20世紀は消費者被害の世紀でもあった。社会問題となった消費者被害により,わたしたちは繰り返し数多くの肉体的精神的物質的損失を受けた。わたしたちは被害者救済の消費者運動を起こし,消費者の権利を拡大することにより,問題を解決しようと努力してきた。 20世紀最後の夏,日本では,こうした歴史を忘れないようにと,時代が,乳製品や自動車という身近な例を示して,大きな声で警告を発した。現行の学校消費者教育では,消費者が自らの価値意識に基づいて意思決定する技能の向上こそが,消費者の自立に有効な教育だと了解されている。こうした教育が行われるようになって10年が経過したが,消費者被害は一向に減少する気配を見せない。本稿では,消費者被害の発生を論理的に明らかにし,その上で,真に消費者の自立を支援する消費者教育を提案する。
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