かつて高品質結晶の作製が絶望視されていたGaN系窒化物半導体は,近年低温堆積緩衝層技術の開拓によって結晶品質の劇的な改善が達成された.その結果,"p型伝導"の実現をはじめ,n型伝導度制御の達成,さらに量子効果に関する成果を導き,高効率青色,緑色,白色発光ダイオード,長寿命青紫色半導体レーザ,ヘテロ接合型電界効果トランジスタ,低雑音紫外線検出器といった新規の高性能デバイスの実現に繋がった.これらの窒化物半導体デバイスは極めて堅牢であり,苛酷な環境においても動作可能である.同時に,それらの多くは省エネルギー,省資源に大きく寄与できる.環境にもやさしい窒化物半導体およびデバイスのさらなる発展は,将来の社会に多大な貢献をなしうるものと考えられる.ほとんどの研究者が撤退する中,30年以上苦闘し続けてきた筆者にとって,現在の窒化物半導体分野のこのような盛隆をみるとき,たいへん喜ばしくもあり,同時に隔世の感がある.
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