性も強調しており, 現在MMGの併用率は87.9%と高い。そこで, 平成9年5月1日-30日までの受診者に対しアンケート調査を行い, MMG併用検診の関心度・満足度から, 乳癌教育指導の評価を行った。また, 検診効果を上げるうえでこの方法が有用であったかについても評価を行った。結果 (1) MMG実施の動機は乳癌の早期発見であった。 (2) MMGの必要性については, 従来の視触診に加えMMGを併用する検診を望んでいることが伺えた。 (3) MMG併用検診に対する満足度については, MMGを併用した精度の高い検診を受けたことによる安心感が満足度につながっていると思われた。 (4) MMG併用検診に対する期待度については, 非触知乳癌などの早期発見を望んでいることがわかった。 (5) 乳房圧迫に対する理解度も高かった。また, 平成3年から9年までに当センターで発見された乳癌19症例を検討すると, 78.9%がリンパ節転移のない症例で, 全例がMMG併用検診であり, 3例は非触知乳癌であった。Stage IIまでの全例が検診歴があり, 早期例ではBSE実施率が70.0%と高率で, 乳癌に対する関心が高いことがわかった。以上より, われわれの乳癌教育指導はMMG併用検診の認識を高めるのに有用であり, 乳癌検診や繰り返し行われる指導は乳癌の啓蒙に対し重要な役割をなし, 早期乳癌発見につながり, 検診効果を上げるものと考えられた。
  • 岡崎 稔, 岡崎 亮, 湯山 友一, 渡部 芳樹, 大村 東生, 平田 公一, 成松 英明, 鍋田 光一, 山田 毅, 岡崎 裕, 有末 太 ...
    1998 年 7 巻 2 号 p. 177
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    [目的] 乳癌検診の理念は, 自覚症状のない受診者より多くの乳癌を早期に発見し, 救命効果を高めることである。検診効果を評価するうえでの自覚症状の有無に関する重要性を検討した。
    [対象と方法] 過去17年間の教室における乳癌集検 (出張方式) で検出された乳癌193例 (検出率0.15%) を対象とし, 自覚症状の有無と乳癌早期率・予後との関連を調査した。
    [結果] 検診検出乳癌193例における自覚症状のない症例は, 106例 (54.9%) であった。自覚症状のない乳癌例の早期率は76.4% (81/106) で, 自覚症状を有する乳癌例の44.8% (39/87) より高率であった。前者の予後は後者に比し良好であった。
    [考察] 自覚症状のない乳癌例は早期例が多く, 予後良好である。検診では自覚症状のない受診者から多くの乳癌を発見しうる検診法の充実が望まれる。検診発見乳癌とは無症状受診者から検出された乳癌とし, 自覚症状を有し検診で診断された乳癌と区別して扱うべきである。
  • 石田 常博, 綾部 公懿
    1998 年 7 巻 2 号 p. 178-185
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 最近の知見
    富永 祐民, 黒石 哲生
    1998 年 7 巻 2 号 p. 187-195
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    乳癌に関しては古くから多くの疫学的研究が行われており, いろいろな因子が関与していることが報告されている。この総説では以前に乳癌研究会の「乳癌のhigh risk groupとは?」の研究班がまとめた報告書を基に, その後の報告をレビューして最新の知見をまとめた。今回のレビューからみた乳癌のハイリスクグループは下記の項目に該当する女性である。 (1) 年齢 (40歳以上), (2) 未婚 (30歳以上), (3) 高齢初産 (30歳以上, 未産女性を含む), (4) 遅い閉経 (55歳以上), (5) 肥満 (特に50歳以上, 標準体重の50%以上), (6) 良性の乳腺疾患 (特に増殖性, 異型を伴うもの) の既往, (7) 乳癌家族歴, (8) 乳癌の既往。
    これまでの多くの疫学的, 実験的研究から食物 (特に動物性脂肪の過剰摂取) が乳癌の発生に関与していることはほぼ間違いないと考えられるが, 両者の関係は現在なお分析疫学的研究では明確ではなく, 今回も高危険群のリストに含めなかった。今後, 食生活を中心とした生活習慣と乳癌の関係ならびに乳癌の発生に関与する遺伝子異常, 多型に関する分子疫学的研究をさらに推進する必要がある。
  • 触診と超音波診断の精度からみて
    小池 繧男, 中村 明
    1998 年 7 巻 2 号 p. 207-214
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    長野県の乳癌集検は視・触診に超音波検査を併用して実施している。昭和63年度から平成7年度までの受診者数は約33万6千人で, うち約4万6千人 (13.7%) に超音波検査を施行した。要精検者数は7,991人で, 7,773人が精検を受診し, 237例 (0.07%) の乳癌が発見された。全期間を4年間ずつ前期と後期に分けて, 集検の実施成績ならびに検診医の触診と超音波診断の診断能を比較した。乳癌発見率は前期と後期の間に差がみられなかった。また, 精検受診者に対する触診と超音波診断別の乳癌発見率および両診断の診断能は前期と後期の間で差がみられなかった。超音波診断の未記入率のみが後期は前期と比べて有意に低かった。
    長野県の乳癌集検の問題点としては, 検診医の触診と超音波診断の精度に向上がみられなかったこと, および超音波診断を併用した診断的意義が確認できなかったことが挙げられる。これら問題点の解決を図ることが今後の課題である。
  • 田部 志郎, 井村 健一郎, 大坂 芳夫, 土屋 邦之, 迫 裕孝, 井岡 二朗, 中根 佳宏
    1998 年 7 巻 2 号 p. 215-221
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    近江八幡市において, 単独医が昭和57年12月から平成9年3月31日までの14年間に行ってきた視・触診法による乳癌検診の現況を述べる。延べ10,773人に検診を行い, 要精検者は937人 (8.7%), 精検受診者は884人で受診率は94.3%であった。検診発見乳癌数は17人で乳癌発見率は0.16%であった。一方, 著者は昭和57年10月に第1例の乳癌手術症例を経験してから, 平成9年3月31日までに185例の乳癌手術症例を経験したが, そのうち181例を外来発見乳癌として比較検討した。
    検診発見乳癌は30歳代, 40歳代, 50歳代が82.4%を占め, 外来発見乳癌の同年代層60.8%に比べ, 若年者の割合が高い。検診発見乳癌はStage Iが60%, 外来発見乳癌はStageIが42%であり, またnO症例もそれぞれ75%と60.2%で, 検診発見乳癌は早期率が高かった。乳癌検診では若年者での癌発見が多く, また早期癌の発見が多いことから, 平均寿命からみても乳癌の予後改善に寄与できるものと考える。
  • 八巻 義雄, 野水 整, 鈴木 聡, 松岡 孝紀, 片方 直人, 渡辺 文明, 斉藤 武郎, 土屋 敦雄, 阿部 力哉
    1998 年 7 巻 2 号 p. 223-227
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    中間期乳癌として診断されたT2粘液癌の2例を報告した。検診からしこり自覚までの期間は14カ月と5カ月であった。1例は検診時にマンモグラフィを施行しており, 異常がないことが確認されている。粘液癌は粘液産生を特徴とする癌であり膨張性に発育すると考えられており, 中間期乳癌として発見されることも妥当と考えられる。本症例の画像診断として, マンモグラムで限局型の腫瘤陰影を呈し, エコーグラムでは等ないし低エコーの限局した腫瘤像で両側方陰影を認め後面エコーが増強するなど, 粘液癌を強く疑わせる所見であった。細胞診でも粘液癌の診断が可能であり, 2例とも乳房温存手術が可能であった。
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