1669年N. Stenoは面角安定の法則の出発点になった論考の中で,水晶の結晶は地中の細菌の作用で出来たのではなく,水溶液中で無機的なプロセスで成長し,成長速度の異方性によってさまざまな水晶の結晶のかたちが決まると指摘した.これが結晶成長学の出発点である.以後,宝石,圧電体などの単結晶育成が行なわれると共に,吸着型成長,層成長,渦巻き成長,スムースとラフな界面,界面の安定性など原子・分子レベルでの成長機構が理解されていった.結晶成長の基礎と応用,理論と実験が相互に裨益しあうようになったのは,制御された性質をもつ大型単結晶が求められる半導体工業の発足以降である.それまで,別個の分野で進められ,報告されていた研究成果を,一つにまとめて交流を図ろうとする機運が世界的に広まり,ICCG, IOCGが発足し, J. Crystal Growthが発刊された.これ以前を第0世代とすると,それ以後第1世代の人たちは,結晶成長のコミュニティの立ち上げと発展のために情熱を注いできた.この間の経緯をまとめ,結晶成長学の発展にとって基礎と応用,理論と実験の協力関係がいかに重要であったかを,著者の研究上の自分史と関連させながら纏めた.
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