学校教育において消費者教育を担う家庭科が始まる前の子ども達でも,既に日常生活の中で契約行為を行っている。また,近年,「契約・解約」に関するトラブルが小学生にもみられる。これらのことから,家庭科履修前の小学生への消費者教育の充実が課題となっている。そこで本研究では,小学生を対象とした既存の消費者教育教材を収集し,特に小学1~4年生を対象とした教材に着目することで,それらの課題を明らかにし,得られた課題から,小学1~4年生を対象にした「買い物」・「契約」に関する消費者教育教材開発の方向性を検討することを目的とした。教材収集には,消費者庁が運営する,消費者教育ポータルサイトと,(公社)消費者教育支援センターのサイトを利用し,2014年~2019年度に登録された教材を分析対象とした。その結果,全320件の内,小学1~4年生が対象の「買い物」と「契約」に関する教材は24件と少なく,教材を充実する必要性が明らかになった。また,分析対象24件に教材と指導書をセットにしたパッケージ型教材は5件あったが,地域向け教材は1件と少ない現状を把握した。さらに小学1~4年生が対象の教材には,楽しみながら学ぶ要素に加え,体験的活動により知識を定着させる教材開発の方向性が示唆された。これらを実現するために,これからの消費者教育教材には,制作者の意図を確実に再現し,消費者教育の質と機会を維持できる,パッケージ型教材の充実が求められる。
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